佐川急便親会社上場に水を差す、佐川印刷「90億円詐取事件」の行方

12月25日、ついに本人尋問が

90億円詐取で逮捕、起訴

宅配便大手の佐川急便を傘下に持つSGホールディングス(SGHD)が、13日、東証一部に上場、初値は1株1620円の売り出し価格を上回る1900円で、時価総額は約6000億円となり今年最大の新規株式公開(IPO)となった。

陸運業界では、日本通運、ヤマトホールディングス(ヤマトHD)に次ぐ3番手の上場だが、SGHDは業界4番手の日立物流と16年3月、資本・業務提携しており、予定通りに経営統合すれば、ヤマトHDと拮抗、日本通運を脅かす存在となる。

「飛脚ブランド」の佐川急便は、宅配最大手のヤマトHDと競い合っている印象だが、実は利幅の薄いアマゾンからの撤退に象徴されるように、宅配から企業相手の物流にシフトしている。こちらの方が、収益率が高いからで、売り出し価格を上回る初値を達成したのは、証券市場の好環境に加え、SGHDの成長余地に投資家が期待したからだ。

一方、SGHDが本社を置く京都市の京都地裁で、上場に水を差すような公判が続いている。佐川印刷の湯浅敬二元取締役が、会社資金約90億円を詐取したとして逮捕、起訴された事件である。

 

今年2月、初公判に出廷した湯浅被告は罪状認否で「無罪」を主張。続けて、次のように述べた。

「佐川印刷株式会社及び関連子会社は、佐川急便から年間40億円以上の利益を頂いていて、最も重要な一番の取引先である佐川急便なしで、佐川印刷グループの存続は考えられません。(中略)

平成17~18年頃、木下宗昭会長から私に『自由に使えるおカネはないのか、他社では使途不明金とかあるぞ。何か考えてくれ』と、指示を受け、私は会社の資金を投資して運用することを考え、佐川印刷グループの資金を運用して得た配当を、裏ガネとして会長に渡すつもりで投資を始めました」

木下会長には、佐川急便幹部への付け届けを始めとして、裏帳簿のカネが必要だったので、その指示のもとに自分は簿外資金を運用しており、業務として行っていたのだから、「無罪」というわけである。

「佐川」の名を冠しているが、佐川印刷は佐川急便の関連会社ではない。創業者である木下宗昭会長の真摯な営業姿勢を買った佐川急便オーナーの佐川清元会長が、印刷の仕事を次々に回したことが飛躍のきっかけとなったため、木下氏は、76年、佐川会長に頼み込んで佐川急便の出資を受けるとともに、佐川印刷と社名変更した。

未上場ながら、今は売上高1000億円の印刷大手。京都経済界のなかでもそれなりのポジションを得ており、サッカーや野球などの企業スポーツにも力を入れ、知名度は高い。だが、佐川急便との関係は絶対で、佐川氏が亡くなり、資本関係が薄れても、佐川急便は最大得意先として逆らえない。

90億円の会社資金の流用は、木下会長の指示を得たものだったのか。資金流用の目的のひとつは、佐川急便幹部への裏ガネの提供だったのか。

10ヵ月に及ぶ公判で最大の争点はそこである。

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