交通弱者解消に向け、乗り合い輸送サービスの実証実験 豊島区

車両に乗り込む担当者
車両に乗り込む担当者

鉄道やバスなどの公共交通網が張り巡らされた東京23区内にも、高齢者や障害者、子供連れといった交通弱者には利便性の悪い地域が散在する。豊島区はこうした公共交通不便地域の解消に向け、民間の乗り合い輸送サービスの実証実験を進めている。担当者は「交通弱者の方も含め、病院の通院や買い物の足などに公共交通の需要は高い。全ての人にとって住みやすい街にしていきたい」としている。(赤尾朋紀)

一般的な公共交通不便地域は、半径500メートル圏内に鉄道駅、同300メートル圏内にバス停留所がない地域を指し、豊島区にはこうした地域がほとんどない。

ただ、同200メートル圏内に鉄道駅・バス停留所がない地域を「交通弱者の公共交通不便地域」と独自に定義したところ、区全体の約36%を占めていることが判明した。戦後復興で建てられた木造住宅の密集地域とも重なり、既存路線バスの延伸運行やコミュニティバスの導入で解消した地域もあるが、大半がカバーし切れていないという。

オンデマンド交通とも呼ばれる乗り合い輸送サービスは、路線バスのように定時定路線型ではなく、利用者の予約に応じ、車両を配車する。民間のコミュニティモビリティ(目黒区)が昨年4月、豊島区役所やサンシャインシティを含む「大塚地域」で実証実験を開始。豊島区は今年4月19日から事業を引き継いだ。

車両の運行は、エコリムジン東京(港区)に委託。地域内に約140カ所の乗降地点が設定され、毎日午前7時~午後10時の間、ワンボックスタイプの2台が巡回している。時間や目的地が重なれば最大2~3組と相乗りになり、AI(人工知能)が最適な運行ルートを設定するという。

料金は1回大人300円、子供150円。定額の乗り放題プランもある。 コミュニティモビリティが利用者144人に行ったアンケートでは、最も多い21%が「自由に移動できると感じられるようになった」と回答。「自転車・徒歩での移動が減少した」(19%)が続いた。

実証実験は令和6年8月31日までを予定している。豊島区都市計画課の交通政策担当課長は「既存の地域公共交通との共存ができるかを確認する必要がある。区民の方が暮らしやすい街だと思える政策の一つとして、きちんと検証しながら進めていきたい」と話している。

会員限定記事会員サービス詳細