高校野球特集
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2011全国高校野球選手権香川大会 これまでの試合結果

【評】英明、総合力で突破 2年連続甲子園切符 丸亀につけいる隙与えず

▽決勝
 
英 明
丸 亀

▽本塁打 渡辺(2)(楠本)
▽二塁打 中内、松本▽併殺 英2(田野―下井2)丸1(北村―秋山圭―藤綱)
▽審判(球)中田(塁)横田、永山、津島
▽試合時間 1時間55分

 【評】英明は左腕松本が5安打完封。直球の球威とともに低めへ制球された変化球が素晴らしかった。打線も15安打で8点を奪い、投打で丸亀を圧倒した。

  打線は中盤から直球に狙いを絞り活性化。先制は四回2死から田中玲、田野、松本の各左打者が三遊間を破るしぶとい3連打で奪い、五回には堅守を誇った相手守備陣がほころび、3敵失と4番中内の右翼線二塁打などで一挙4点を追加した。八回には渡辺の左越え2ランも飛び出した。

  丸亀は技巧派右腕の田所が序盤、直球を多めにした配球で英明打線を抑えたが、中盤以降は2番手の楠本とともに相手に傾いた流れを止められなかった。打線は松本の直曲球に最後までほんろうされた。

記録アラカルト

◆1大会通算チーム最多安打 英明が今大会全6試合で計74安打。従来の記録は昨年の英明がマークした71安打で、2大会連続で記録を更新した。

◆1大会通算個人最多安打 英明の西岡勇魚左翼手が6試合で計14安打。16年ぶりの記録更新で、従来記録を1安打上回った。

エース成長 長身左腕松本、公式戦初完封
  勢いで頂点に立った昨年と違い、この夏は投打に成長、総合力の高さを示しての連覇だった。

  偉業達成の立役者は間違いなくエース松本だろう。「完封しろ」。試合前、香川監督からの叱咤(しった)激励に応え、5安打7奪三振で公式戦初完封。勢いに乗る丸亀打線を抑え込んだ。

  193センチの長身左腕は昨大会、2試合に登板。最速145キロの快速球で球場を沸かせたが、ストライクが全く入らず、1死も取れなかった。初の夢舞台も登板機会はなし。「悔しかった。その分まで投げた」。思いがこもった102球だった。

  昨秋の県大会は制球を意識するあまり腕を振り切れず、持ち味の球威が影をひそめた。だが、冬場の投げ込みや走り込みなどで、球威を維持したままで制球が安定。今大会は6試合47回を投げて61奪三振。140キロ前後の直球にスライダー、フォークなどを交えて次々と空振りを奪った。

  最も成長したのは精神面だ。以前は四死球を怖がったが、周囲からの「点をとられんかったらええやん」の言葉に力を得た。初めて三塁に走者を背負った五回2死一、三塁は、この日最速の143キロの直球で見逃し三振に切って取り、反撃ムードを断った。

  大会新の74安打を放った自慢の打線に加え、今大会は6試合で守備も1失策。昨大会メンバーの1番西岡は「昨年は攻撃しかなかったけど、今年は守りからリズムをつくれる」と話す。

  投打がっちりでつかんだ2度目の夢舞台。今度はどんな戦いを見せるだろうか。「とりあえず1勝したい。どんどん三振を取りたいです」。連覇の重圧から解放されたエースは晴れやかな表情で言い切った。

大会通算74安打 再び記録を更新
  八回1死二塁。高く舞い上がった打球がぎりぎりで左翼フェンスを越えた。英明の渡辺が試合を決定づける駄目押し2ラン。大会通算で打率5割7分1厘と打ちまくった3番打者は「変化球狙いの緩いタイミングで待っていた。真っ芯じゃなかったけどよく飛んだ」と喜んだ。

  それにしても英明の圧倒的な打撃力は今大会も健在だった。渡辺の一発は今大会のチーム通算72安打目で、昨年、同校がマークした1大会通算最多安打(71安打)を更新するメモリアルアーチ。決勝では計15安打を放ち、全試合2桁安打を達成。記録も74本まで伸びた。

  強打は手狭な環境を逆手に取った打撃重視の練習が育てている。香川監督は「数は相変わらず多い。それにみんなが粘っこくなってきた」。この日は序盤、直球を多めに使った相手バッテリーの配球に手を焼いたが、中盤以降は直球に狙いを変えて安打を重ねた。

  2年連続の夏の甲子園は多くのメンバーにとって雪辱の舞台だ。成長した姿を全国の強豪相手に見せられるか。昨年は甲子園で無安打3三振に終わった主砲の中内が力を込める。「今はみんなが勝ちたいという気持ちでつながっている。県大会は頼りない4番だったけど、甲子園では一本でも多く打ち、今年こそ打ち勝ちたい」。

西岡14安打 個人も更新
 英明の西岡が1大会通算安打の個人記録を更新。「思い切りやったのがいい結果につながった」。この日は大会4度目の3安打を放ち、通算14安打。従来記録を1本上回った。

  甲子園に出場した昨年からの1番打者。今大会は厳しいマークに遭いながらも、強じんなリストから放たれる持ち味の鋭い打球で、開幕から全試合安打も達成した。

  強力打線を引っ張るリードオフマンは「1年前は来た球を打つだけだったが、今は相手の配球を考えながら打てるようになった」と成長を実感する。

  昨年の甲子園はフェンス直撃の中越え三塁打を含む3安打2打点。2年連続の夢舞台へ向け、「甲子園はいいところ。今年は絶対に勝って、あの場所に長くいたい」と強調した。

丸亀、堅守にほころび
  「完敗です。英明は強かった」。丸亀は11年ぶりの甲子園出場はならなかったが、山本監督はどこか晴れ晴れしていた。

  主戦の田所は低めに球を集める持ち味の投球を序盤から展開し、三回まで強打の英明を1安打に抑える好投。「うちのペース」と指揮官も手応えを感じたが、四回に先制を許すと、五回に大きな落とし穴が待っていた。

  2連続内野安打で無死一、二塁とされ、犠牲バントに味方の失策が絡んで2点目を失った。そして主砲には「もう少し外すべきだった」という初球の高め直球を右翼線に運ばれ2点適時二塁打に。右腕は「エラーが絡んで焦ってしまった」と、あっという間の大量失点を悔やんだ。

  田所はマウンドを降りたが、さらに野手の失策は続き、この回計3失策。捕手の松本は「田所は頑張って投げたが、バックが足を引っ張ってしまった」とエースをかばった。

  これまで堅守で投手をもり立ててきた野手陣にまさかのほころび。山本監督は「守りでバタバタしたのは痛かった」と話したが、すぐに「それも含めてうちの力」と責めの言葉はなかった。

  そして「ここまで連れてきてもらってありがたい。選手たちは大会を通じよく成長した」と肩を落とすナインに目をやった。

「一枚も二枚も上」
  丸亀は英明のエース松本に5安打完封負け。主将の安藤は「厳しい球が多く、相手が一枚も二枚も上手だった」と脱帽した。

  打線は甘い球を見逃さずに狙おうとしたが、低めを中心に制球よく攻められて苦戦。準決勝まで打率4割6分7厘と当たっていた3番松本も無安打に終わり、「制球度外視でただ速いというイメージと違って、緻密に低めに集めてきた。打てる球はそんなになかった」。

  憧れの舞台には届かなかったが、充実した表情が並んだ丸亀ナイン。主砲北村は「4番として思い切って勝負できた。悔いはないです」と涙はなし。安藤も「やれることはすべてやった。英明にはいけるところまでいってほしい」とすっきりとした表情で勝者にエールを送った。

甲子園で1勝を
  英明・井口文登主将
 勝っていても気を抜かないこと、エラーをしないことを心がけた。甲子園で香川はずっと勝てていないし、昨年負けたので今年は勝ちたい。投打がかみあえば十分戦えると思うので、思い切ったプレーを見せたい。

粘り強くやった
  丸亀・山本雄一郎監督の話
 打線には甘い球をしっかり振れと言ったが、なかなか甘い球はなかった。うちの力では対抗できなかった。田所は自分の投球をするなど、全員で粘り強くやった。

■英明選手談話■
甲子園で戦える
  田中玲三塁手 大会前は状態がよくなかったが試合を重ねるにつれ、上がってきた。甲子園は雰囲気が違う。でも、平常心で戦えれば、戦えるチームになったと思う。

しっかり守れた
  田野育邦遊撃手 大事なところでしっかり守ることができた。今年は自分が中心選手。甲子園ではみんなをもっと引っ張っていきたい。

精神強くなった
  橋本守捕手 (エースの)松本は精神的に強くなった。甲子園でも自分がやれることをしっかりやりたい。

勝負強い打撃を
  下井勇人一塁手 実感がわかない。初戦のヒットが打点も付いて自信になった。甲子園でも勝負強い打撃を目指したい。

初スタメン緊張
  安藤昇平内野手(2年生。決勝で大会初スタメン)緊張した。先輩が打って続こうと思ったが、体が動かなかった。

■英明高校の沿革 私立明善高等女学校として1917年に開校。48年、新制高校の明善高に校名を変更。2001年、男女共学化に伴い現在の英明高となる。女子陸上部は全国高校駅伝に第1回大会から19年連続出場したほか、同バスケットボール部などは全国大会の常連校。野球部は04年に同好会として発足し、05年に県高野連に加盟後、夏の大会から参加。創部6年目の昨大会で初の甲子園出場を果たし、今回で2年連続2度目。特別進学コースのほか、情報、総合コースがあり生徒数は1365人。真部卓一校長。卒業生数は2万5231人。高松市亀岡町1―10。

2連覇を完封で飾った英明のエース・松本=レクザムスタジアム

2連覇を完封で飾った英明のエース・松本=レクザムスタジアム 【英明―丸亀】8回表英明1死二塁、渡辺が左越え2点本塁打を放つ=レクザムスタジアム

【英明―丸亀】8回表英明1死二塁、渡辺が左越え2点本塁打を放つ=レクザムスタジアム 4回表のピンチにマウンドに集まり、田所(右から2人目)を励ます丸亀ナイン=レクザムスタジアム

4回表のピンチにマウンドに集まり、田所(右から2人目)を励ます丸亀ナイン=レクザムスタジアム

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