国内初、カフェイン中毒死 エナジードリンク日常的に大量摂取か 

「エナジードリンク」と呼ばれる飲料を日常的に飲んでいた九州地方の20代男性が昨年、カフェイン中毒により死亡していたことが21日、分かった。常用での中毒による死亡報告例は国内初とみられる。深夜帯の勤務だった男性は眠気覚ましで毎日のように多用しており、この飲料は短時間に約20本飲むとカフェインの致死量に達するという。

眠気覚ましや疲労回復効果で近年人気のエナジードリンクだが、注意が必要な事態が起きた。

男性の解剖を警察の依頼で担当した福岡大法医学教室の久保真一教授によると、血中濃度が血液1ミリリットル当たり約70マイクログラム以上に達すると死亡例が報告されているが、男性の解剖時の血中濃度は同182マイクログラムだった。

男性は24時間営業のガソリンスタンドで深夜から早朝の勤務。帰宅後は夕方まで起きていて、その後に寝て出勤する毎日だった。カフェイン入り清涼飲料水を多用していたが、死亡する約1年前から体調不良を訴え、吐いて寝込むこともあった。死亡当日も帰宅後に吐いて寝込んでおり、数時間後に家族が気付いて救急搬送したが手遅れだった…。

久保教授によると、カフェインの致死量は3グラム程度。男性が飲んでいた飲料には1本当たり150~170ミリグラムのカフェインが含まれていた。短時間に約20本飲むと致死量に至る計算だ。

男性は死亡の1週間前から寝坊で遅刻が続いていたらしく、普段より多量に摂取した可能性も。胃にはカフェイン錠剤らしき破片もあり、久保教授は「20本飲まなくても、錠剤などとの併用で死亡につながった可能性がある」と指摘する。

一般的にコーヒー1杯に含まれるカフェインは約100ミリグラム。こちらは30杯を立て続けに飲むと致死量に達する計算だが、ヒガノクリニックの日向野春総院長は「コーヒー好きの人がふだん飲んでいる程度の量なら何の問題もない」。ただし、カフェイン摂取を止めて禁断症状でうつになり自殺するなどのケースは海外であるという。

薬物依存に詳しい国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏は「カフェインは心臓に作用して心拍数を上げるが、耐性ができやすくすぐ効きが悪くなり、どんどん多くとるようになる。多量摂取やアルコールとの併用などは危険だ」と話している。

エナジードリンク

明確な定義はないが、効果効能を明確に表示することができない清涼飲料水の一種で、カフェインやアミノ酸などが含まれている。海外で開発され、眠気覚ましとして若者や運転手などで広がっている。メーカーによると、海外では過剰摂取による中毒症状が年に数件報告されている。エナジードリンクとは別に、肉体疲労時の栄養補給を目的とする医薬品や医薬部外品として販売される栄養ドリンクもある。

カフェイン

アルカロイドという化合物の一種。覚醒作用や解熱鎮痛作用があり眠気、倦怠(けんたい)感、頭痛などに効果がある医薬品としても使用される。コーヒーやお茶、コーラなどに多く含まれている。

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