芸能

あの“たけし事件”がなければ「不適切」は生まれてこなかった!? 高田文夫が振り返る宮藤官九郎との縁

宮藤官九郎との縁を振り返る(イラスト/佐野文二郎)

宮藤官九郎との縁を振り返る(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)の脚本家、宮藤官九郎との縁について綴る。

 * * *
「ふてロス」である。手もつけられない面白さだった宮藤官九郎の『不適切にもほどがある!』が終わってしまった。かの夏目漱石が贔屓にしていた噺家について書いた。「三代目小さんと同じ時代に生きている我々は幸せである」と。私もクドカンと同じ空気を吸っていると思うと……息苦しい。

 一応私も日芸の放送学科(放送学博士)卒なので書かせてもらうと、これだけのエンタメを書ける脚本家では倉本聰、市川森一と肩を並べたと思う。少なくともジェームス三木は越えたと信じている。思えばこの神の筆を持つ男と一体いつから知り合いだったのか(いつもハガキで、“もっと僕を褒めて下さいよ”と催促が来る)。

 先日ラジオで「松本人志の休止は大変だけど、何より彼の周りにいるスタッフの生活も大変だ。私も覚えがあるけど、たけしさんが夜中に講談社へ行っちゃって当分仕事は休止。代役探したり大わらわだったけど、いつマスコミに戻って来れるかも分からないのでそれまでの自分達の生活が大変な訳よ」。自分の仕事もあったけどたけし番組もいろいろあったから。

 私はすぐに知り合いのツテを使い「STV」(札幌)「仙台放送」「中京テレビ」(名古屋)に違う企画書を書いて送った。日頃からのつきあいで私の人柄も皆さん知ってたから、困った時はお互い様と企画を通してくれた。札幌へは土曜の深夜、ここへは景山民夫をMCとして送り込み、名古屋の夜のワイドショーはまだ誰も手をつける前の「なんだかなぁ」阿藤海(快)を。少し不安なので大阪から八方、東京から米助を送り脇を固めた。

 金がないので仙台放送は素人のコメディアン番組とし私と小遊三が司会でとりあえず笑わせまくった。この素人のオーディションに仲間をひきつれ毎週鼻をたらしてやってきたのが高校生のクドカン。よく分からないコントをやり、オチでパンツを下げ毎回おチンチンを出す。

 先日、密会したのでこの頃の話になるとクドカン「そうですよネ、あの頃、たけし軍団に入ろうと思っててあのフライデーで謹慎。ああたけし軍団も無くなっちゃう。オレは何処へ行けばいいんだと思ってたら仙台に高田センセーが現われて……きっとポスト軍団を考えてここまで毎週来てるんだなと思ってました。たけしさんのあの事件がなかったら僕とセンセーは出会ってなかったんですね」だと。この頃の模様は『きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)』というクドカンの小説になっている。「ああやって会わなかったら、日芸へ行くこともなかったし“タイガー&ドラゴン”“不適切”も生まれて来なかったんですもんねぇ」としみじみ。私は今から弟子入り志願のハガキを書く。クドウ先生へ。

※週刊ポスト2024年4月12・19日号

関連記事

トピックス

吉村洋文・大阪府知事の政策の本質とは(時事通信フォト)
吉村洋文・大阪府知事が「ライドシェア大幅緩和」を主張で「かえって渋滞を深刻化させる」リスク 派手な改革を求めるほどに際立つ「空疎さ」
週刊ポスト
高級寿司店でトラブルが拡散されたA子さん(寿司の写真は本人SNSより)
《高級寿司店と炎上の港区女子に騒動後を直撃》「Xの通知が一生鳴り止まないんじゃないか」大将と和解後の意外な関係
NEWSポストセブン
小倉優子
小倉優子、早々の「大学留年宣言」がおいしすぎる理由 「女子大生+ママ」の二刀流は唯一無二、ゆくゆくは企業の役員の道も?
NEWSポストセブン
一時は食欲不振で食事もままならなかったという(4月、東京・清瀬市。時事通信フォト)
紀子さま“体調不良報道”でも気丈な姿、単独公務先で「こちらにどうぞ」と気さくに声かける お元気そうな様子に同行していた記者たちは驚き
週刊ポスト
現地でくばられたノアさん関連のビラ(時事通信フォト)
《人質らが証言する劣悪環境》ボーイフレンドの目の前でハマスに拐われた26歳女性の救出に成功も「体重激減」「ゴミ箱で排泄」の惨状
NEWSポストセブン
6月9日、鹿児島市内の認定こども園で、刃物のようなもので男児の首を切りつけて出血させたとして、殺人未遂容疑で逮捕された笹山なつき容疑者(21)
《鹿児島2歳児切りつけ》「見えたらいけないものが…」21歳の女性保育士が犯行前にSNSで意味深投稿 母校の高校関係者は「夢の実現目指して熱心に勉強を」
NEWSポストセブン
大学受験に向けて動き出されている悠仁さま(写真/JMPA)
悠仁さまの東大受験に暗雲、推薦枠での入学には極めて高いハードル 進学先候補に東京農業大学、玉川大学、筑波大学
週刊ポスト
中村芝翫と三田寛子
三田寛子、夫・中村芝翫と愛人の“半同棲先”に怒鳴り込んだ「絶妙タイミング」 子供たちも大事な時期だった
週刊ポスト
【全文公開】中村七之助、梨園きってのモテ男が“実家お泊り愛”の真剣交際 お相手は京都の芸妓、直撃に「ありがとうございます」
【全文公開】中村七之助、梨園きってのモテ男が“実家お泊り愛”の真剣交際 お相手は京都の芸妓、直撃に「ありがとうございます」
女性セブン
全国ライブ中の沢田研二
《ファンの声援にブチ切れ》沢田研二が「見てわからんか!」とステージ上で激怒し突っ込んだ「NGワード」
NEWSポストセブン
長所は「どこでも寝られるところ」だと分析された(4月、東京・八王子市。時事通信フォト)
愛子さま、歓迎会の翌日の朝に遅刻し「起きられませんでした」と謝罪 “時間管理”は雅子さまと共通の課題
NEWSポストセブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【悲劇の発端】瑠奈被告(30)は「女だと思ってたらおじさんだった」と怒り…母は被害者と会わないよう「組長の娘」という架空シナリオ作成 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン