囲碁の十段戦本戦、藤沢女流本因坊が女性初勝利 七大タイトル初の8強入りも

囲碁の「大和ハウス杯 第60期十段戦」の本戦トーナメント2回戦で、藤沢里菜女流本因坊(右)は孫喆七段を破り、史上初めて本戦勝利を飾った
囲碁の「大和ハウス杯 第60期十段戦」の本戦トーナメント2回戦で、藤沢里菜女流本因坊(右)は孫喆七段を破り、史上初めて本戦勝利を飾った

囲碁の「大和ハウス杯 第60期十段戦」(産経新聞社主催)の本戦トーナメント2回戦が28日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、藤沢里菜女流本因坊(23)が孫喆(そん・まこと)七段(25)を破り準々決勝進出を決めた。これまで十段戦本戦で対局した女性棋士は第42、43期の小林泉美七段(44)のみで、勝利したのは藤沢女流本因坊が初めて。日本棋院によると、七大タイトル戦の本戦での女性棋士の8強入りも初めて。

藤沢女流本因坊は対局後、「ベスト8入りは実感がないが、本戦の舞台で打てるのはうれしい。次も頑張りたい」と話した。

藤沢女流本因坊は昨秋の若鯉戦決勝で孫七段に勝ち、男女混合棋戦で女性初優勝を飾っている。平成31年の天元戦では、女性で初めて七大タイトル本戦勝利をあげ、16強入りを果たした。

20人による今期の十段戦本戦には、上野愛咲美(あさみ)女流棋聖(20)も予選を勝ち抜き進出している。

絶好調、4冠堅持

藤沢女流本因坊は今年絶好調。女流名人戦、女流立葵杯、扇興杯女流最強戦、女流本因坊戦を1局も落とさず優勝し、女流4冠を堅持している。

10月に最終戦を迎えた棋聖戦Cリーグでは3勝2敗で終え、同リーグの残留を決めている。昨年の新人王戦優勝者で、進行中の天元戦五番勝負に挑戦している関航太郎七段らを破ってのものだった。第40期にS・A・B・Cリーグ制度が導入されて以降、予選を勝ち抜きリーグ入りを果たした女性は5人。3勝し残留したのは、第44期の謝依旻(しぇい・いみん)七段だけだった。

「以前は強い相手に歯が立たなかったけど、最近では男性だから(勝つのが難しい)というのはない。ここ2年くらいは、安定して力を出せるようにはなってきている」と藤沢女流本因坊は自己分析する。最終予選でタイトルホルダーの一力遼天元を破ったのがその証左だ。

七大タイトルの本戦に出場した女性棋士は11人で、今回の藤沢女流本因坊が15例目。勝利したのは32人で争う天元戦(平成31年)での藤沢女流本因坊のみで、8強進出は初めてだ。

第42、43期の十段戦本戦に挑んだ小林泉美七段は2年とも王銘琬(めいえん)九段と対局した。王九段はタイトル戦に出場していた強豪で、「壁が厚かった」と小林七段は振り返る。当時は敗者復活システムがあり、第43期では小林光一名誉棋聖との親子対局が話題になった。

藤沢女流本因坊や上野女流棋聖の活躍を「若いときにプロ入りし、経験を積んでいること。早いうちに国際棋戦で海外の棋士と多く対局していることも自信になっているのでは」と小林七段は見立てる。

準々決勝の相手は伊田篤史八段-佐田篤史七段の勝者。「どちらにも、けっこう(対局で)いじめられている。頑張ります」と藤沢女流本因坊はさらに上を目指す。(伊藤洋一)

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