ネットがもたらす流通業の大量閉店時代
家電量販最大手のヤマダ電機が約50の店を閉店する。不採算店を整理し経営体質を強化する狙いだ。同社以外にも、今年に入り大手流通業で大量閉店が相次ぐ。共通するのはインターネットの影響だ。流通業はネット時代の店の運営に一層の工夫が求められる。
ヤマダ電機は主に地方や郊外の道路沿いに大型店を構え、大量仕入れと安値販売を軸に成長した。しかし近年は店を持たないネット通販会社による安値攻勢を受けていた。住民の高齢化や若者の車離れも郊外店には不利に働く。
さらに、店で商品を選び、その場でスマートフォンなどを通じ安くネットで買う人も増えている。調査会社のGfKジャパンによれば、日本の家電市場でネット通販が占める比率は2014年、初めて10%を超えた。米国では25%に達し、今年、家電量販2位の企業が経営破綻した一因になった。
家電市場だけではない。郊外の大型商業施設への出店に力を入れてきたアパレル大手のワールドは来春までに店の15%前後、400店から500店を閉じる。ブランド数も約1割減らす。同じくTSIホールディングスも11ブランドを廃止し今年8月末までに店舗数の約15%、260店を閉店する。
両社とも、若い女性に人気のブランドを多数、世に送り出してきた。安いファストファッションの攻勢とネット通販の普及が拡大路線の見直しを迫った。また今の若者はブランドへの関心が薄く、ネットの投稿写真を参考にモノを選ぶ。無名の作り手の服もネットで買う。情報収集と購入の両面で店舗の存在価値は低下している。
こうした課題はこれからの流通業に広く共通する。対処法は2つある。1つはネット通販部門の強化だ。家電量販のヨドバシカメラやアパレル大手のオンワードホールディングスはネット部門に力を入れ、サイトの使い勝手や販売後のサービス、ファンづくりなどを工夫し売り上げを伸ばしている。
もう1つは滞在したくなる店づくりだ。高級音響機器の体験コーナーを設けた家電店や、店員が知識を磨き来店客に的確な提案をするファッション雑貨の店など、価格だけにこだわらない客を引きつけ業績が好調な小売店も多い。
人件費の上昇などで店舗の維持経費は増えている。ネット販売の態勢を整えつつ、店ならではの魅力も提示する。今後の流通業にはそうした二刀流が要る。