アメリカ、ついにパリ協定から離脱…… 大統領選の結果次第では2月にも復帰の可能性

トランプ

パリ協定から離脱する考えを示したトランプ大統領(2017年6月1日、ホワイトハウス)。

Kevin Lamarque/Reuters

  • アメリカは11月4日(現地時間)、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から正式に離脱した。協定からの離脱はアメリカが初めてだ。
  • 2017年6月1日にトランプ大統領が協定から離脱する考えを示し、2019年11月4日に正式な手続きが始まった。
  • 2015年に採択されたパリ協定は、温室効果ガスの排出量を削減することで気温上昇を2度未満に抑えるための約200カ国が参加する国際枠組みだ。
  • 大統領選で勝利すれば、民主党のジョー・バイデン候補はパリ協定に復帰する方針だ。

今から約5年前、世界の指導者たちはフランスの首都パリに集まり、共同で温室効果ガスの排出を削減することで合意した。アメリカは、多くの国々とともに2016年にこれを批准した。

だが、アメリカは2020年11月4日、パリ協定から離脱した。協定からの離脱はアメリカが初めてだ。

トランプ政権は2019年11月4日に協定からの離脱を国連に通告し、1年後に協定の取り決めに従って正式に離脱した。

協定から離脱したことで、アメリカの指導者は今後、気候変動交渉に"オブザーバー"としてのみ参加が許されることになる(なお、協定では加盟国が5年ごとに集まり、削減目標を設定することとされている)。

「パリ協定からの離脱という決断は、科学的な現実を無視するアメリカを国際社会で孤立させ、人、地球、経済に実質的な損害をもたらすだろう」と、憂慮する科学者同盟(UCS:Union of Concerned Scientists)の気候・エネルギープログラム(Climate and Energy Program)の政策担当レイチェル・クレートゥス(Rachel Cleetus)氏は声明文で述べている。

協定から離脱するには激動の時期

アメリカのパリ協定からの正式な離脱は、大統領選の結果が出る前に現実のものとなった。

だが、民主党のジョー・バイデン候補は、自身が大統領選で勝利すれば、就任「初日に」協定に復帰する方針を示している。

一方のトランプ政権は、気候変動の脅威を一貫して軽視してきた。それは何百万というアメリカ人が記録的な山火事の被害に遭い、大西洋でこれまでになく多くの嵐が発生しても変わらなかった。

ハリケーン

ハリケーンの影響で、冠水した駐車場を歩く男性(2020年9月15日、アラバマ州)。

Joe Raedle/Getty Images)

「2020年の初めの9カ月だけで、わたしたちは16の異常気象事象に見舞われ、それぞれの被害額は少なくとも10億ドル(約1040億円)にのぼり、合計で約200人が死亡した。その影響は大抵、有色人種のコミュニティーや低所得のコミュニティーがもろに受けてきた」とクレートゥス氏は指摘している。その上で、「最新の科学に沿った思い切った行動を起こさなければ、何年か後にはますます恐ろしい気候変動の影響がもたらされるだろう」と付け加えた。

なぜトランプ大統領は離脱したかったのか

2015年に採択されたパリ協定は、温室効果ガスの排出量を削減するため、約200カ国が参加する法的拘束力のない"合意"だ。2100年までの気温上昇を産業革命以前に比べて2度未満に抑えることを目指し、全ての署名国がそれぞれの削減目標を設定する。目標を達成できなくても、法的な問題は生じない。

アメリカは中国に次いで、世界で2番目に温室効果ガスを大量に排出している国だ。アメリカの人口1人あたりの二酸化炭素排出量は、他のどの国よりも多い。アメリカがパリ協定に署名した際、オバマ政権は2025年までに2005年比で26%削減すると約束した。この目標がその後のベースラインとなっている(他の国も同様だ)。

会見

パリ協定から離脱する考えを発表し、会見をあとにするトランプ大統領(2017年6月1日、ホワイトハウス)。

Reuters

しかし、トランプ政権はこの"目標"がアメリカの労働者、企業、納税者に「不公平な経済的負担」を強いるもので、パリ協定は「アメリカに不利益をもたらし、他国の利益になる」と考えた。トランプ大統領が就任して以来、当局は多くの環境規制を緩和し、環境汚染の基準を後退させた。

パリ協定に参加した国は少なくとも3年間は離脱できないと国連は定めていて、パリ協定は2016年11月6日まで発効しなかった。そのため、トランプ大統領は2017年6月に協定から離脱する考えを示したものの、政権は2019年まで具体的な行動を取るのを待たなければならなかった。

アメリカはパリ協定に30日で復帰できる

活動家

2020年2月9日、ニューハンプシャー州。

REUTERS/Jim Bourg

2017年のイェール大学の調査によると、当時、アメリカの有権者(このうち51%が共和党支持)の69%がパリ協定からの離脱というトランプ大統領の決断に反対だった。

ナンシー・ペロシ下院議長は、トランプ大統領の動きを「わたしたちの子どもたちの未来を売り渡す、破滅的な決断」と表現した

バイデン

ジョージア州アトランタ。

Drew Angerer/Getty Images

ただ、国連に申請をすれば、アメリカは30日でパリ協定に復帰できる。つまり、民主党のバイデン候補が大統領選に勝ち、大統領就任初日の2021年1月20日に申請すれば、アメリカは2月19日から再び加盟国になることができるのだ。

とはいえ、パリ協定に基づく温室効果ガスの排出削減は、気温上昇を2度未満に抑えるのに必要な目標を下回っている。2018年のレポートは、全ての国が既存の削減目標を達成しても、気温が3度上昇するだろうと指摘している。

[原文:The US has officially exited the Paris climate agreement, more than 3 years after Trump announced his plan to do so

(翻訳、編集:山口佳美)

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