イタリア中部の小都市に立ち込めた濃い霧の向こうに、敵地用の白いユニホームを着た背番号10が浮かび上がった。2-4の後半20分だ。MF本田は左人さし指を2度、口に押し当ててピッチへ入ると、いきなり鮮烈なインパクトを刻んだ。
「自信がなければ10番は要求しない。重圧と付き合っていきたい」
合流4日、初のベンチ入りで負けている状況からの緊急デビュー。それでも8日の入団会見での言葉とは裏腹、日本選手10人目のセリエAデビューで見せ場を連発した。
4-4-2布陣の右MFに入り、30秒後にファーストタッチ。後半24分に左クロスを頭で合わせ、初シュートを放った。同38分には左からのパスに左足を一閃。低い弾道のシュートは惜しくも右ポストを直撃した。
同41分には本田のパス回しを起点に、イタリア代表MFモントリーボの追撃弾が生まれた。格下相手に単調な攻撃が目立ったが、本田の登場後はパス中心に流れが一変。ボールも集まり出した。モントリーボに身ぶり手ぶりで指示を出すなど遠慮せず、FK&CKキッカーも担当。存在感はすでに王様だった。