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コンビニ店主「見切り販売」の動き 販売期限前に値引き

2009年5月6日3時1分

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 売れ残りによる廃棄を減らすため、販売期限前に弁当などを値下げして売る「見切り販売」を導入するコンビニエンスストア加盟店が各地で出始めた。公正取引委員会によるセブン―イレブン・ジャパンへの調査が判明した今年2月以降、見切りを始めた複数のオーナーが「廃棄が半分に減って利益が増えた」と話している。すでに国会でも取り上げられており波紋が広がっている。

 西日本のセブンオーナーは、3月から弁当や総菜などの見切り販売を始めた。本部指導員からは「全店に広がったらセブンはつぶれる」と言われた。1カ月間に出る廃棄の量は「半分以上も減った」。値下げをするため、売り上げは5%減(前年同月比)だったが、店が負担する廃棄代が減ったため利益は逆に3割以上増えた。「特に主婦のアルバイトは、食品を捨てることに後ろめたさを感じていたようで、喜んでいます」

 昨年末から度々、本部側に見切り販売を提案していた東日本のオーナーも3月から踏み切った。これまで「契約解除になりますよ」と高圧的だった本部指導員の態度が、ややおとなしくなったためだ。1日あたり最大で1万円分の商品を見切り販売した結果、廃棄の量は約半分に。売り場での混乱もなく安心していた。

 一方、福岡県の40歳代のオーナーは「契約更新の拒否が怖い」と、踏み出せないでいる。更新は10年も先の話だが、公取委の調査結果がでるまで、様子をみるつもりだ。

 見切り販売がどの程度広がっているか現時点でははっきりしないが、公取委の調査結果次第ではさらに広がる可能性がある。

 セブン―イレブン・ジャパンは「デイリー商品(弁当や総菜など消費期限の短い食品)の値下げを実施している店舗はごくわずか」と主張している。

 朝日新聞の報道で公取委の調査が明らかになった2月下旬以降、同社を含むコンビニ加盟店オーナー三十数人から情報や意見が寄せられた。

 同チェーンオーナーの中には「廃棄の一部を本部が負担するべきだ」(関東)、「本部の経営が傾いては元も子もないが、現状は本部の一人勝ち。利益配分を再検討するべきだ」(中部)と、改善を求める声があった。ただ「一部の不良店による『騒動』にすぎない」(関西)と距離を置く人も少数ながらいた。

 他チェーンオーナーにも波紋は広がっている。東京の他チェーンオーナーは「以前、見切り販売をしたいと訴えたとき『できないことになっている』と本部に言われた。報道をみて、ウソだとわかった」と憤る。複数の他チェーンオーナーが「セブン以外でも値引き制限がある」と、公取委に被害申告したという。

■廃棄量、年1000億円規模 

 今回の公取委の調査の趣旨は「本部の優越的地位の乱用があったかどうか」だが、環境への影響を訴える声もオーナーらの間で多かった。複数のオーナーによると、1カ月間に出る廃棄は1日の売上高が目安だという。少なく見積もって売り上げ40万円の店なら、1カ月で40万円分の廃棄が出ている計算だ。コンビニは全国で約4万5千店で、売れ残りの廃棄量は全国で年1千億円を超える。

 3月4日の参院農水委員会で石破農水相は、コンビニ弁当の廃棄問題を問われ、個人的見解としつつ「賞味期限内のものを捨てちゃうっていったいなんですかと。もったいないという発想がもっとあってしかるべきだ」と答弁。日本人が食べずに捨てる食品廃棄の総量が、世界中の食糧支援の3倍にあたるといったデータもそらんじてみせるなど、問題意識を示した。

 また、野田消費者行政推進担当相も、同月25日の衆院消費者問題特別委員会で「消費可能な食品が大量に廃棄されているということは資源の有効利用、地球環境への影響など多くの問題につながっている」と答えた。

 一方、セブン―イレブンも対策をしていないわけではない。同社の発注精度は高く、「他社がまねできないほど」(業界関係者)の低廃棄率を達成しているとされる。

 また、弁当工場で出た食品残渣(ざんさ)や売れ残りを回収し、飼料や肥料にリサイクルする活動も03年から開始。すでに一部の総菜については、リサイクル肥料で育ったホウレンソウが使われているという。

 だが、こうしたリサイクルの取り組みは首都圏の一部地域にとどまっており、全国的な活動に広がるまでにはまだ時間がかかる。(高田英、益満雄一郎)

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