ボクシング・女子フェザー級決勝 判定で勝利し、金メダルを獲得した入江聖奈=両国国技館

■8月5日 「カエルに両国か。縁があるね」。かつてプロボクシングのジュニアミドル級(現スーパーウエルター)世界王者だった輪島功一さん(78)が笑った。1971年10月、WBA・WBC同級王者のボッシ(イタリア)を判定で下し王座を奪った。低く沈んで次の瞬間飛び上がるように放つ有名な「カエル跳び」のパンチはこの試合で出た。

会場は数々の世界タイトル戦の舞台になった両国の日大講堂、昔の両国国技館だった。現在の国技館は東京五輪のボクシング会場で、3日の女子フェザー級決勝で入江聖奈(20)がフィリピン選手を破り金メダルを獲得した。こちらは大の「カエル好き」とか。

少年漫画のヒーローに憧れ小学2年から始め13年間の努力で大輪の花を咲かせた。「内心は緊張でホッペの内側がひきつっていた」そうだが笑顔を絶やさず、あるテレビ番組が数えたら会場で1日67回もお辞儀したというほど礼儀正しい。休日は公園や緑地でカエル探し。判定勝ちの瞬間はカエル跳びで喜びを爆発させた。

ジムの会長として女子選手も育てた輪島さんは、そんな入江の試合を泣きながら見ていた。「男子とは体形が違うし女子のボクシングは過酷だ。オレが言うのも変だけど、ボクシングって怖いよ。怖いけどやる以上負けられない。だからカエル跳びもやった。(入江は)積極的でいいボクシングだった。泣けてきたよ」

金メダルを有終の美とするためボクシングは大学までという。「それも人生。カエル好きのおかげでオレのことも少しは思い出してもらえた」という輪島さんは団子屋さんとしても知られる。「ささやかだけど、うちの団子や菓子をたくさん食べてもらいたい」(今村忠)

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