高校の歴史教科書の用語が多すぎるとして一部教員らのグループがまとめた「精選案」が、物議をかもしている。坂本龍馬ら国民に親しまれる歴史人物の名を外し、「従軍慰安婦」などを採用した。それで正しく、楽しく学べるのか。
高校や大学教員ら約400人でつくる「高大連携歴史教育研究会」(会長・油井大三郎東大名誉教授)が公表し、意見を募っている。
精選案は日本史と世界史それぞれ1600余語にしぼった。現在と比べ、ほぼ半減だという。大学入試との悪循環で、授業が用語の説明に追われている。暗記より思考力育成につなげる狙いだ。
精選の動機は理解できる。しかし提案された用語をみると「学ぶ楽しさを実感できる授業」につながるのか大いに疑問である。
採用された「従軍慰安婦」は戦後の造語で、旧日本軍による「強制連行」と誤解させる。「南京大虐殺」は中国側の宣伝に基づくもので史実とはいえない。
戦後用語の「逆コース」は、自衛隊発足など吉田茂内閣の動きを捉え、反対運動の際に使われた。「時代の大きな流れ」に着目し、必要な「事実用語」を残したという趣旨に適(かな)うか疑問である。
人名では龍馬のほか、楠木正成や上杉謙信、吉田松陰らを外した基準もよく分からない。