シャープ東証1部「スピード復帰」の推進力は戴社長の情熱

シャープ株価の推移と主な出来事
シャープ株価の推移と主な出来事

 東京証券取引所の2部降格から1年4カ月の短期間で、7日に東証1部復帰を果たしたシャープ。業績を急回復させた推進力は、親会社の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が持つ資金力や営業力に加え、経営再建に懸ける戴正呉(たいせいご)社長の情熱と徹底した構造改革だった。今後は、培ってきた技術力で反転攻勢に打って出る。

 「台湾から日本に片道チケットで渡る気持ちだった」。戴社長は7日の記者会見で、シャープ再建に背水の陣で臨んできた心境を吐露した。コスト削減を徹底し、信賞必罰の人事制度を導入。また、予算300万円以上の案件はすべて社長決裁とし、出張先でも国内外の拠点を結ぶテレビ会議を駆使して求心力を高めてきた。

 主力のテレビ事業では、鴻海の販売網や営業力を活用し、平成30年度の販売目標は28年度から倍増となる1千万台を掲げる。一度は撤退した欧州市場では、テレビやスマートフォンの再参入を計画する。

 ただ戴氏は、自らの功績を誇ることなく「シャープに実力があった。(高い技術力が)金脈だったのに、これまでの経営者が掘らなかっただけ」と指摘。得意の液晶技術を超高画質「8K」に発展させ、成長戦略の柱に掲げる。楽天証券の窪田真之チーフ・ストラテジストは「もともと持つ高い技術で、利益を稼ぐステージに入った」とみる。

 しかし、液晶が次世代有機ELとの競争にさらされるなど、先行きに課題も残る。本格的な再建を果たせるかどうかは、改革の勢いの継続と、独自技術のさらなる活用がカギとなる。(藤谷茂樹)

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