黒髪をなびかせて応援団のもとへ駆け出す慶応ナイン。甲子園に新風を巻き起こす(撮影・根本成) 第105回全国高校野球選手権大会第10日(16日、甲子園)3回戦4試合が行われ、慶応(神奈川)が2008年以来15年ぶりの8強進出を果たした。タイブレークの延長十回に延末(のぶすえ)藍太内野手(3年)の2点打などで3得点し、6―3で今春の選抜大会4強の広陵(広島)に競り勝った。延末は先制打も含め5打点の活躍。大会12日目(19日)の準々決勝で沖縄尚学と対戦し、準優勝した1920年以来103年ぶりの4強入りを目指す。
勝利の瞬間、一塁手の慶応・延末が左手でガッツポーズをつくった。創部100年を超える伝統校同士の対決を延長タイブレークで制し、乱視矯正のためにかけているゴーグルの奥で目を細めた。
「素直にうれしい気持ち。最高の舞台で好きな野球を楽しむことができた。あの時(今春の選抜大会)の経験が生きた」
一回2死二、三塁で左前に先制の2点打を放った。続く三回1死二、三塁では一塁強襲のゴロ。アウトになったが、三塁走者が生還して1打点を挙げた。1点勝ち越した後の延長十回2死満塁では「(重圧を)楽しもうと思った」と部訓の「エンジョイ・ベースボール」を実践。内角の直球を捉えて右前に2点打を放ち、計5打点で勝利の糸を手繰り寄せた。
選抜大会の初戦(2回戦)では仙台育英(宮城)に延長タイブレークでサヨナラ負けを喫した。同戦でサヨナラ打を浴びた松井はこの日3番手で登板し、九回と延長十回を無失点。右腕は世田谷西リトルシニア時代からのチームメートで延末は「しっかり抑えてくれて頼もしい」と笑顔を見せた。