ORICON NEWS
山下智久、SNS使いで確固たる存在感 TV露出を調整し“飢餓感”煽るブランディングの妙
10代のころから俳優として活動 デビュー前から知名度を確固たるものとした“山P”
「決定打となったのはおそらく常盤貴子・深津絵里出演の『カバチタレ!』(フジテレビ)」と話すのはNEWS結成時から山下に携わり、多くの山下主演ドラマの現場取材も行っているメディア研究家の衣輪晋一氏。「常盤さん演じる田村希美の弟役を演じたときは15歳。“可愛い”から“格好いい”、“少年”から“大人”へ移り変わる間(はざま)の悩ましげなオーラでファンが急増。その後『ランチの女王』(フジ)など多くの作品に恵まれ、デビュー前にして“山P”として視聴者から愛される存在となっていました」(同氏)
そして2005年、当時ジャニーズJr.だった亀梨和也とともに『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ)に出演。それぞれの役名でデュオを組み(『修二と彰』)、主題歌「青春アミーゴ」を歌い大ヒット。「ジャニーズといえば女性ファン」の概念を覆して男性からも支持も集め、サビ部分の振り付けにも注目が。当時のテレビ誌等で振り付けをレクチャーする特集が組まれるなど、同曲をカラオケで歌いながら、その振り付けを楽しむ人々の姿も多く見られた。その伝説のデュオは今年『亀と山P』として復活し、20万をも動員するドームツアーが予定されている。
また今月発表された『第13回 恋人にしたい男性有名人ランキング』では、初の1位を獲得。これまでも同ランキングTOP10に入ることはあったが、30代半ば(今年35歳)になっての初の1位は、元々人気者だった過去から考えるとやはり異例であり、年を重ねてますます男を上げていることを証明。ユーザーからは「とにかく顔が美しい」「かっこいし優しいし英語も話せて完璧すぎる」などの声が寄せられていた。
ヘンリー王子に次ぐフォロワー獲得で世界2位を記録、ジャニーズきってのSNS使いに
そもそもジャニーズ事務所所属のタレントには、有料制のブログ『Johnny's web』があり、登録すればタレントの“ナマ”の言葉を見ることができる。山下はそれと使い分ける形で、2018年6月に“ジャニーズ初”のSNS、Weiboでのアカウント、さらに2019年5月にInstagramを開設した。多くのユーザーが山下をフォローし、開設から7時間半で100万フォロワー突破。その到達のスピードは英国王室のヘンリー王子とメーガン妃が開設したアカウントの「5時間45分」に次ぐ世界2位であり、これにもSNSでは多くの驚きの声が上がっていた。ほとんどの投稿には100万を超える“いいね”がつき、現在のフォロワーは440万人以上となっている。
「#山P電車」としてTwitterでトレンド入りした電車を利用する様子の写真や、ハリウッド俳優ウィル・スミスとの2ショットなどの独自の交友関係、ともに90年代の“ジャニーズJr.黄金期”を支えた戦友・嵐のコンサートへ行く姿も披露。山下のSNSは、このようにプライベート感豊か。
公式SNSが開設された当初、“事務所からのおしらせ”の場を覚悟していたファンも多かったに違いない。しかし、ただの告知の場としてのみ機能してしまうとファンは興ざめする。逆にあまりにプライベートすぎると、その身近感から“スター性”の意味での価値が下がってしまう危険性も。
「そうならないバランスが保てるのは山下さんの魅力と関係がある」とは前出の衣輪氏。「インタビュー時、山下さんはあまり多くインタビュアーと目を合わせません。そしてこちらが“大丈夫かな?”と心配になる頃、絶妙にこちらの目を見て、小さな笑顔を見せる。ドラマ現場も同様で、取材陣との距離は遠いが、撮影終わりのすれ違いざまに目を合わせてかすかな笑顔で挨拶をくれる。そんな絶妙な距離感も“作られたもの”ではなく“素”でできている印象なんです。SNSで見せたプライベートによって、スター性が簡単に損なわれる、なんてことはないでしょう」(同氏)
キムタクブランドに続く山Pブランド確立、グローバルな展開でも“らしさ”表現
1月には映画『サイバー・ミッション』で自身初となる海外作品への出演を果たし、6キロの減量と全身の毛を剃るという役づくりを見せている。また、米音楽界最高峰の祭典『グラミー賞授賞式』を生中継で伝えるWOWOW特番への2年連続出演や、ウィル・スミスやウィル・スミスJr.との交流など、少ない露出の中で見せるグローバルな活動は「すごい」「やっぱりスターはスターだ」と思わせる。
「テレビに頼りすぎずにクオリティコントロールができています。テレビ露出の少なさがファンの“飢え=hunger”に。だから人々は彼を“求める”。ファンを“Satisfaction=充足”より、“hunger”で虜にするあまりいないタイプ」(衣輪氏)
同事務所先輩の木村拓哉の成した“キムタクブランド”は押しも押されぬ完璧な成功例だが、山下の“山Pブランド”もそれに続く消費されにくい魅力を持ったブランドを確立しているといえるのではないだろうか。
「SNSの使い方も踏まえてアニメで例えると、マジンガーZのようなスーパーロボット系(木村)と、ガンダムのようなリアルロボット系(山下)」と衣輪氏。ソロでの音楽活動も継続し、年に1度ジャニーズ事務所のアイドルが大集合する『ジャニーズカウントダウン』への出演もほぼ欠かさず、定期的なライブでアイドルの山下もしっかり見せてくれるところも、彼の魅力だ。五輪イヤーでもある今年、その英語力が発揮されることもあるだろう。山下には是非、今後も我々を絶妙に“hunger”な気持ちにさせる存在であってほしい。
(文/中野ナガ)