2021.08.01

「ラブコメ」「異世界転生」に押され…それでも、今こそ「スポーツ漫画」がアツいワケ。

「COMIC BULL」編集長インタビュー

オリンピックや海外で活躍するスポーツ選手など、日常的にスポーツが話題となる昨今。一方、スポーツ漫画においてはどうだろうか。漫画において「スポーツ」ジャンルは流行りすたりはなく普遍的なテーマで一定の需要を持つが、「ラブコメ」「異世界転生」「バトルアクション」ジャンルが全盛期の今、相対的にヒット作は少なく感じられる。

そんなスポーツ漫画に対し「面白ければ必ず売れる」と可能性を信じ、ひたすらスポーツ漫画作り続ける「COMIC BULL(コミックブル)」の編集長・土屋萌にインタビューを実施。現状のスポーツ漫画事情と「COMIC BULL」が実践する売れるスポーツ漫画づくり、そしてスポーツ漫画の未来を語ってもらう。

「COMIC BULL」連載作『イレギュラーズ』 ©松本直記/講談社
 

スポーツ漫画の現状

ーー現在の少年誌は、ラブコメ、異世界転生、バトルアクション漫画が全盛期であると感じます。その中で、スポーツ漫画の現状をどのように捉えているか教えてください。

土屋 前提として、今現在も面白いスポーツ漫画はたくさんありますし、どの漫画家さんも素晴らしい作品を日々執筆なさっています。ですが、一時代前と比べたときに、今おっしゃったようなジャンルと相対的に見てスポーツ漫画の純粋な作品数が減っているとは感じています。スポーツ漫画を描こうとしてくださる新人作家さん、新連載を企画するときにスポーツ漫画を描きたいと提案される作家さんの数も減ってきているように思います。

個人的に一つ理由として考えられるのは、スポーツ漫画は物語が盛り上がるまでの道のりが長くなりがちであること。たとえば主人公がスポーツを始めて、チームメンバーに認められて、レギュラーを取って、試合に出て勝利をつかむのがひとつの王道な流れだとすると、1話から最高潮にまで盛り上がる構成にはしづらいジャンルかもしれません。

たとえば、異世界転生作品の場合、「現実でうだつの上がらない人が何かのキッカケで異世界に行ったら、いきなりすごい魔法が使えるようになった」といったように、1話目からマックスの盛り上がりをつくりやすい。一方、スポーツ漫画では非現実的なレベルアップなどは受け入れられづらい傾向があり、かと言って瞬間的な盛り上がりを重視するあまり、大きな災害が起こったり、誰かが亡くなったりといった、ある種奇をてらったようなショッキングな展開で掴みを作っても、それはスポーツを楽しみたい読者が求める面白さではなかったり。

今の漫画は昔に比べて1話で面白くないと見切られてしまうことが多いため、そのジレンマから相対的にスポーツ漫画が減ってしまったのかもしれません。

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