ティラノサウルスVSスピノサウルス 恐竜博2016より

恐竜版世紀の一戦 専門家に聞いてみた

 東京・上野の国立科学博物館で、「恐竜博2016」が3月8日から6月12日まで開催中だ。3月7日には、報道向け内覧会が行われ、一足早く展示物を観賞することができた。目玉は、史上最大の肉食恐竜スピノサウルス(全長15メートル)と、永遠の人気者ティラノサウルス(全長12メートル)の競演。展示場には、2体の全身復元骨格が並び立っている。恐竜界のスーパースター2体を眺めていると、血湧き肉躍る戦いが、頭に浮かんできた。

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 ティラノサウルスは、白亜紀後期の後半(約8300万年前~約6600万年前)に北米とアジア(主に中国とモンゴル)に生息していたとされる肉食恐竜。全長5~13メートル。後ろ脚で二足歩行する一方、前脚は極端に小さかった。ほかの肉食恐竜に比べて頭が大きく、太く鋭い歯を持ち、かむ力が非常に強かったと考えられている。
 「恐竜博2016」で展示されている個体は、1991年にカナダで発掘された愛称「スコッティ」。国立科学博物館の真鍋真博士によれば、発見された際、スコッチウイスキーでお祝いしたからそう名付けられたという。2013年に全身復元骨格が完成したばかりの「スコッティ」の視線の先には、スピノサウルスがいる。

 スピノサウルスは、白亜紀半ば(約9700万年前)に生息していたとされる肉食恐竜。1912年にエジプトで化石が見つかった後、ミュンヘンの博物館に移された。しかし、第2次世界大戦中の爆撃で焼失。長い間、絵や写真でしか確認できなかったため、謎の恐竜と呼ばれていた。2000年代に入ってからは、新たな化石が次々と見つかり、ようやく全身骨格が復元できるようになった。初の化石発見から約100年後となる2014年には、四足歩行をしていたことや、水中で長時間過ごしていたことが分かった。

 「恐竜博2016」では、エジプトとモロッコで発見された化石をもとに、日本初となる全身復元骨格の展示が実現した。来日中のミラノ自然史博物館クリスティアーノ・ダル・サッソ博士によれば、スピノサウルスはティラノサウルスより2メートルほど大きく、発達した前脚で魚を捕食。ワニに似た細長い口先に、魚の動きを探知する感覚器官を備えていた。また、水かきのついた後ろ脚と尾を使って泳ぎ、背中の突起を敵に見せて縄張りを主張していたという。

 両者とも、鋭い歯、縄張り意識を持つ巨大肉食恐竜。そこで、誰もが考えるのが、「両者が出会ったら(戦ったら)、どうなる」という疑問だ。映画「ジュラシック・パーク3」では、明確な決着がつく格闘シーンが登場する。しかし、あれは映画の話。筆者は、スピノサウルスの骨格復元に貢献した専門家ダル・サッソ博士に疑問をぶつけてみた。俗な言い方、空想の話で申し訳ないが、恐竜版世紀の一戦。専門家は、どう見ているのか。(時事ドットコム編集部 山本典央)

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