焦点:ブラックマンデーから30年、株価暴落の再来あるか

焦点:ブラックマンデーから30年、暴落の再来あるか
10月19日、1987年の株価大暴落から30年を迎え、米国株は史上最高値を記録した。健全な企業業績と経済成長にもかかわらず、高騰するバリュエーションは、価格調整が迫っていることを意味するのではないかと投資家は危惧している。写真はダウ平均が2万3000ドルを超えた記念の帽子をかぶるトレーダー。ニューヨーク証券取引所で17日撮影(2017年 ロイター/Brendan McDermid)
John McCrank Chuck Mikolajczak
[ニューヨーク 19日 ロイター] - 1987年の株価大暴落から30年を迎えた19日、米国株は史上最高値を記録した。健全な企業業績と経済成長にもかかわらず、高騰するバリュエーションは、価格調整が迫っていることを意味するのではないかと投資家は危惧している。
たが、「ブラックマンデー」は今日、再び起こり得るのだろうか。現代の取引テクノロジー、株式市場の仕組みや投資資産の運営手法の変化を考えれば、1987年の暴落再発は想定しにくいだろう。それでも、慎重な投資家はその可能性を排除していない。
「われわれは、反応や過剰反応について、過去の過ちから多くを学んだ」と、オニール・セキュリティーズでニューヨーク証券取引所を担当するケン・ポルカリ氏は言う。
1987年10月19日、前週に発生したアジアと欧州市場での大幅な株価下落を受け、ダウ工業株30種<.DJI>は508ドル下落。下落率は22.6%で、1日の下落幅として史上最大となった。
現在でも1日最大20%下落することは可能だが、もっと秩序ある展開になると予想するのは、ワンダーリッチ・セキュリティーズのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏だ。
「われわれには、取引を一定時間停止して状況を分析し、通常取引を再開するための最善策を見極め、より落ち着いた対応をとる能力がある」と、ホーガン氏は言う。
1987年の暴落を受け、米証券取引委員会(SEC)は全銘柄が対象の「サーキット・ブレーカー」制度を導入し、ダウ平均が10%、20%、または30%下落した場合、強制的に一時取引を停止させるようにした。この制度が全市場で発動されたのは、1997年の1度だけだ。
サーキット・ブレーカー制度は2012年に改訂され、取引停止の発動基準を緩和した。また、ダウ平均に代わり、S&P総合500種<.SPX>をベンチマーク指標とした。
現在のルールでは、S&P総合500種が、米東部時間の午後3時25分までに7%下落した場合、取引は15分間停止する。取引再開後も下落が続き、まだ3時25分前であれば、下落率が13%に達した時点で再び取引が停止される。もし3時25分以降に下落が続いていた場合は、取引は継続される。だが下落率が20%に達した場合、時間帯に関わらずその日の取引は終了となる。
「業界は、87年から非常に大きく進歩している」と、コンサルティング会社TABBグループのラリー・タブ氏は言う。「規制当局は、不安定になる理由が何もない時には、市場が安定を維持していられるようなルールをちゃんと整備している」
市場の混乱を抑えるために導入された現行制度の多くは、2010年5月の「フラッシュ・クラッシュ」の後に導入された。この時は、ダウ平均が数分間の間に約9%にあたる1000ドル近く下落し、ふたたび短時間でほぼ回復した。
SECは2012年に「リミット・アップ、リミット・ダウン(値幅制限)」と呼ばれる規制を導入し、個別銘柄が直近の終値から一定の範囲を超えて変動した場合、その銘柄の取引を停止させた。
その後、2015年8月の市場混乱を受け、値幅の再設定と、取引再開に向けた手続きを定めることを余儀なくされた。その時は、中国経済の健全性への懸念からパニック売りが起きて買い手不足となり、ダウは取引時間中で過去最大となる1日の値下げ幅を記録した。
当日は455の個別銘柄と上場投資信託を巡る1250件以上の取引が停止となった。それによる市場の困惑が問題を悪化させたとみられ、一部の投資家は本来よりも低い価格での取引を余儀なくされた。
「どんなことでも起き得る」。エンパイヤ・エクセキューションのピーター・コスタ社長はこう話す。「コンピューター技術の導入と、それが市場を変えたスピードをみれば、何でも可能だ」
これまでに導入されたセーフガード機能が、1987年のような暴落の再発を防いでくれるだろう。だが、ダウ平均が18日、史上初めて2万3000ドルを突破し、高速自動取引が出現しているいま、一部の投資家は不安を隠せない。
「あの時のようなことが、起き得るだろうか」と、ローゼンブラット証券のゴードン・チャーロップ氏は、自問する。「そうだ、起き得る。だがそれがどう展開し、どんな結果になるのか。それこそ、彼らが投資する理由だ」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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