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 三菱電機は2022年10月20日、国内の製造22拠点全ての品質不正調査が終了し、合計197件の不適切事案を確認したと発表した。前回の調査報告後、新たに70件の不正が発覚し、10人の役員らを追加の処分対象とした。当初不正に関与していないとしていた柵山正樹前会長が関わったと判明した事案もあった。今後は再発防止に向けた改革を加速させるとともに、調査範囲を関連会社にも広げる。

記者会見の冒頭で謝罪する三菱電機の漆間啓社長
記者会見の冒頭で謝罪する三菱電機の漆間啓社長
(写真:日経クロステック)
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 外部の弁護士などで構成する調査委員会が第4報かつ最終となる調査報告書をまとめた。2021年6月に長崎製作所で鉄道車両用空調装置などの不適切検査が判明して以降続けていた品質不正調査が一段落した。調査委員会は最終報告書までに5万5302人の従業員を対象とするアンケート調査で93%の回答を得て、累計2542人に対して3961回のヒアリングを実施した。その中から2362件の要調査事項を抽出し、国内17製作所で合計197件の不適切事案を確認した。調査委員会委員長の木目田裕氏は「可能な全ての手段を尽くして調べた」と語った。

 197件の不適切事案のうち、112件は意図的だったとした。意図的な不正は大きく2パターンに分けられる。具体的には、納期や試験設備の問題で契約内容とは異なる試験や検査を行ったパターンと、設計に起因する製品のばらつきなどによって顧客要求を満たせなかったときに実質的な品質に影響がないと考えて虚偽の報告を行ったパターンがあった。

 意図的な不正は全社的な指示によるものではなく、各製作所の判断で行われていた。木目田氏は多数の製作所で類似した不正があった背景について、「手続きで品質を証明していくという考えが日本企業では腹落ちしにくく、(手続きを順守しなくても)性能に実質的な問題がないという正当化に陥りやすかった」と分析した。意図的な112件の事案のうち、62件には管理職が関与していた。

製作所ごとの品質不正件数と不正が意図的か否かの判定
製作所ごとの品質不正件数と不正が意図的か否かの判定
これまで製作所ごとに統一していなかった不正件数の数え方を社会的事実として1つの不正と評価できるかという観点で整理し直したことで、第1~3報の不正件数が変わっている。第1~3報の不正件数を記した列の丸カッコ内にある数字が従来の手法で数えていた件数、その上の数字が今回統一した方法で数えた件数。例えば、長崎の車両用空調装置の試験では試験項目ごとに1件として数えて計6件の不正としていたところを、いずれの項目も1つの試験の一部にすぎないと判断し、1件とカウントし直している。〔出所:調査報告書(第4報・最終報告)〕
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