大企業の本社がひしめく東京・丸の内。その日本経済の中心地で昭和27年に創業した老舗「欧風ダイニング ポールスター」の看板メニューは、ドライカレーだ。かつて欧州航路で人々に愛された貨客船「三島丸」で誕生した一品で、今もそのレシピが脈々と受け継がれている。(櫛田寿宏)
◆6時間をかけてじっくり仕上げ
ポールスターがあるのは東京駅にもほど近い、三菱UFJ信託銀行本店ビルの地下1階。丸ビル、新丸ビルはもちろん、付近は三菱グループ企業の本社が多く集まり、「三菱村」とも呼ばれる。昼時にはスーツ姿の人々でにぎわい、さながら社員食堂のようだ。
三島丸は三菱グループの源流企業、日本郵船所有の貨客船だった。ポールスターもまた、かつて日本郵船のグループ会社。こんな関係から船上のドライカレーのレシピがポールスターで受け継がれているという。ドライカレーは暑いインド洋を長く航行し、疲れて食欲が落ちた客からのリクエストで生まれた料理とされ、明治44年の同船のメニューには「ロブスター&ドライカリー」の記載がある。
12ミリ角程度の牛肉を、カレー粉やタマネギ、ニンニク、ショウガなどとともに炒め、約6時間かけてじっくり仕上げる。一皿に約100グラムの肉を使うので、肉を食べたという満足感は予想以上だ。