選択的夫婦別姓を前向きに
夫婦別姓を認めない民法の規定は、憲法に反するのか。最高裁大法廷がこのほど弁論を開き、年内にも初の憲法判断を示す見通しとなった。
この規定を巡っては、約20年前に見直す機運が高まったが、実現せず、司法の場に持ち込まれた経緯がある。本来ならば、社会全体で考えるべき課題だ。裁判で関心が高まっている今だからこそ、一人ひとりが関心を深め、改革に向けた議論につなげたい。
焦点となっているのは、民法750条の「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」という規定だ。現状では、女性が姓を変えるケースがほとんどだ。東京都などの男女5人が「両性の平等を定めた憲法に反する」などとして2011年、国家賠償を求める裁判を起こした。
法務省の法制審議会は1996年、希望すれば夫婦ともにこれまでの姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」を導入するよう答申した。だが「家族の絆を壊す」などの異論が強く、実現していない。12年の内閣府の調査でも、改正について国民の意見は割れている。
家族の絆はもちろん大切だ。だが、保つ方法は法律だけではないだろう。世界的にみれば、法律で同姓を義務付けている国は例外的だ。政府は閣議決定した答弁書のなかで「我が国のほかには承知していない」とした。
別姓を求める声はさまざまだ。自分の姓に強い愛着を持つ人もいれば、少子化のなか実家の姓を残したい、という人もいる。さらに、仕事に支障が生じるという声が少なくない。「女性の活躍」が大きなテーマになっているだけに、見逃せない論点だ。
選択的夫婦別姓制度は、別姓を強制するものではない。あくまで希望する人には認めようというものだ。
不自由な思いをしている人がいるなら、その悩みを受け止める。異質だといって排除しない。そんな多様性を認める発想こそ、成熟した社会に必要ではないか。