メイドカフェに見せかけ、強引に…コロナで変わる秋葉原 らしさどう守る?

2021年6月5日 06時00分

メイド風の服装で客引きをする女性(左)=東京・秋葉原で

 東京・秋葉原で、接待を伴わない業態のメイドカフェに見せ掛けた無許可営業や強引な客引きが問題化している。コロナ禍で歓楽街での営業が難しくなったガールズバーなど「接待を伴う飲食店」が進出し、環境が変化したことが背景にある。住民から懸念の声が上がり、早めに手を打とうと、警察や行政が対策に乗り出している。(佐藤大、井上靖史)
 「寄っていってよー」。ミニスカートのメイド風姿の女性が、道行く人に手を振りながら笑顔を振りまいている。
 緊急事態宣言下の5月下旬の夜、秋葉原の通りに、女性の客引きがぽつりぽつりと立っていた。雑居ビルに入居する「メイドカフェ」や「コンセプトカフェ(コンカフェ)」への来店を誘う。少し後方から女性を見張るスーツ姿の若い男性の姿もあった。

◆新宿や池袋からガールズバーなど進出

 「コンカフェ」とは特定のテーマを打ち出したカフェで、メイドカフェもその一形態。秋葉原地区には約200店ほどのコンカフェがあるとされるが、地元関係者によると、コロナ禍で営業が厳しくなった新宿や池袋のガールズバーなどが進出し、客引きも激しくなったという。別の関係者は「もともとメイドがビラ配りをするアキバならやりやすい、ということになったのでは」と分析する。
 このような街の変化に、住民から苦情が警察に寄せられている。警視庁は先月18~21日にかけて、メイドカフェを装い無許可で接待していたとして風営法違反容疑で店長や経営者を逮捕。通りに数メートルおきに並んだこともあった客引きは激減した。
 それでも一部の客引きは街頭に立つ。メイド風姿の女性(19)は「摘発されたのは別の系列の店。ウチは『ルール』を守っている」と強調した。

◆「アキバらしさ」一律排除で失われる懸念

 この機に街の安全安心を取り戻したいと、地元の千代田区は先月25日、住民や商店主、警察関係者らを集め意見交換会を開いた。通学路の子どもたちへの悪影響などから徹底した取り締まりを求める声が上がった一方、メイドカフェ経営者から「客引きには道路使用許可をもらっている。すべての店が違法行為をしているわけではない」との意見も。一律の排除で「アキバらしさ」が失われることへの懸念の声もあった。
 電気街として発展した秋葉原は「オタクの聖地」へと変貌し、ポップカルチャーの発信地となった。2008年には連続殺傷事件があり、「歩行者天国」は一時中止した。激しい街の変化に、地元商店街などでつくる秋葉原地域連携協議会「アキバ21」が自主的なパトロールを行ったり、区が独自の客引き防止条例を制定するなどして対応してきた。
 意見交換会に参加した「アキバ21」のメンバーの一人は取材に「コロナ後から、自分の店の前にも客引きが立ったりしてちょっと異常な状態。このまま放置するのもいけない。いつもワクワクする街にできるよう、皆さんと一緒に頑張っていきたい」と語った。

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