国内最古級のすずり?下稗田遺跡で3点出土 福岡・行橋市
福岡県行橋市の下稗田遺跡で出土していた板状の石3点が弥生時代中期前半ごろのすずりとみられることが9日、分かった。各地の出土品からすずりの有無の再検討を進める国学院大の柳田康雄客員教授(考古学)の調査で、これまで同県糸島市や朝倉市などで弥生時代中期中ごろのすずりを確認しているが、今回はさらに古く国内最古級という。
同遺跡は1979~83年に発掘調査された弥生前期-中期の大規模集落跡。土器や鉄器などのほか約50点の砥石(といし)が出土品として調査報告書に記載されている。柳田教授は9月下旬に行橋市を訪れ現物を確認し、3点はすずりの可能性が高いと判断した。
板石は上端4~8センチ、下端6・3~7センチ、長さ7・7~9・8センチ、厚さ1~1・4センチの台形など。表面に炭をすってできた溝のようなくぼみがあり、周縁に炭粒の痕跡があったことから、すずりとみられるという。
柳田教授は、同時期のすずりは福岡、佐賀県の玄界灘沿岸に多数あるとみており「紀元前2世紀(弥生時代中期前半ごろ)に、九州の東海岸にも高度な文化が伝わっていた証拠」と説明した。
西谷正・九州大名誉教授(考古学)は「年代については慎重な検証が必要だが、瀬戸内や近畿につながる周防灘沿岸でこの時代にすずり文化が定着していたと裏付けられれば意義は大きい」と話している。 (石黒雅史)