米ロ、核軍縮で新条約探る 中国は参加拒否
【モスクワ=石川陽平、ワシントン=中村亮】米国とロシアは17日、ジュネーブで次官級協議を開き、新たな核軍縮の枠組みを協議した。6月28日の米ロ首脳会談で「21世紀の軍備管理モデル」(米ホワイトハウス)の検討開始で一致したが、トランプ米大統領が求める新条約への中国の参加はめどが立たない。制限する核兵器の範囲も米ロの溝が深い。
次官級協議には、米政府からサリバン国務副長官とトンプソン国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)が、ロシアはリャプコフ外務次官が出席した。サリバン、トンプソン両氏は18日にブリュッセルを訪れ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に米ロ協議の結果を報告する予定だ。
米国はロシアが中距離核戦力(INF)廃棄条約に違反しているとして、2月に義務の履行を停止した。続いてロシアも義務履行の停止を決め、INF廃棄条約は8月初めに失効する見通しだ。2021年2月には米ロ間に残る唯一の核軍縮条約、新戦略兵器削減条約(新START)も期限を迎え、新たな核管理の枠組み作りが急務だ。
ただ、米ロ協議の行方は不透明だ。ロシアのプーチン大統領は6月29日の記者会見で「新STARTの延長につながるかは分からない」と懐疑的だった。中国の核戦力強化を懸念するトランプ氏はプーチン氏に「中国を含める必要がある」と強調した。
ロイター通信によると、米側は17日の米ロ協議を前に、中国も加わる3カ国の条約を結ぶ可能性を話し合う意向を示した。一方、中国外務省の耿爽副報道局長は16日の記者会見で「中国が米ロのこのような協議に参加する前提も基礎的条件もない」と改めて参加を拒否した。ロシア上院のコサチョフ外交委員長も同日、3カ国の合意は想定しないと述べた。
習近平(シー・ジンピン)指導部には米ロと中国の核戦力の差は大きく、現時点で軍縮協議に参加するのは自らの手足を縛りかねないとの懸念がある。中国共産党系メディアの環球時報は社説で「中国の戦略核は安全保障のための最低水準にすぎない」と強調した。
制限する核兵器の対象も焦点となる。トンプソン氏は5月半ば、ロシアが開発する核弾頭を搭載可能な超音速滑空ミサイルや超大型大陸間弾道ミサイル(ICBM)も新条約の対象にすべきだと米上院で発言した。だがロシア側は「対象ではない」(アントノフ駐米大使)と反発する。新STARTで対象外だった短距離の戦術核なども検討課題になりそうだ。
長射程の核戦力を制限する新STARTを巡っては、ホワイトハウス高官は20年以降に延長の是非を決めるとも説明している。米政権では核軍縮の土台として新STARTの延長は不可欠との見方があるが、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は否定的だ。