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野の命 身にまとう 日本固有、藤布の伝統紡ぐ(未来への百景)

京都府京丹後市

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日本固有の植物、フジ。晩春に薄紫色のチョウが群舞するがごとく咲く花はあでやかだ。そのつるから取った糸で織った藤布(ふじふ)の衣類は縄文期を淵源とし、広く庶民に愛用された。万葉集にも「ふじごろも」とある。

昭和に入り、藤布の利用や製造は絶えたとされたが、約50年前、京都の経ケ岬近くで海女がサザエなどを入れる袋として使っていたことがわかった。海中で抵抗を受けず、ぬれても体にまとわりつかない。まさに命を守る実用品。伝統は消えていなかった。

京丹後市の織物会社の4代目、小石原将夫さん(66)は30年ほど前から古老らに教えを請い、仲間とともに勉強会を開いて技術を習得。今も昔ながらの手法で糸を紡ぎ、布地に織る。「古代人が藤布をまとったのは、旺盛なフジの生命力を自分のものにしたいという願いがあった」と小石原さんは話す。

絹糸で織られ、染め上げられた優美な工芸品の趣とは異なり、藤布には古民具のような暖かさと親しみやすさがある。素材の良さを十全に引き出そうとする知恵と技が込められているからだろう。

藤布作りは野に自生するつるを刈ることから始まる。他の木に絡みついたものは力づくで外し、ナタを下ろす。乾燥しない間に、木づちでたたいて表皮をはぎ、さらに外側の鬼皮(おにがわ)と内側の中皮(ちゅうひ)に分ける。

木灰を入れた湯で中皮を4時間煮炊き、川にさらして竹製の器具で不純物をこす。繊維が現れ、糸らしくなった。「灰はアルカリ度の高いシイやコナラのものがいいが、入手が難しい」と小石原さん。

長い糸にする作業は「藤績(う)み」と呼ぶ。着心地を考えて結び目ができぬよう、指で丁寧による。「1日8時間で糸が20グラム。帯1本には1キロ必要なので、単純計算で50日」。地道な作業だ。

手仕事が生む風合いの良さが徐々に広まり、小石原さんは藤布で作った様々な製品を携え百貨店などを行脚する。2010年、藤布は国の重要有形文化財に指定された。

自然の恵みに英知を加え、それを身にまとって命をつないだ古代人。数千円でひとそろえの服が買えるファストファッション時代を謳歌する自身を振り返り、小石原さんが操る機織り機の一拍一拍に粛然、背筋が伸びる。

文 大阪・文化担当 毛糠秀樹

写真 浦田晃之介

 〈取材手帳から〉 絶滅の淵から復活を遂げた藤布は国際舞台へのデビューも果たした。
 2011年9月、パリで開かれた世界最大規模の繊維素材の見本市「プルミエール・ビジョン」に出品。しかも、高度な技術を持つ13社だけを集めたエリア「メゾン・ド・エクセプシオン」に結城紬などとともに展示された。職人技で織られた伝統的な布と世界のトップブランドのマッチングを狙ったエリアだという。
 見本市には世界各国から700社以上が参加し、約4万6000人が来訪。藤布は大手ブランドからサンプルの発注も受けたという。

 〈カメラマン余話〉 細かな繊維を集めてよりあげた糸のほつれを、指で直しながら織っていく。ギイギイと踏み板を動かしながら、思ったよりゆっくりと。少しずつつまっていく縦糸と横糸の向こうに小石原さんの姿を写そうと、織機の木枠と踏み板の隙間に潜り込んだ。

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