ボクシング井上尚弥、次の目標は4団体統一 前回の「誤算」バネ、キズ一つ無い顔 「一方的勝利」で23連勝

2022年6月8日 06時00分
 ボクシングの世界バンタム級3団体王座統一戦は7日、さいたまスーパーアリーナで行われ、世界ボクシング協会(WBA)国際ボクシング連盟(IBF)同級王者の井上尚弥(大橋)が、世界ボクシング評議会(WBC)同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)を、2回1分24秒、TKOで下した。

2回、ノニト・ドネア(右)を攻める井上尚弥=いずれもさいたまスーパーアリーナで

◆「うまくいきすぎ」日本人初の快挙も通過点

 3本のベルトを懸けた再戦で、別次元の強さを見せた。2団体統一王者の井上尚が、世界5階級制覇のドネアを圧倒。顔に傷一つなく、2回TKO勝ち。レジェンドとの闘いに決着をつけ、日本選手初の3団体統一王者の称号を得た。「夢じゃないかなと思うほど、うまくいきすぎた」
 初回。いきなりドネア得意の左フックを受けた。前回の試合が頭をよぎり、「目が覚めた」と相手を警戒。ただ、「1ラウンドを絶対取らないといけない」。残り10秒を切ると、攻勢を強め、右ショートストレートでダウンを奪った。
 2回。猛攻が始まった。スピードに乗った多彩なパンチが確実に相手に当たる。会場から地鳴りのような声援が響いた。最後はワンツーから左フックで再びダウンを奪い、レフェリーが試合を止めた。
 2019年11月以来の再戦。前回は右眼窩がんか底骨折を負った末の判定勝ち。「第1戦目はドラマにしてしまったという誤算があった」
 2年7カ月間で、ドネアが世界王座に返り咲いた。念願の王座統一戦が自分を唯一苦しめた相手。「今度は一方的に勝つ」と自らにプレッシャーをかけたのは、不安があったから。「だからこその今日の結果」。一回り成長した姿を場内1万7000人の目に焼き付けた。
 日本人初の偉業は成し遂げた。ただ、「モンスター」にとっては通過点にすぎない。今後は世界ボクシング機構(WBO)同級王者ポール・バトラー(英国)との4団体王座統一戦を希望する。「年内にかなうならバンタム級で。かなわないなら、1つ上の階級で新たなステージで挑戦したい」。さらに上へ。飽くなき向上心が、リングへ駆り立てる。(丸山耀平)

試合後、井上尚弥(手前)と健闘をたたえ合うノニト・ドネア

◆再び王者として戻ってきた5階級制覇のレジェンドも…

 ゴングと同時に前へ出て、プレッシャーをかけた。得意の左フックを放つ。緊張感のある試合を生んだのは、開始早々のドネアの攻撃だった。
 だが、1回終了間際に右ストレートを浴びてダウン。これが効いた。スピードではライバルに及ばなかった。2回に入ると、連打をもらい、耐えるのが精いっぱい。最後はコーナーでワンツー、左フックを食らい、崩れ落ちた。
 ダメージが大きく、試合後のインタビューは取りやめとなり、「彼はとても強く、勝ちに値する選手。おめでとう」とコメントを出した。
 2年7カ月前の対戦で井上尚に敗れ、闘志に火がついた。再び世界王座に返り咲いた39歳。2連続KO勝利でこの日を迎えていた。
 リングを下り、引き揚げるドネアに万雷の拍手が注いだ。ボクシングファンから愛された世界5階級制覇のレジェンド。敗れたとはいえ、その功績は色あせない。(森合正範)

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