ウイグル「中国化」強まる 党幹部と「親戚関係」169万世帯 イスラム教活動を監視、飲酒強制も
【北京・川原田健雄】中国の習近平指導部が、イスラム教徒の少数民族ウイグル族に対して「中国化」政策を強めている。新疆ウイグル自治区では共産党幹部がウイグル族住民と「親戚関係」を結ぶ制度を導入し、宗教活動を監視。中国内のイスラム教徒に共産党の指導を徹底させる5カ年計画も進める。
党中央統一戦線工作部によると、親戚制度は約2年前に導入。昨年一気に拡大し、11月末までに党幹部や政府関係者ら112万人と169万世帯のウイグル族家族が「親戚」となった。党幹部らは定期的に各家庭を訪問して泊まり込み、生活相談などに対応。同工作部は生活水準の向上や民族団結に成果があったと強調した。
自治区トップの陳全国・党委員会書記自身も、南部ホータンの家族と親戚になり「党と国、社会主義を愛する伝統を受け継いでいこう」と呼び掛けたという。
これに対し、米政府系メディアのボイス・オブ・アメリカは「『親戚』は中国政府から派遣されたスパイだ」と指摘するウイグル族住民の声を紹介。イスラム教で禁じられた飲酒を強制したり、住民がギョーザを食べる際に豚肉の有無を尋ねるかをチェックしたりして、イスラム教への忠誠度を確認する「親戚」もいるという。一部住民は「親戚を信用していないが、表向きはもてなす。行き届いてなければ、上に報告されて再教育施設に送られるかもしれないから」と語った。
また中国当局公認の中国イスラム教協会は今月初め、「イスラム教の中国化」に向けた5カ年計画についての決議を採択した。計画は同協会が作成。2022年までに講義を通じて社会主義の価値観や法律、中国の伝統文化などを教徒に教え込むという。
当局はテロ対策を名目にイスラム教徒のウイグル族を次々と拘束。国際社会から批判が高まっている。今回の一連の措置も宗教への圧力として国内外から反発を呼びそうだ。
=2019/01/16付 西日本新聞朝刊=