まずは同月28日付の読売新聞。
< 裁判官の氏名すら知らず、判断のしようがない、という人も多いだろう。『形骸化した制度』と指摘されるゆえんである。(中略)過去の主な判例は最高裁のホームページで検索できる。審査の前に閲覧してみてはどうだろう >
最高裁裁判官についての自らの報道が十分であったかどうかには触れずに、有権者である読者に自助努力を求めているということだ。
次は同月27日付の日本経済新聞。
< 審査対象の裁判官にまつわる情報の開示・提供が少なすぎる。(中略)せっかく元のデータは整っているのだから、膨大な情報でも簡単に提供できるインターネットの特性を利用する広報の手法を考えてはどうだろう >
なぜ最高裁を取材しないのか
最高裁裁判官について有権者が無知なのは、新聞報道が足りないというよりも、政府広報が足りないからというわけだ。
最後は同月26日付の朝日新聞。
< 国民審査の形骸化より基本的な問題は、彼らが国民からまったく見えない密室の中で選ばれてきていることではあるまいか。(中略)どんな仕事をしてきた人がどんな理由で選ばれたのか、国民は知らされない。国民審査が形骸化している原因はこうしたことにある >
どんな最高裁裁判官がどのように選ばれているのかが一般に知られていない原因は、政府の秘密主義であると指摘しているのだ。
放っておけば権力は秘密主義に走る---これは古今東西変わらない。情報の独占は権力側の力の源泉だ。国民が無知であればあるほど好都合。国民の前にすべてを洗いざらいさらけ出してしまったら、好き勝手に行動できなくなる。
だからこそ「第4の権力」、つまり報道機関に期待が集まる。行政、立法、司法の3権が何をやっているのか徹底的に調べ、広く世の中に向けて伝えることで、権力と国民の間の情報格差を埋めていく機能を果たすわけだ。
ところが、国民審査に際して大新聞は「広報活動を拡充すべき」「透明性を向上すべき」といった内容の社説を書き、権力側の対応に期待を寄せるだけだ。「国民の無知」を力の源泉にする権力側が自主的に権限を手放すと思っているのか。それとも権力側と一体化してしまい、権力のチェック役として立場を忘れてしまったのか。
新聞記者は、夜討ち・朝駆けで血のにじむような思いをしながら、守秘義務を負う検察官から捜査情報を聞き出し、「特ダネ」を仕入れている。その気になれば最高裁の取材でも「密室」をこじ開け、どのような理由でどんな長官や判事が選ばれるのか明らかにできるはずだ。情報公開制度を活用するなど調査報道の手法も取り入れればより効果的だ。
少なくともアメリカの新聞はそうしている。
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