テスラ、本社をテキサス州に移転 マスクCEOが表明
【シリコンバレー=白石武志、ヒューストン=花房良祐】米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は7日、本社を西部カリフォルニア州パロアルトから南部テキサス州オースティンに移すと発表した。現在の本社周辺では物価や人件費の上昇が著しく、採用や事業拡大が難しくなっていた。言動が注目を集めるスター経営者の決断は、シリコンバレーの他の企業にも影響を与えそうだ。
7日にオンラインで開いた株主総会後の質疑応答で明らかにした。マスク氏は現在の本社や主力工場があるシリコンバレー周辺について「人々が家を買うのも、遠くから(工場などに)通ってもらうのも大変だ」と指摘。「(サンフランシスコ湾周辺の)ベイエリアでは規模の拡大に限界がある」と述べた。
テスラは現在、テキサス州オースティンで新たな電気自動車(EV)工場の建設を進めている。7日の株主総会も同工場から中継した。マスク氏は同工場について「空港から5分、市街地から15分だ」と述べ、立地の良さが本社移転の決め手になったことを示唆した。
マスク氏は「念のために言うと、カリフォルニア州での事業活動は引き続き拡大する」とも述べた。「我々の意図は(カリフォルニア州の)フリーモント工場とネバダ州のギガファクトリー(車載電池工場)の生産量を50%増やすことだ」と述べ、既存工場への投資も続ける考えを強調した。
マスク氏は2020年末に自らの生活拠点をテキサス州に移したと表明していた。テスラの株価上昇に伴って同氏は巨額の成果連動型報酬を受け取ると見込まれている。テキサス州は個人の所得税を課していないことで知られ、移住は節税のためとの見方もあった。
マスク氏は20年にカリフォルニア州内の工場が新型コロナウイルスの影響で一時閉鎖を余儀なくされた際に、本社を州外に移すと主張。地元自治体に操業再開を認めさせていた。テキサス州には同氏が率いる宇宙開発ベンチャー、米スペースXの開発拠点もある。
シリコンバレー企業ではオラクルやヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)もコスト削減などを理由にテキサス州への本社移転を表明している。新型コロナで在宅勤務などの新たな働き方が広がったことも、企業の立地戦略に影響している。
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