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全国各地の博物館で、保管スペースが慢性的に不足している。地域住民からの寄贈が続く一方で、収蔵庫を広げる財政的な余裕がないためだ。温度や湿度の管理が不十分な状態で保管を強いられている例もあり、「多くの資料を後世に残す」という博物館の使命が危機に直面している。
なまはげの面や農機具、動物の
劣化を防ぐため、収蔵庫内は室温20度、湿度60~65%に保っている。しかし、引き取った品々のリスト化といった資料整理が追いついておらず、一部の収蔵品は段ボールに入ったまま。同博物館の主任学芸専門員、新堀道生さん(53)は「新しい収蔵庫をつくるのが理想。県の担当部署に現状を伝えているが、予算的に厳しいようだ」とこぼす。
博物館法は、博物館の主な役割を「資料の収集」「保管」「展示」「調査研究」としている。このため多くの博物館は、寄贈品は可能な限り受け入れ、引き取った資料は廃棄しないことを原則としている。
日本博物館協会の2019年度の調査によると、回答した2314館のうち、「収蔵庫がほぼ満杯」「収蔵庫に入りきらない資料がある」と回答したのは57・2%で、6年前の調査に比べて約10ポイント上昇した。
また27・2%の博物館が、博物館の外に収蔵スペースを設けていると回答している。廃校になった校舎を有効活用している例もあるが、学校施設には温度や湿度を一定に保つ設備がないため、動物の剥製や古文書などの保管には向いていないという。
神奈川県の平塚市博物館も、10年ほど前から収蔵庫がほぼ満杯の状態が続いているが、寄贈品の引き取りは継続している。現時点で希少性がわからなくても、将来的に価値がわかるケースがあるためだ。例えば川で発見されて04年に同博物館に寄贈された金属片が、鑑定により7年後に鎌倉時代の馬具とわかり、市の重要文化財に指定された。
館長代理の川端清倫さん(55)は、「収蔵品が増えるのは博物館の宿命。まずは、こうした状況を多くの人に知ってほしい」と語る。