来年1月からアニメ化される『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』。タイトルのインパクトはもちろん、現在公開されているPVもテンションMAX! ハイパー変態妹コメディとして期待されている作品です。

今回はその原作者、草野紅壱氏にインタビューしてみました。

名前長いよ!

ーー 『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』はなぜこのようなタイトルになったんでしょう?
草野:実はこの異常に長いタイトルは『コミックハイ!』編集部からのご提案なんです。とにかく引きの強いタイトルにしたいと。
ーーにしても長いですよね(笑)
草野:あまりに長くて『WEBコミックハイ!』のビュアーにタイトルが全部入りきらないんです。ちなみに僕がご提案したタイトルは「妹異常恋人未満」という微妙な感じのものでした(汗)
ーー『お兄ちゃんのことなんか』までしか入ってないですね(笑)。これ短縮名とかあるんでしょうか?
草野:特に決まっていないんですよ。
担当さんと僕との間では「お兄ちゃん~」「お兄ちゃん(略)」という感じで話していますから強いて言うなら「お兄ちゃん」が短縮名でしょうか(;´Д`)
ーー ではこれ以降『お兄ちゃん~』で会話進めていきます(笑)

テーマは思春期の欲望?

ーー アニメ化ということでどんなお気持ちでしょうか。
草野:アニメ化に関して、正直僕くらい驚いている人はいないと思います。自分の描いた漫画がアニメ化されるという事も勿論、漫画の内容が内容ですので公共の電波に乗せて良いものやら、という意味で(苦笑)
ーー かなりギリギリ……ですね(笑)
草野:そもそも扱っているテーマが兄妹ものという問題を含んでいますし、直接的な描写は出来るだけ控えてはいるものの、全体的に思春期とエロが話の中心にならざるを得ないですからね。もちろん企画当初はアニメ化なんて事は想像もしていなかったので……。
ーー 最初からエロコメになるのは想定して描かれていましたか?
草野:はい、第一話を描いた時点でほぼ現在の方向性は確定していました。というよりは、奈緒(編注・ヒロインの妹。
お兄ちゃんが大好きすぎて暴走する変態少女)というキャラクターを考えた時点で確定していたという方がいいのかも知れないですね~。
ーー どのキャラも欲望に忠実な作品ですよね。
草野:基本的には自分の描く漫画の登場人物、特に主役格・レギュラー格の登場人物には出来るだけ何らかの欲望を持たせる様にしています。
ーー 何らかの欲望!!
草野:キャラクターを出来るだけ人間っぽく描こうと思った時に必要だと思う部分でした。これってその部分を殊更大きく取り扱っているから変態的に見えるんですが、本来そういう部分って程度の大小はあっても、皆さん普通に持ち合わせていると思うんですよ。

ーー ふむふむ、確かに人間、言えない秘密を持っているものですね。
普通の生活の中から欲望の部分をピックアップして漫画にしているんですね。
草野:一番描きたかった部分はこの「表面的な振る舞いとは異なるキャラクターの欲求」と「実際の自分と他人から見た自分」、「自分では管理する事の出来ない思春期特有の性衝動とその馬鹿ばかしさ」でした。
ーー 2巻11話の、「お兄ちゃんが我慢しまくった末にエロ本買いに行くシーン」すごく好きなんですよ。
草野:あれは絶対にやっておきたいイベントでした。奈緒と修輔のキャラクターが確定した時点で絶対にやろうと。
ーー エロ本を買いに行くのを応援する妹ってすごいですよね(笑)
草野:思春期の自分にとって「何が一番いたたまれなくなるような出来事だろう」と考えた時、最初に思いついたものですね(笑)。
自分がコソコソエロ本買っているところを誰かに見られる、しかもその誰かが近親者であったり、ましてや自分の好きな子であったりする事は絶対に避けたいと。さらにその様子を応援されていたりするともっといたたまれなくなるなあと
ーー なんていたたまれない……。

頑張れ男の子! ドキドキ女の子!

ーー 作品から「オトコのコへのエール」のようなものも感じるんです。男の子応援歌、でしょうか。女の子もでしょうか。
草野:完全に意識している部分ですね。
『お兄ちゃん~』を描く上で二番目に重要だと考えている部分です。女の子を応援しない訳ではありません(笑)。ただ、女の子の場合切迫したものを理解できないので、今一歩リアリティを持って応援しにくいんですよね。
ーー メインヒロイン達が欲望に忠実なのを見て「かわいい」と感じる人も多いかなとは思いました。
草野:女の子キャラが欲望を持っている部分に関しては、僕自身が「女の子だって持っているに違いない!!持っている筈だ!持っていてくれ、いや、持っていて下さい……」という祈りにも似た気持ちで描いています。まあ、そういう部分はファンタジーということでご容赦いただきたいです(汗)
ーー 女の子を描写する際他にこだわっている部分はありますか?
草野:とにかく女の子が可愛く感じてもらえる様に、ということには出来るだけ気をつけて描いてはいます。
特にギャップの部分はそのキャラクターを魅力的に感じさせる大きな部分だと感じていますので、デリケートに取り扱おうと。
ーー ギャップ、というとどんな部分でしょうか。
草野:「欲求」だけがそのキャラクターの全てではないです。それ以外の部分が当然大きく存在し、生きて行く目的……というと大げさですが、当面の目標という感じの欲求が並列に存在する事で、キャラクターが魅力的になるはずだと思っています。現実では知りえないその女の子の普段の立ち居振る舞いとは異なる部分を知ることで、より可愛いなと思ってもらえればベストだなと思っています。
ーー ちょっとプライベートを覗き見ているようなドキドキ感はありますね。
草野:あ、そんな感じです(笑)。あとビジュアル的な部分では女の子特有の仕草や服装、存在そのものが持つ可愛らしさを出来るだけ伝えたいと思っています。特に女の子のキャラクターが着る私服はとにかく可愛く、基本的に登場シーンが変わる度に私服を変えるよう心掛けています。

男の子がヒロインです。

ーー 作中で描きやすいキャラ、描いていて楽しいキャラはいますか?
草野:修輔(編注・ヒロイン奈緒のお兄ちゃん。エロ魔人)が一番描きやすいですし、描いていて楽しいです(笑)
ーー 女の子じゃなく男の方ですか!
草野:『お兄ちゃん~』の女の子キャラは意外と取り扱いが難しいと感じているんですよ。僕にとって結構微妙なバランスで成立しているキャラばかりなので本当に難しいです。
ーー 修輔の位置はどういう扱いになるんでしょう。
草野:主人公は奈緒なのですが、女の子キャラが増えていくに従って修輔のウエイトが重くなってしまい、現在では奈緒よりも修輔にスポットが当たることも多くなってしまっているんですよね。何とか折り合いをつける為に辿り着いたのが「修輔ヒロイン説」です。
ーー おお!? では修輔が「ヒロイン」?
草野:当初の予定では連載はもっと短いものでしたので、奈緒、修輔、彩葉(編注・ストーカー気味の幼なじみで奈緒のライバル)の三人のみがメインの話を予定していました。連載延長に伴いヒロインを増やす必要に迫られて現在繭佳というキャラを出しました。
ーー 今は修輔がヒロイン達に囲まれている状態ですね。
草野:ハーレム物の体になってしまったんですよね。ハーレム物になる事はともかく、問題になるのが元々の主人公が修輔ではない事でした。
ーー 主人公は奈緒ですものね。そこで立ち位置の逆転が?
草野:ですです。で、それをなんとか帳尻合わせするのに行き着いたのが「だったらその部分は男女のキャラ配置をひっくり返して、なんだか訳が分からないけど女の子に付け狙われる修輔という構造にしてしまえ」という「修輔ヒロイン説」でした。

アニメ化するに当たって

草野:アニメの情報も少しずつ公表されてきているみたいですね、ありがたい話です(´Д⊂ヽ
ーー アニメ絵の再現度がすごくて。漫画そのままですものね。
草野:『お兄ちゃん~』をアニメ化するにあたって鬼門だと思っていた事の一つが、僕の絵が酷い癖絵なのでそれをどう取り扱っていただくかということだったんです。キャラクターデザインの平山さんが相当僕の要望を落とし込んでくださっているので、そういう意味ではかなり再現度が高いと思います。決定稿のキャラクターデザインを見て似てないと思う人は殆どいないんじゃないかと思いますよ。
ーー アニメ化で興味をもって、原作を読んでみようかなあという人が多いと思いますので、未読の方に一言いただいていいでしょうか。
草野:タイトルや妹物であること、マニア向けという事で抵抗を感じる方も少なくないと思いますが、基本的には「思春期のあるあるネタ」や、それを他者視点で見ると「こんなにいたたまれないのか」、という部分を大きく取り扱った漫画ですので是非一度読んでみてください。特に『WEBコミックハイ!』はWEBコミックとして非常に敷居が低く、第一話に関してはいつでも読んでいただけるので是非!
ーー 原作ファンの方にも一言お願いします!
草野:読者の皆様の応援のおかげでアニメ化という漫画家にとって一生に一度あるか無いかと言う貴重な機会を頂きました。原作の方もこんなに長く描かせて頂けるのも読者の皆さんの応援あっての事です。本当にありがとうございます。今後とも変わらぬ応援をいただけますと凄く嬉しいです。今後はようやく今までの助走距離を生かす展開と出来ますので、過度な期待にならない程度にご期待いただければと思います。
ーー ありがとうございました!(たまごまご)