旧ソ連8カ国、自由貿易圏創設に調印 ロシア求心力回復か
旧ソ連諸国が加盟する独立国家共同体(CIS)は18日夜、ロシア北西部のサンクトペテルブルクで、ロシア、ウクライナ、ベラルーシなど8カ国の間で域内の関税を撤廃するための自由貿易圏創設条約に調印した。加盟国間の経済統合を進めるのが狙いだ。ロシアの求心力の回復につながるかが注目される。
ロシアのプーチン首相は18日のCIS首相会議で「長く厳しい、だが建設的な交渉の末」予期せぬ合意に達したとの見方を示した。条約にはCIS加盟11カ国のうちウズベキスタンとトルクメニスタン、アゼルバイジャンを除く8カ国が調印した。
1991年のソ連崩壊に伴い緩やかな地域連合として発足したCISは、旧ソ連15カ国のうちバルト3国とグルジアを除く国々が加盟する。プーチン首相によると、今年上半期のCIS域内の貿易総額は1340億ドル(約10兆円)となり、前年同期に比べ48%増えた。
自由貿易圏の創設時期や関税を撤廃する品目など条約の具体的な内容は明らかになっていない。CIS諸国は94年にも自由貿易体制を確立するための条約に調印したが、批准を拒否する国が出るなど足並みが乱れ、実現しなかった。今回も自由貿易圏が早期に創設されるのかは不透明な部分も残る。
プーチン首相は4日付のロシア紙で、旧ソ連圏で欧州連合(EU)型の地域経済統合を進める「ユーラシア同盟」を提唱した。CIS諸国が自由貿易圏の条約に合意できた背景には、2012年5月の大統領への復帰が確実視されるプーチン氏の影響力が強まっている可能性もある。(モスクワ=石川陽平)