新潟県三条市は、市の魅力を広く発信する「ふるさと観光大使」に、動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の人気配信者で地元タクシー会社のドライバー、「ひよりん」こと刈谷陽和(ひより)さん(25)を任命した。フォロワー数9万4千人の人気ティックトッカーの発信力を活用し、三条市の地域振興につなげたい考えだ。
SNSで振興
新潟県のほぼ中央に位置する三条市は、人口約9万4千人で、面積が横浜市とほぼ同じ約430平方キロ。カトラリーや刃物などの金属製品や機械などの製造が盛んで、ものづくりのまちとして知られている。
また、市内にはアウトドアメーカーが集積し、国内屈指の人気キャンプ場「スノーピーク ヘッドクォーターズ キャンプフィールド」もあることから、キャンプ・アウトドアでも注目されている。農業も盛んで水稲のほか、ナシ、モモ、ブドウなどの果物生産にも力を入れている。
そんな市の魅力を交流サイト(SNS)などで国内外に発信してもらい、地域振興につなげるため、市は「三条ふるさと観光大使」の制度を創設。第1号の大使に三条タクシー(同市)のドライバーで、人気ティックトッカーのひよりんさんを任命した。任期は来年8月17日までだが、自動更新もあるという。
任命式
ひよりんさんの大使任命式は8月18日、三条市役所で行われた。正面玄関の階段にはレッドカーペットが敷かれ、自社タクシーから降りてきた着物姿のひよりんさんを滝沢亮市長が任命式会場の市長室までエスコートし、額に入った任命書を手渡した。人気配信者だけに演出も派手だった。
市長は任命理由について「全国にたくさんのフォロワーがいて、ひよりんさんの(運転するタクシーに乗る)ために三条市を訪れる人もいる。その発信力を地域の魅力向上につなげたいと考えた」と説明。「気負うことなく、これまで通りのスタンスで、おもしろい配信をしてもらえれば」と語った。
ひよりんさんは「三条市のものづくりやキャンプ・アウトドア、果物の魅力ををTikTokのライブ配信を通して国内外に伝えたい。配信を見た方々が、製品や果物を購入したり、三条市を訪れたりしてくれたらうれしい」。ライブ配信は「週2回ほどできれば」という。
市長と動画撮影
任命式が終わると早速、ひよりんさんと市長によるTikTok投稿用の動画撮影がスタート。
撮影カメラマン「どんなところに注目して発信していけばいいですか?」
市長「三条市は工場見学できるところがたくさんあるので、ものづくりを体感してもらいたい」
撮影カメラマン「市長のお墨付きで工場にがっつり遊びに行けちゃう」
ひよりんさん「大好きな工場に行こうじょう(工場)」
撮影カメラマン「ちょっとダダ滑り」
こんな感じの動画を撮影し、任命式を終えた。市長がTikTokに出るのは初めて。この動画は8月20日に投稿された。
その後、燕三条地場産業振興センター(同市)で箸を紹介する動画もアップ。観光大使としての活動を本格化させている。(本田賢一)
【ひよりん】 平成9年、新潟県三条市生まれ。同市の三条タクシーで貸し切り専門ドライバーとして勤務。駅前で待機中のタクシー車内の様子などをTikTokに投稿したところ大人気となり、9万人超のフォロワーがいる。TikTokの収入が月160万円になることも。配信収入は会社に入り、一定額を超えると、その一部がひよりんさんの給料に上乗せされる。