2014.11.10
# 選挙

解散するなら「今でしょ」! 「青木率」から分析する自民党が勝つためのタイミング

どうやら解散風が本当に吹き出した。先週の本コラムでは字数が足りずに最後に筆者の別コラム(→こちら)を紹介した。

いわゆる11月19日解散・12月16日総選挙説だ。もちろん、11月26日に党首討論があり、そこで解散、12月21日総選挙もある。若干国会を延長し、12月上旬解散、12月28日総選挙とするなど年内総選挙のパターンは数多く考えられる。また、1月中旬総選挙もあり得る。ただし、12月21日は先負なので、嫌われるかもしれない。

戦後25回の解散(任期満了を含む)があるが、11月解散3回(1972年、1983年、2012年)、12月解散5回(1945年、1948年、1966年、1967年、1976年)と、他の月に比べて多い。12月は解散最多月で、11月は2番目に多い月だ。

政治記者は、今が書入れ時なので、誰それの発言の真意などと興味深い記事が多い。

本コラムでは、政治家発言からの情報ではなく、総選挙を単純に議席数をより多く獲得するゲームと見て、そのために、政権党は合理的に総選挙時を選ぶという観点から、総選挙の可能性を考えてみよう。

筆者は政治とも関わりのあるビジネスを政策工房(→こちら)でやっているが、政治記者でない。そのビジネスの関係上、政治家相手の発言を取り上げることもしない。

政策工房は若干名の客員研究員を抱えている。彼らのうち何名かは選挙準備をする傍ら、政策分析を行っている。このため、解散総選挙にかかると、彼らは選挙準備をしなければならない。一方、当社としても、選挙になると、政策分析を依頼できなくなるばかりか、当社が選挙応援していると見なされるおそれがある。このため、選挙の一定期間前に彼らへの依頼を止めるように努めている。この意味で、選挙の時期について、国会議員やその候補者ほどでもないが、それなりに関心を持っている。

いずれにしても、政治家発言からの情報と、それらとはまったく無関係な統計予測の両方から、解散の予測をするのは意味があるだろう。

総選挙を単純に議席数をより多く獲得するゲームと見れば、政権党である自民党は2012年12月の総選挙で獲得した294議席から増やせるのか、減らすとしてもどれだけ減らすのを少なくできるかがポイントである。

獲得議席数は、ここの選挙区で見ると複雑な事情があるが、総計だけをみると、直近の政党支持率と内閣支持率(政権党の場合。非政権党の場合には内閣不支持率)の合計(いわゆる青木の法則における指標「青木率」とする。10月20日付本コラム参照)とかなり密接な関係がある。

衆院定数が480になった2000年以降の5回の総選挙と、その直近の自民党の青木率の関係は以下のとおりだ。 

青木率と総選挙の獲得議席の間にはかなり強い相関がある。これから推測できることは、現在の時点で自民党の青木率は90%程度なので、仮に自民党が総選挙を行えば270議席程度を獲得できる公算が高い。最近の2閣僚のダブル辞任の打撃は大きかったが、安倍政権のダメージコントロールがうまく、致命傷にはなっていない。

このタイミングを逃せば来年6月か10月だが……

しかしながら、このタイミングを逃すと、青木率は今後落ちる可能性が高いだろう。改造前には盤石であった安倍政権であるが、はっきり言えば、改造が裏目にでた。小渕氏や松島氏の他にも問題が噂されている新閣僚はまだいる。リリーフに出た宮沢経産相も、官僚時代と異なり、脇の甘さが出ている。

沖縄知事選も苦戦している。また、12月に来年10月からの消費増税を決めれば、先行きの景気の見通しは暗くなるばかりだろう。その上、10月末のハロウィーン緩和は、先週の本コラムで書いたように、4月からの消費増税の見通しの甘さを補うもので、今後の増税には対応できない。しかも、金融政策の実体経済への効果はどうしてもタイムラグがあるので、当面は4月の消費増税の悪影響が勝り、景気の実感は上向かないだろう。

となると、来年4月の統一地方選では、自民党は苦戦する可能性が高い。しかも、問題ある閣僚を抱えて、スキャンダルでも出れば、青木率は一気に下がる可能性もある。何しろ、2000年以降の歴代政権の青木率の推移を見ると、小泉政権と今回の第2次安倍政権を除き、発足当初に高かった支持率が1年程度で低下し、40~60%程度まで下がったところで退陣している。 

この解散のタイミングを逃せば、来年4月の2015年度予算成立後、通常国会終了後の6月、9月の自民党総裁選の10月くらいが解散の候補になる。そのとき、拉致問題での劇的な成果でもあれば、高い青木率を維持できている可能性もあるが、今の段階でそれに賭けるのはギャンブルだろう。

仮に、青木率が政権安定維持にギリギリの60%程度になってから解散しても、210議席程度しか維持できない。であれば、現に青木率が高い現段階で解散した方が、より多くの議席を獲得できるという意味で合理的な選択である。過去の例を見ても、青木率が上昇する確率はほんのわずかしかない。青木率が高いときに解散するのは当然の選択である。

総選挙は、相手に少しだけ勝てばいい。野党の選挙協力が整う前に解散した方がいいのは当然だ。今のところ、野党はバラバラ感ありまくりで、勢いのあるところはない。

いずれあと2年の間で解散するのであれば、「今でしょ」という客観的な状況になっている。
 

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