JT、インドネシアの同業2社を買収 新興国でM&A加速
日本たばこ産業(JT)は4日、インドネシアのたばこメーカーと流通会社2社を買収すると発表した。取得額は1100億円。世界2位の市場に参入して事業基盤を強化する。同社はフィリピンでも買収を計画している。先進国での成長余地が狭まるなか、新興国でのM&A(合併・買収)に活路を見いだす。
買収するのはインドネシアの現地メーカー、カリヤディビア・マハディカ社。葉タバコに香辛料などを混ぜたインドネシア特有の「クレテックたばこ」を主に生産しており、9カ所の製造工場を持つ。2016年の売上高は約560億円で同国での市場シェアは2.2%という。
同社の製品を販売する流通会社のスーリヤ・ムスティカ・ヌサンタラ社も買収する。純有利子負債も取得する予定で買収にかかる総額は約1100億円を見込む。
インドネシアは中国に次ぐ世界2位のたばこ市場だ。2016年の紙巻きたばこの販売本数は約2850億本で、今後も拡大が見込まれる。JTは「メビウス」などの製品を展開するが、シェアは1%に満たないとされる。買収で現地の生産設備や販売網を手に入れることで早期のシェア向上につなげる。
JTは事業展開する地域が世界で約120カ国と、200国近い米フィリップ・モリス・インターナショナルや英ブリティッシュ・アメリカン・タバコの競合2社に比べ遅れている。このためJTはアジアやアフリカ、南米など新興国市場の開拓にかじを切っている。
ここ2年間では、ブラジルとドミニカ共和国の現地企業を買収。エチオピアのたばこ専売企業へも出資した。直近ではフィリピン大手のマイティーの資産買収で、同国の競争委員会の承認待ちの状況となるなど着実に裾野を拡大させている。
実際に新興国での販売本数も年々増加しており、16年は1379億本と海外販売の3割強を占めた。政情不安など新興国特有のリスクも伴うものの、JTの世界戦略で新興国の存在感が今後さらに高まる可能性は高い。
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