首相、ロシアへの追加制裁発表 金融機関の資産凍結など
岸田文雄首相は25日の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻について「国際社会の懸命の努力にもかかわらず、力による一方的な現状変更の試みで国際法違反だ。断じて許容できず厳しく非難する」と述べた。ロシアへ追加の経済制裁をとると明らかにした。
半導体の輸出規制も
内容として①資産凍結と査証(ビザ)発給停止による個人・団体などへの制裁②金融機関を対象とする資産凍結など金融分野の制裁③軍事関連団体への輸出、国際的合意にもとづく規制リスト品目や半導体など汎用品の輸出の制裁――をあげた。
「日本の安全保障の観点からも看過できず、軍の即時撤収と国際法の順守を強く求める」と語った。制裁は米欧諸国と連携したと説明した。「主要7カ国(G7)をはじめとする国際社会の連帯・連携が重要との認識のもと緊密に調整して決定した」と話した。
トリガー条項の凍結解除「選択肢を排除せず」
首相は「ロシアへの経済制裁はエネルギー供給を直接阻害するものではない」と付け加えた。原油は国・民間で約240日分の備蓄、液化天然ガス(LNG)は電力・ガス会社で2~3週間分の在庫を保有していると説明した。
「備蓄放出や産油国や産ガス国への増産の働きかけなど関係国や国際機関とも連携しながら必要な対策を機動的に講じ、国際的なエネルギー市場の安定化、日本への安定供給に万全を期す」と発言した。
原油など燃料価格の高騰に関し「当面は価格の激変緩和事業を大幅に拡充・強化し、小売価格の急騰を抑制する」と訴えた。「電力・ガスの料金も急激な価格上昇が起こらないように取り組む」との方針を示した。
原油高対策でガソリン税を一時的に引き下げるトリガー条項の凍結解除を実施するか問われ「国民生活や企業活動への悪影響を最小限に抑えられるよう何が有効かという観点から、あらゆる選択肢を排除することなく対応したい」と答えた。
中小企業対策などは松野博一官房長官のもとに設置した関係閣僚会合で内容を詰める。貿易保険の迅速な保険金の支払いもあげ「輸出入などの事業活動に影響を受ける日本企業の支援も講じる」と打ち出した。
邦人退避でポーランドの協力
首相はウクライナ人の家族がいるといった理由で現地に残留を希望する人が23日時点でおよそ120人いると明らかにした。「在留邦人の安全確保のため全力を尽くす」と強調した。
在ウクライナ日本大使館で邦人保護に取り組むほか、ポーランドへの陸路での退避支援のためポーランド政府から受け入れの協力を得ると言明した。同国から他国へ移動するためのチャーター機も用意する。
「アジアを含む国際社会の秩序に影響」
首相はロシアの侵攻がアジアでの力による現状変更につながるかとの問いに「仮定の話として申し上げることは適切ではない」と言及した。
「ウクライナ侵攻は欧州のみならずアジアを含む国際社会の秩序に影響する大変深刻な事態と認識している」とも話した。「力による現状変更は認めない意志を我が国としてもしっかり示していかなければならない」と力を込めた。
北方領土問題を巡っては「日本の立場は変わらない」と主張した。領土交渉や日ロ共同経済活動などへの影響は「現時点で予断することは控えたい」と述べるにとどめた。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。