【元白鵬・宮城野親方の目】熱海富士の気負い見透かした貴景勝「決定戦は最後の仕切りがポイント」

優勝決定戦で貴景勝(後方)にはたき込みで敗れた熱海富士(カメラ・今成 良輔)
優勝決定戦で貴景勝(後方)にはたき込みで敗れた熱海富士(カメラ・今成 良輔)

◆大相撲 ▽秋場所千秋楽(24日・両国国技館)

東前頭15枚目・熱海富士は賜杯にあと一歩、届かなかった。本割で大関経験者の西前頭2枚目・朝乃山に寄り切られると、4敗で並んだ大関・貴景勝との優勝決定戦では変化され、はたき込まれた。初土俵から18場所目での初Vなら年6場所制となった1958年以降初土俵(幕下、三段目付け出しを除く)では最速記録だったが、及ばず。記録ずくめの賜杯は来場所以降へお預けとなった。

 本当によく頑張った。熱海富士にかけてあげたい言葉です。決定戦は貴景勝の立ち合い変化に屈しましたが、真っ向勝負で前に出て落ちました。本割では朝乃山に一気に持っていかれましたが、元大関に臆することなくぶつかりました。悔しさは当然。ただ今後に向けては、千秋楽だけで何日分もの学びと経験を得ることができたでしょう。

 本割は硬さがあり、土俵際で突き落とせる余裕があれば逆転もありました。決定戦は最後の仕切りがポイントだったかもしれません。先に手をつき待ちましたが、貴景勝がつくまで間があり一度、外しました。この時に大関が相手の気負いを見透かし、変化が浮かんだことも考えられます。

 熱海富士は体を生かした相撲に加え、今場所は顎を引いた攻め、深い上手を浅く取り直すなど細かい部分の向上も目を見張りました。勢いだけではない、ベテランのような技術も魅力。21歳は教えられたことをスポンジのように吸収できる年齢。新しい芽には、強く育ってもらいたいです。

 大関の変化はファン目線では、少し残念だったと思います。しかし、負傷明けで復活を目指す場所、1秒でも早く決着をつけたいとの考えは理解できます。来場所はコンディションをしっかり整えて、ハイレベルな優勝を期待したいです。(宮城野親方=元横綱・白鵬、スポーツ報知評論家)

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