世界初、失明の恐れある水疱性角膜症の患者にiPS由来の角膜細胞を移植

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 藤田医科大(愛知県)と慶応大のチームは23日、失明する恐れがある「 水疱性すいほうせい 角膜症」の治療の臨床研究で、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した角膜の細胞を目に移植する手術を行ったと発表した。この病気の患者にiPS細胞由来の細胞を移植するのは世界初といい、角膜移植以外の有効な治療法につながる可能性がある。

 水疱性角膜症は、角膜の水分量を調節する「内皮細胞」の減少で水分を排出できなくなり、水ぶくれのような腫れが生じる病気。角膜が濁って視力が低下し、最悪の場合、失明する。

 高齢者に多く、白内障や緑内障の手術などをきっかけに発症することもある。国内患者数は推定約1万人。現時点で角膜の移植以外に有効な治療法はないが、提供者(ドナー)不足で移植まで数年かかる例もある。

 同日、京都市で開催された日本再生医療学会で発表したチームによると、移植手術の1例目は昨年10月、慶応大病院(東京都)で行った。患者は過去に角膜移植を2度行ったが、再び発症した70歳代男性。他人のiPS細胞を内皮細胞と同じ機能を持つ細胞に変化させ、約80万個を男性の角膜の内側に注入した。

 チームによると、男性の手術後の経過は順調で、第三者の専門家委員会は今年1月、安全性に問題はないとする評価結果をまとめた。また、水分がたまって厚くなっていた角膜が薄くなり、透明度も改善されたという。

 チームは手術後、1年かけて経過観察し、視力回復などの有効性も確かめる。実用化すればドナー不足を補うことが期待される。担当する榛村重人・藤田医科大教授は「新しい治療法を患者に届けるため、実用化に向けた手続きを急ぐ」と話す。

 水疱性角膜症を巡っては、ドナーの角膜細胞を大量に培養して移植する別の治療法の開発も進む。林竜平・大阪大寄付講座教授(幹細胞生物学)は「iPS細胞を使うことで、ドナーの角膜の質に左右されず、細胞を移植できるようになる。今後は、移植した細胞ががん化しないかの確認も必要だ」と指摘する。

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3936047 0 医療・健康 2023/03/23 12:59:00 2023/03/23 12:59:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/03/20230323-OYT1I50054-T.jpg?type=thumbnail

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