ラジオ初冠のアイドルVTuber星街すいせい「VTuberを『サブカル』から『カルチャー』にしたい」
5月3日(日)には 第5回が配信される「ホロライブ presents 星街すいせいのMUSIC SPACE」。「ラジオパーソナリティは初めての経験なので少し緊張もしましたが、楽しんでできていると思います」(星街)

毎週日曜日の17時から文化放送のインターネットラジオ「超A&G+」で配信中の「ホロライブ presents 星街すいせいのMUSIC SPACE」。メインパーソナリティを務めるホロライブ所属のアイドルVTuber星街すいせいのロングインタビュー後編では、「MUSIC SPACE」の今後の展開だけでなく、3Dライブのクオリティの高さで注目を集めた「3Dお披露目配信」や、3曲のオリジナルソング制作時のエピソードなども語ってもらった。


(インタビュー前編はこちら

「実は、こんなこともできます」と示せた「3Dお披露目」


──先ほど(前編で)、「ノンストップ・ストーリー」について質問しましたが、その他にも、特に印象深かったり、その後に大きな影響があったりした配信やイベントがあれば教えてください。

星街 一番はやっぱり、(2020年3月1日の)3Dお披露目配信だと思います。「ノンストップ・ストーリー」の後も、テトリスの切り抜きや配信で、いろんな人に知ってもらえたりしてはいたんですけれど、ゲーム実況や普段の配信は、自分のキャラクター性を知ってもらう機会だと思っていて。そうやって、じわじわといろいろな人に知ってもらえた中、「実は、こんなこともできます」と示せたのが「3Dお披露目」だったなって。実際、いろいろな人から「こういうキャラだとは知っていたけど、歌と踊りができることは知らなかった」と言ってもらえました。あとは、ホロライブという企業がここまですごい音楽ライブのリアルタイム配信ができることも、みんな知らなかっただろうし。そういう点で「ホロライブ」と「星街すいせい」はここまでできますよ、と知ってもらうきっかけにもなったのかなと思います。
わがままや無理なお願いをいっぱいしちゃったんですけどね(笑)。そのリクエストに、スタッフさんが最大限応えてくださいました。

ラジオ初冠のアイドルVTuber星街すいせい「VTuberを『サブカル』から『カルチャー』にしたい」
定番のバラエティ的要素は排除し、全編音楽ライブとして行われた3Dお披露目配信。同接55,000人を記録し、Twitterトレンドではワールド1位。実力派アイドルVTuberの実力と注目度の高さを証明した


──「ノンストップ・ストーリー」では、ソロパートで歌う1曲を選ぶ時、1stオリジナルソングの「comet」か、2ndの「天球、彗星は夜を跨いで」(以下、「天球」)かすごく悩んで、最終的に「天球」を選んだそうですね。9曲を歌った3Dお披露目配信は、「天球」で始まり、最後が「comet」というセトリだったのですが、そこはどのような思いがあったのですか?

星街 「ノンストップ・ストーリー」の時も最初は「comet」を歌う予定で、本当にギリギリまで、その形で進んでいたんです。でも、その前(2019年12月8日)に、にじさんじさんの両国ライブ(「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」)があって。友達の戌亥とこちゃんが出ていたので中継を観ていたのですが、その時のとこちゃんのパフォーマンスがものすごく良くて。
いろいろな出演者さんがライブで盛り上がる曲を選んでいる中、とこちゃんはバラードで自分の歌唱力をふんだんに活かしたパフォーマンスをしたんですよ。比べるつもりはないんですけれど、たぶん、あのライブを観た時、一番印象に残ったのがとこちゃんだった人は、すごく多いだろうなと思ったんです。

──私も会場でそう感じました。

星街 それで、私も20人以上が出るライブで「この子は特に良かったな」と思ってもらえるパフォーマンスをするには、「comet」ではなくて「天球」かもしれないと思ったんです。たぶん、私を推してくれている人は、あそこで「comet」を歌う意味合いに感動してもらえるんですけど、私を知らない人にはその意味合いは汲み取れない。知らない人に自分の存在を知らしめることに重きを置くなら、「天球」かなと思い、変更してもらいました。
逆に、3Dお披露目に関しては、私のことを知っている人がたくさん来てくれると思って。それなら、最後に「comet」を歌った方が感動的だと思ってセトリを組みました。「天球」を最初にしたのは、豊洲と同じような理由で、「ちょっと観てみよう」みたいな感じで来てくれた人のことを掴めるかなって。

ラジオ初冠のアイドルVTuber星街すいせい「VTuberを『サブカル』から『カルチャー』にしたい」
デビュー1周年記念日の2019年3月22日に公開された2ndオリジナルソング「天球、彗星は夜を跨いで」は、約1年でミリオン再生を突破。その後も再生数は伸び続け、現在は146万回を超えている

──戌亥さんは、お友達でもあり、刺激を受ける存在でもあるのでしょうか?

星街 はい。とこちゃんは、音楽に対して、とても情熱があって。すごく刺激を受けています。
一緒にアコースティックのライブをやりたいなーとか、よく言ってるんですよ。お互いに高め合ってもいける友達であり、ライバルでもあるみたいな素敵な関係だと思っています。

今、ようやくスタートラインに立てた


──2020年3月21日の「デビュー二周年&誕生日前夜祭3DLIVE!!」配信では、3曲目のオリジナルソング「NEXT COLOR PLANET」をサプライズ初披露しました。作詞にも初挑戦していますが、星街さんにとって、どのような曲になりましたか?

星街 スタートラインに立ったぞ、みたいな曲ですね。それこそ、1曲目の「comet」は準備運動というか「助走」の曲だったので。

──「comet」は歌詞も、デビューしたばかりのアイドルが「これから頑張るぞ」と思っているような内容ですよね。

星街 「comet」を作っていただいた(作詞、作編曲の)*Lunaさんには、「アイドルっぽさとかは別に無くてもいいので。
星街すいせいを見ていただいて感じたことを曲にしてください」とお願いしたら、あの曲を書いていただけました。2曲目の「天球」を発注したのは、「comet」よりも先で、実は1曲目になる予定の曲だったんです。でも、出来た曲を聴いた時、この曲は2曲目、3曲目とかに出した方が味がありそうだなと思って。急遽、1曲目として「comet」を作ってもらうことにしたんです。

──「天球」に関しては、どのような発注を?

星街 「天球」に関しても、「王道のアイドル路線の曲みたいなことは全然意識せず、アーティスティックな路線で、ちょっとハイカラな方向で作ってもらえたら」くらいのオーダーで。(作詞、作編曲の)キタニタツヤさんの魅力を活かした曲にしてもらえたらな、という感じで作ってもらいました。
2曲目として出すことにした時期って、いろいろと悩みもあって、くすぶっていた時期で。この曲を出してダメだったら、VTuberを辞めてもいいなくらいの気持ちだったんです。だから、「天球」は私にとって、終わりの曲……と言うと少し違うのですが……。

──けじめをつけるための覚悟を決めて出した曲だったのですね。

星街 あ、そうです! けじめとか、覚悟の曲という感じです。そんな意図を持って作った曲では全然無いのですが。なぜか当時の自分の心情や、ちょっとくすぶっている状況に不思議とマッチしていました(笑)。

──その「天球」が高い評価を得たこともあって、次の新しいオリジナル曲への期待も大きかったですよね。

星街 「天球」の後は、新しい曲を作るのに1年かかってしまったんですけれど。その間に環境も大きく変わって。先ほども言いましたが、3曲目の「NEXT COLOR PLANET」は、今ようやくスタートラインに立てたよ、という曲になりました。

ラジオ初冠のアイドルVTuber星街すいせい「VTuberを『サブカル』から『カルチャー』にしたい」
3rdオリジナルソング「NEXT COLOR PLANET」は各種音楽サービスで配信中。オリコンデイリー最高5位を記録した。「オリコンについては詳しくなくて、実感が湧きませんでした(笑)」(星街)

──星街さん自身が書いた詞の内容からも、「まだまだ止まらないよ。満足はしてないよ」という感情が伝わってきます。

星街 2年間頑張ってきて、曲も出せて、3Dのお披露目もできて、大きなライブにも出られて。そういう状況で迎えられた2周年って、私にとってはすごくいい節目で、一歩間違えたら満足して燃え尽き症候群になりそうだなと思ったんです。だから、自分を奮い立たせるためにも、リスナーの皆さんに今はまだ全然ゴールではないと示すためにも、そういうテーマの歌詞にしました。曲のオーダーを伝える時もエモさ重視というよりは、パーティー感強めで。「これからだぞ! いくぞー!」って思えるような曲にしてほしいとお願いしました。

とこちゃんと一緒にアコースティックで歌えたらいいな


──再び、「MUSIC SPACE」の話題に戻りますが、第2回からは夏色まつりさんと一緒にミュージシャンのサカノウエヨースケさんも出演し、第3回からは番組テーマソングを作る企画も始動しましたが、第4回で早くもサカノウエさん作曲のカッコいいデモ音源も公開され、企画に対する本気度がすごいなと驚きました。

星街 ちゃんとした曲を作ろうという企画です。サカノウエさんとも、どういう曲にするのかを話し合いながら、しっかりとラジオのオープニングっぽい曲を作っていこうと頑張っています。

──「MUSIC SPACE」は、星街さんやゲストがサカノウエさんのギターを伴奏に歌を歌うなど、かなり音楽に特化したラジオ番組となっています。そういった内容の番組になったのは、星街さんからのリクエストですか? それとも、制作側からの提案だったのでしょうか?

星街 番組の内容に関しては、文化放送のスタッフさんが提案してくださったり、ホロライブの運営さんが「今、すいせいさんは歌で注目されているので、歌ったりするのはどうですか?」とか言ってくれたりもしました。私としても、せっかくの機会なので、この番組でしか見られないことをした方が今後にも繋がるかなと思って。(他のVTuberは)ラジオで生で歌ったりしていないそうなので、「じゃあ、生で歌います!」って。私も好きな歌が歌えるし!

──権利などの関係もあって、YouTube配信だと歌いづらい歌とかもありますしね。

星街 特に配信で歌枠をやるときに困るのが、配信で流せるカラオケ音源が無いことなんです。でも、「MUSIC SPACE」ではサカノウエさんに生でギターを弾いていただけるし、曲のレパートリーも増えそうで嬉しいです。

ラジオ初冠のアイドルVTuber星街すいせい「VTuberを『サブカル』から『カルチャー』にしたい」
「MUSIC SPACE」には、ミュージシャンのサカノウエヨースケもバーチャルな姿で登場。星街やゲストがギター演奏に合わせて、ここでしか聴けない生のセッションを披露するなど豪華な内容となっている

──ミュージシャンの方が出演されるのも、文化放送側からの提案ですか?

星街 はい。とてもありがたかったです。オリジナル曲を一緒に作る企画もそうで、とても面白いと思ったので、ぜひ作らせてくださいとお願いしました。放送の中で作っていく形だと、リスナーさんもその曲に関われたという気持ちにもなってもらえるし、楽しいだろうなって。

──この先、番組の中でやってみたいことや、ゲストに来てほしいVTuberさんはいますか?

星街 もし呼べるなら、とこちゃんを呼びたいですねー。

──戌亥さんとの共演を観たいファンはすごく多いと思います。

星街 実は、もうとこちゃんには「今度、ラジオに来てよー」と声をかけていて。正式には決まってないのですが、いつかとこちゃんと一緒にアコースティックで歌えたらいいなと思っています。

──文化放送の番組かつ生演奏であれば、お二人の大好きな「あんスタ」の歌も歌えるんですかね?

星街 どうなんでしょう。歌えたらいいなあ(笑)。

ラジオ初冠のアイドルVTuber星街すいせい「VTuberを『サブカル』から『カルチャー』にしたい」
リズムゲーム「あんさんぶるスターズ!!Music」のガチャ配信には、「あんスタ」好き仲間でもある友人の戌亥とこも参加。推しがなかなか出ず、おかしなテンションになる星街を励まし続けた

VTuberという存在を「サブカル」ではなく「カルチャー」に


──では、これが最後の質問になるのですが。「MUSIC SPACE」に限らず、VTuber活動全般での目標や夢を教えてください。

星街 直近の目標だったら、YouTubeチャンネル登録者数50万人に行きたいです。そして、これは直近の目標になるのかは微妙ですが、CDアルバムも出したい。あと、いつか実現したい夢としては、やっぱり武道館でライブがしたいですし、武道館以外でもいいので、また大きな会場でライブがしたいですね。

──今では、武道館も現実的な目標になりましたね。

星街 あと、私がVTuberをやる上でずっと思っているのが、VTuberという存在を「サブカル」ではなく「カルチャー」にしたいということなんです。オタク以外の人たちからも「最近、こういうアイドル多いよね」とか、「こういうアイドルも可愛いよね」と思ってもらえるような、普通に普及していて知名度のある文化にしたいなって。バラエティ番組のひな壇とかで、タレントさんと同じ感じで賑やかしをしたり。キズナアイちゃんは、もう実際にやっているのですが、ニュース番組でコメンテーターをやったりとか。そういうことが普通になればいいなって。そして、それが普通になっていく中で、私もVTuberの一人として活動できていたらいいなって思ってます。

──YouTubeチャンネル登録者数50万人というのは、数字的に大きな目標ですね。

星街 10万人を突破した時に立てた20万人という目標が想像以上に早く達成できたので。次は「また、すぐにいけるでしょ?」と思われそうな目標よりも、「頑張らないと無理じゃない?」くらいの目標にした方がリスナーさんも応援しがいがあるし、私も頑張りがいがあると思って「50万人」にしました。

──20万人を突破した時の星街さんのツイートには、「最初に今年の目標は20万人って言った時はさすがに無理だよって声もあったけど、そう言ってた人全員に『見たか!!』っていってやりたいです」と書かれていて、とても星街さんらしいなと思いました。

星街 あはは(笑)。「みんなのおかげでここまで来れました」とか「私、ここまで頑張れました。本当に感動しています」みたいな言葉は20万人にいくまでにも何度も伝えてきたので。あまり頻繁に繰り返し過ぎて、本当に思っている気持ちが薄っぺらく聞こえてしまうのは嫌だなって思ったんです。だから、今回はあえて強気なセリフ、自分もみんなも奮い立たせるようなセリフでアピールしようと思って、あの文章を書きました。それをリスナーのみんなが「すいちゃんらしいね」と良い方向で受け取ってくれたこともすごく嬉しかったです。自分らしさや自分のキャラクター性は、ずっと大事にしてきたものだったので。
(丸本大輔)


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番組情報


「ホロライブ presents 星街すいせいのMUSIC SPACE」
毎週日曜日17時〜17時30分
文化放送 超!A&G+にて動画配信
ハッシュタグ:#すいせいみゅーじっく
アーカイブ:前半パート「Suisei Channel」
後半パート「文化放送V&R」