PHS
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/05 16:08 UTC 版)
中国におけるPHS
電話サービスの内容
中国ではPHSは「小霊通」(しょうれいつう / ショオリントン、繁体字: 小靈通、簡体字: 小灵通、拼音: )という中国語名が用いられ[29][注 20]、2006年6月30日時点で9300万台と一時は爆発的な普及を見せたが、その後は端末生産台数の急減が報じられ[30]、加入者数は頭打ちとなり減少を続けて、2007年9月30日には9000万台を割り込んだ[31]。安価な音声端末がほとんどで、電気通信会社の「中国電信」および中国網通の事業を譲受した「中国聯通」が主要PHS事業者としてPHSを固定電話の延長として展開していた。
中国における歴史
黎明期
1982年7月1日、上海市で中国で初めてとなる商業化された携帯電話サービスが開始されたが初期の利用者は20人であった[29]。一方、小霊通のサービスは1996年に試験が開始され、1999年から本格的に開始された[29]。
小霊通のサービスは固定通信事業者の中国電信社の浙江省余杭市電信支局によって実験的に始められた[29]。中国電信浙江省余杭市電信支局長の徐福新は、日本のPHSの雑誌記事を見てこの技術を中国の固定通信網に組み合わせることができないか1994年から自主的に研究しており、1996年に中国電信の親会社と信息産業部に申請しないまま余杭市で試験運転を始めた(後に徐福新は「小霊通の父」と呼ばれるようになった)[29]。
中国電信社は1999年から業務別の事業改編(一次改組)により移動通信、衛星通信、ページャー事業など数社に分割され、固定通信部門は「中国電信」が事業業務を行うことになっていた[29]。しかし、中国電信社ではそれまで主な収入源であった移動通信事業がなくなるため、一部の地方会社が「無線市内電話」や「移動市内電話」と称してデジタル無線電話のPHS用周波数帯域の使用を各地方都市で申請した[29]。小霊通のサービスエリアは携帯電話より狭いものの、移動通信の一種を固定通信事業者が事業運営するものであったため、1999年の内部規定に反しているとして2000年5月に浙江省余杭市電信支局に対して信息産業部から小霊通サービスの禁止令が出された[29]。しかし6月には信息産業部より「関与規範PHS無線市話建設与経営的通知」が公布され、PHSは固定市内電話システムを補完する低速移動無線システムとしてサービスエリアの限定を条件に制度化された[29]。一次改組で中国電信社の収入の約3割を占める移動通信事業を中国移動社として事業化したため、赤字が続く固定通信業務のみでは運営が極めて困難とする中国電信側の苦情に配慮した政策といわれている[29]。
2001年からは固定通信事業者の中国網絡通信集団公司も参入した[29]。
発展期
中国では携帯電話の利用料金に発信側も受信側も同額を負担する「発着分離課金」制度を実施していたが、小霊通は発信側のみ課金される「発信課金」制度を採用した[29]。小霊通サービスが低廉な料金設定を可能にした理由は、基地局への投資費用が携帯電話より著しく小さく、固定通信事業者が事業運営したため基幹通信網の維持費を固定電話利用者にも転化できたことでサービス開始当初から料金を低廉にすることができたからである[29]。
小霊通サービスが信息産業部に正式に認められたのは2003年である[29]。2003年5月17日には、北京、上海、天津、重慶及び広州で小霊通のサービスが一斉に解禁された[29]。2004年末の小霊通利用者数は中国電信集団公司(CHINATELECOM)で4,603万人、中国網絡通信集団公司(CHINANETCOM)で2,201万人であった[29]。
中国のPHSは都市単位(日本の県単位くらい)の地域別電話番号が割り振られ、他地域では使えない不便さがあった。しかし、小霊通PIMカードに電話番号を書き込む方式に2005年5月17日に統一され、各都市の電話番号が書き込まれたPIMカードを差し替えることにより、同一端末を他地域でも使えるようになった。これはPIMカードとして国際展開されている。中国国外での展開として、UTStarcom社のベトナムでのIPベースの無線用インフラなどが見られる。
サービスの終了
香港では、1997年にサービスイン。近年は利用者が大幅に減少し、PHSの無線周波数帯を開放する目的で、2013年4月にライセンス免除の撤廃を決定。約3年間は猶予期間で所有と使用が認められたが、2016年5月9日でこの期間が終了するため、冒頭のとおり、2016年5月10日以降は使用および所有が禁止(電波法令違反)となる。台湾でも2015年3月にPHSサービスが終了し停波。中国は当初2011年にサービス終了する予定であったが[32]、「小霊通」ユーザーの反発に会い2014年以降まで延期。2014年12月31日をもってサービス終了した[9]。
注釈
- ^ この企業も松下幸之助が設立こそしているが、現在のパナソニックグループを構成している企業ではない。
- ^ a b c d e 。基本的に、公衆サービス以外の自営用PHS端末(コードレス電話の1種に該当)については、公衆PHS事業者の動向の影響は及ばない。つまり、自営用端末は、総務省により「免許を要しない無線局」としての認可が廃止されるまでは利用可能である。
- ^ a b c d ただし公衆サービスの終了とは無関係に、コードレス電話に関してはその技術基準の改正により、2005年11月30日までに技術基準適合証明を受けた小電力コードレス電話とデジタルコードレス電話は、技適マークがあっても2022年12月1日以降は使用できない(電波法違反)。PHS端末(自営モード)や自営PHS親機、アナログコードレス電話、その他PHS方式によるビジネスホン親機や集合装置などの一部が使用不可となる。(平成17年総務省令第119号改正の無線設備規則の改正附則第5条第1項による。平成17年12月1日施行)
- ^ ただし、仕様や技術適合基準が異なるため、日本国外のDECT機器をそのまま日本に持ち込んで使用する事はできない(逆も同様。すなわち日本国内仕様DECT機器を日本国外で使用する場合には現地電波法規制の確認が必要)。
- ^ 既に自営通話向けsXGPを搭載したスマートフォンが市場に出始めている(2019 - 2020年頃)。
- ^ a b 概ね3.5Gまでのもの。
- ^ なお、3.9G携帯電話においてはこの程度のサイズは「フェムトセル」と呼ばれている。
- ^ スマートフォンのGPS搭載端末のように、リアルタイムでカーナビにも利用できる程の精度は無く、最も高精度でも数10m程度の誤差があり測位にも時間が掛かった。なお、携帯電話による基地局測位は3.5G携帯電話(LTEなど)システム以降にようやく実用化されたが、携帯電話ではフィーチャーフォン時代からGPS等による正確な測位が主流だった(携帯電話初は2002年のauのC3003P)。
- ^ ただし前述のとおり2021年 - 2023年にかけ、公衆PHSサービスは終息した。
- ^ ベトナムは、2010年11月30日にVNPTのサービス自体が停波・事業終了となったため、ローミング申し込みが同年10月30日をもって、ローミングサービスそのものは11月30日をもってそれぞれ終了した。
- ^ 法人向けの301JRを含めれば5機種(ただし、2015年3月時点ではアップデート対応待ちで、この時点での移行はできない)。
- ^ ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム
- ^ Eo64エアなど、データ通信専用として以降も存続した会社がある。
- ^ 2000年代の初頭まで日本国内においては携帯電話の端末費用と通信費用が高く、各社とも現在のように様々な料金プランも無かったため、中学・高校生が容易に携帯電話を所有、維持できる状況では無かった。また、出費が多額であるため携帯電話を持たせない親も当時は多数派であった。
- ^ 後にハンドオーバーの改良や、W-OAMのBPSK通信によりある程度改善された。
- ^ 端末価格を0円に設定することも多かった。
- ^ ハンドオーバー処理高速化などの改良。また当初は電話交換局を跨ぐハンドオーバーができなかったが、1999年2月頃に各事業者とも対応した。
- ^ なお関東地方は電力系と無関係な企業(YOZAN)へ再売却された。
- ^ ごく初期を除く。
- ^ PHS自体の正式名称は「個人手持式電話系統」(繁体字: 個人手持式電話系統、簡体字: 个人手持式电话系统)もしくは「個人電話存取系統」(繁体字: 個人電話存取系統、簡体字: 个人电话存取系统)である。
- ^ 初代法人は2002年にソニーに吸収合併されている。
- ^ 現在は、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ(現:富士通モバイルコミュニケーションズ)へ、当該事業を譲渡しており、東芝は撤退している。
- ^ 販売・サポート業務のみを手がけており、開発・製造自体はエイビットが担当していた。現在は、販売・サポート業務もエイビットが手がけているため、企業としてのアルテル自体はPHS関連から撤退している。
- ^ 2016年2月より、同月に設立された富士通コネクテッドテクノロジーズへ吸収分割により、当該事業を譲渡。
出典
- ^ 通商産業省機械情報産業局 監修、データベース振興センター 編『データベース白書 1999』データベース振興センター、1999年、434頁
- ^ “日本の通信技術“世界初”だけでは通じず PHS、キャプテン…営業戦略も重要”. sankeibiz. p. 1 (2015年4月23日). 2022年1月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “ワイモバイルのPHS、23年3月末で完全終了”. ITmedia. 2019年5月1日閲覧。
- ^ “日本の通信技術“世界初”だけでは通じず PHS、キャプテン…営業戦略も重要”. sankeibiz. p. 6 (2015年4月23日). 2022年1月21日閲覧。
- ^ 『世界のPHS稼動数 1億加入突破について』(プレスリリース)株式会社ウィルコム、2006年11月8日。 オリジナルの2006年11月10日時点におけるアーカイブ 。2006年11月8日閲覧。
- ^ a b c d e f 株式会社インプレス (2018年4月19日). “一般向けの「PHS」が2020年7月末で終了、法人向けテレメトリングのみ継続” (日本語). ケータイ Watch 2018年10月18日閲覧。
- ^ a b c d e “ソフトバンクがPHS終了延期 コロナで医療機関が要望” (日本語). 朝日新聞. (2020年4月17日) 2020年4月18日閲覧。
- ^ a b c d e 株式会社インプレス (2021年2月1日). “[特集:ケータイ Watch20周年 【今日は何の日?】ウィルコムが誕生した日]”. ケータイ Watch. 2021年2月1日閲覧。
- ^ a b 北京商报. “北京小靈通年底退市” (中国語). 2014年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月17日閲覧。
- ^ “Office of the Communications Authority - Press Releases” (英語). www.ofca.gov.hk. 2018年10月18日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2016年4月22日). “香港でPHSの持ち込み、所有や使用が5月10日から禁止に 違反者には70万円超の罰金または2年間の禁固刑” (日本語). トラベル Watch 2018年10月18日閲覧。
- ^ PHSの歴史<携帯電話の歴史<歴史<木暮仁、木暮仁:「経営と情報」に関する教材と意見
- ^ “電波法施行規則第六条第四項第五号及び第六号の規定に基づくデジタルコードレス電話の無線局及びPHSの陸上移動局が使用する電波の型式及び用途等”. www.tele.soumu.go.jp. 2018年10月18日閲覧。
- ^ 「中国の高度化PHS「Turbo PHS」とは?」『ITmedia Mobile』。2018年10月18日閲覧。
- ^ 『第三世代移動通信システム(IMT-2000)の導入に関する方針(平成12年3月公表)に係る意見の募集-IMT-2000の2GHzメガヘルツ帯周波数の今後の取扱い-』(プレスリリース)総務省、2003年12月26日。 オリジナルの2003年12月30日時点におけるアーカイブ 。2007年2月26日閲覧。
- ^ 『第三世代移動通信システム(IMT-2000)の導入に関する方針に係る意見募集結果の公表及び今後の方針案等に対する意見の募集<IMT-2000の2GHz帯周波数の今後の取扱い>』(プレスリリース)総務省、2004年3月19日。 オリジナルの2004年4月9日時点におけるアーカイブ 。2007年2月26日閲覧。
- ^ 『第三世代移動通信システム(IMT-2000)の導入に関する方針に係る今後の取扱方針案等に対する意見募集の結果及び今後の取扱方針の公表(IMT-2000の2GHzギガヘルツ帯周波数の今後の取扱い)』(プレスリリース)総務省、2004年5月28日。 オリジナルの2004年8月4日時点におけるアーカイブ 。2007年2月26日閲覧。
- ^ "制御チャネル移行に伴う重要なお知らせ". WILLCOM. ウィルコム. 1 March 2011. 2012年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年4月29日閲覧。
- ^ 「eo64エア」のサービス提供終了について ケイ・オプティコム、2010年10月19日(2011年6月23日閲覧)
- ^ (プレスリリース)郵政省、1998年11月20日。http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/denki/981120j606.html。2003年11月18日閲覧。]
セルホン、モバイルホンとも言われている。 - ^ 金丸雄一「郵政省、「高性能なPHSの実現」に向け関連規則の一部改正へ」『INTERNET Watch』、1998年11月24日。2021年3月28日閲覧。
- ^ “もう不注意じゃ済まされません! いよいよ明日、12/1から「スマホ等ながら運転」の厳罰化スタート!【交通取締情報】|MotorFan[モーターファン]”. motor-fan.jp. 2019年12月1日閲覧。
- ^ 東京都道路交通規則第8条第4項
- ^ “使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律施行令等の公布について(お知らせ)”. 環境省. 2020年2月1日閲覧。
- ^ a b “重要なお知らせ:PHSサービス終了のお知らせ | お知らせ | NTTドコモ”. www.nttdocomo.co.jp. 2018年10月18日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2017年4月20日). “Y!mobile、PHSの新規契約・機種変更を2018年3月で終了” (日本語). ケータイ Watch 2018年10月18日閲覧。
- ^ 松本和大 (2023年3月20日). “PHSの歴史に幕、ワイモバイルの「PHSテレメタリングプラン」は31日で終了”. ケータイ Watch. 2023年3月20日閲覧。
- ^ a b その他の通信料ソフトバンク株式会社Y!mobile部門(2016年5月1日閲覧)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 華金玲 / 小檜山賢二. “中国における移動通信メディアの利用料金と地域格差”. 中国・アジア研究論文データベース. 2020年2月1日閲覧。
- ^ 小霊通の生産台数が激減、2月の減少幅は32% 中国情報局
小霊通の生産台数35%減、3年後に撤退との噂も 中国情報局 - ^ 小霊通契約数8958.3万件、単月で最大の減少に
- ^ 「【中国】中国版 PHS「小霊通」、2011年にサービス終了」『ザイロンチャイナプレス』翔泳社、2009年2月9日。2021年3月28日閲覧。オリジナルの2017年1月4日時点におけるアーカイブ。
- ^ "情報・通信システム事業におけるIPテレフォニー関連製品の事業体制を再編" (PDF) (Press release).
PHSと同じ種類の言葉
- PHSのページへのリンク