PFI 問題点

PFI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 14:58 UTC 版)

問題点

官民間のリスク分担

PFI事業の数が増えてくると問題を生み出す事業も増えてくる。福岡市の温浴施設(タラソ福岡)では、運営が破綻する事象が生じた際に、市と金融機関が直接契約を締結していたにもかかわらず、金融機関によるステップインが実行されなかった。これは事業が悪化しても融資回収に影響を与えないノーリスク融資であったことが原因と考えられる。このような形で民間資金を利用することは、公債による資金調達コストよりも民間資金調達コストが高い分だけ税金の無駄遣いであるという批判につながる。また、前述のスポパーク松森では地震を原因としたリスク分析が十分ではなく、リスクを原因としたあらゆる事故の責任が民間に移転されていなかった。

このような問題から、PFI事業における民間へのリスク移転が検討され始めている。たとえば刑務所の2号案件である「島根あさひ社会復帰促進センター」整備事業では、施設外の逃走事故が発生すると支払いが減額される。しかしながら、このような施設整備対象外のエリアでのリスク移転まですることが適切であるかどうかは疑わしい。公共が民間に移転したいリスクを移転するという観点での条件設定をすることは適切ではなく、民間にリスクを移転することでバリューが生み出されるかどうかを基準にしてリスク配分する必要がある。事業リスクの官民の適切な配分が今後の日本のPFIの検討課題であると思われる。

また金利についての問題もある。PFI事業は10年以上にわたる長期での計画を設定し入札を行う。そのため入札後は事業が設定された期間の金利を税金で払い続けることになる。金融系の民間企業へ長期にわたり金利という形で税金を投入するための施策とも言われている。

2007年10月13日に開所された3例目となる栃木県さくら市の「喜連川(きつれがわ)社会復帰促進センター」は「半官半民刑務所」「民活(「PFI=間資金用による社会資本整備」を略した)刑務所」と報道されている[2]

協働する官民の癒着

PFI方式で開業した全国初の病院「高知医療センター」では、家電や高級家具を受け取っていたとして前院長が収賄で逮捕される事例が発生した。このとき贈賄容疑で逮捕されたのはオリックス不動産の元社員である。

イギリスやオーストラリアビクトリア州のPFI手法には、賄賂や不正行為による契約解除や潔白度検証等に疑わしい状況であった場合のあらゆる調査費用を民間が負担する仕組みがあるため抑止力が働き、不正行為が発生した事例は報告されていない。

一方、日本のPFIの場合、官と民間企業の垣根が低くなり、癒着が生じやすくなり官民癒着の温床との指摘がある。また、本来なら医療本体の赤字をカバーする役割だった給食、検査、清掃、薬品調達など利益を生む部門を民間に丸投げ、特別目的会社の構成民間企業のみが利益を得て、医療本体を県民が負担するのみという構造になっているという指摘もある。しかも、完全に民営化した場合は産婦人科や小児科などの不採算部門が切り捨てられ、地域医療が崩壊するとの指摘も挙がっている。企業契約のヴェールに包まれていて経営内容が闇の中であり、もっと情報公開をとの声がある[3]

この点を踏まえ「雇用状況は特別目的会社の構成企業から下請け、孫受け状態で現場の労働者は低賃金。現状では失敗」「公立病院の経営をビジネスでやることに無理がある」「医療分野ではPFIは成功しなかった」との指摘がなされている[4]


  1. ^ "PFI". 知恵蔵. コトバンクより2022年2月3日閲覧
  2. ^ 2007年10月14日東京新聞など
  3. ^ 2007年10月17日東京新聞
  4. ^ 2007年10月17日付東京新聞
  5. ^ 東雲合同庁舎(事後評価) - 平成28年度第9回 関東地方整備局 事業評価監視委員会”. 国土交通省関東地方整備局 (2017年1月16日). 2020年1月3日閲覧。
  6. ^ 大阪第6地方合同庁舎(仮称)整備等事業”. 国土交通省近畿地方整備局. 2020年1月30日閲覧。
  7. ^ 大阪第6地方合同庁舎(再評価) - 平成28年度第2回 近畿地方整備局 事業評価監視委員会”. 国土交通省近畿地方整備局 (2016年7月). 2020年1月30日閲覧。
  8. ^ “造幣局跡地に大型公園「防災公園」と「としまキッズパーク」7月にオープン”. NPOいけぶくろネット. (2020年2月12日). https://w3.ikebukuro-net.jp/archives/info/bousapark202002 2020年3月23日閲覧。 
  9. ^ miyazawa_bunga(宮沢洋) (2021年4月8日). “栃木県初のPFIで梓・大成らの設計による巨大体育施設がオープン、「専兼の壁」は過去の話?”. BUNGA NET. 2021年5月16日閲覧。





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