Microsoft Windows XP
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エディション
Home Edition
主に家庭で使用されることを前提に開発されたエディション。Windows XPの基本的な機能が搭載されており、ドメイン参加といったビジネス向けの機能は非搭載。Professionalエディションに比して、1つの物理CPUのみの対応(ただしハイパースレッディング・テクノロジーやマルチコアプロセッサはサポートする)といくつか拡張性に制限がある。
Professional
- (個人の)上級ユーザー、あるいはビジネスでの利用を想定した、Home Editionに対する上位エディション。マルチプロセッサへの対応や ドメインへの参加、リモートデスクトップのホスト機能、ダイナミックディスクのサポートなどに対応するほか、IISやファイルシステム暗号化などセキュリティ保護関連機能も搭載する。
Media Center Edition
- MCEと略される。バージョンは2002(コードネーム:eHome、2002年10月に米国、カナダ、韓国で先行発売、日本語版は存在しない)、2003(コードネーム:Freestyle、開発中止)、2004(コードネーム:Harmony、2003年10月に日本、中国、フランス、ドイツ、英国でも発売、日本語版は2003年10月15日発売)、2005(コードネーム:Symphony、2004年10月DSP版は米国では当初未発表で日本でのみ先行発売された)とそのマイナーアップデート版Update Rollup2(コードネーム:Emerald)の4種類がある。Professionalエディションの機能を基本に、テレビジョン放送やデジタルオーディオ機器などのAV機能を付加したエディションである。MCEにのみ、Windows Media Centerと呼ばれるテレビ視聴・録画、音楽再生・録音、ビデオ・DVD鑑賞などを専門的に行うツールが収録されており、付属する専用リモコンで遠隔操作を行うことが可能である。ただし、Media Center EditionはOEM供給の形でのみ提供されるため、プリインストールPCを購入する必要がある(2005についてはDSP版が提供され、一部のハードウェアとセットで入手が可能となった)。
- 2004ではドメインへの参加は可能であったが、2005では再インストール時(OEM版はインストール時も含む)のみにしかドメインへの参加はできなくなった。マイクロソフトも公式にはドメイン参加は不可能であるとアナウンスしている。その他の両バージョンの差として、サポートTVチューナー数が1から2に増加、導入済みService PackがSP1からSP2になったほか、2004では非対応だったPortable Media CenterやデータCD/DVDの作成について、2005で対応した。
- 2005年10月にリリースされたUpdate Rollup2では、Xbox 360をクライアントとして使用することが可能となった。
- なお、AV機能が充実したPCは日本でも多数リリースされているものの、それらへのMCE採用例は少ない。日本の大手PCメーカーはAV機能に特化した製品を提供する際、ハードウェア・ソフトウェア(ドライバ、アプリケーション)を独自に開発・機能拡張することが多く、結果、Home EditionまたはProfessionalでも事足りるからである。この理由として、それら大手PCメーカーのほとんどは大手家電メーカーでありAV製品に関する技術が潤沢であること、MCEのリリース以前から多くのAV機能特化PCを製造販売していたこと、そういった製品の多くは家庭向けであるため、MCEよりもコストが低いHome Editionを採用したいこと、などが挙げられる。
Tablet PC Edition
- Professionalの機能に加え、ペンタッチ機能を付加させたエディション。このエディションが搭載されたPCには必ず専用のペンが付属する。またタブレットPCでの操作を想定したエディションであるため、Windows Journalと呼ばれるツールでメモ書きができたり付箋紙やMicrosoft Officeなど一部のアプリケーションの付加機能が利用できる場合もある。Tablet PC Edition (2002) (日本語版は2002年11月7日発売)とTablet PC Edition 2005(日本語版は2005年11月22日発売)の2種類のバージョンが存在し、2002ユーザーはService Pack2をインストールすることにより2005へとアップグレードできる。OEM版とDSP版(2005のみ)での提供で、市販パッケージ版は存在しない。
- 64ビット版
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- 64-bit Itanium Edition
- Itanium 環境のワークステーション向けのエディション。Windows XPを基に開発され2002年に公開されたVersion 2002と、Windows Server 2003を基に開発され2003年に公開されたVersion 2003がある。16GBまでの実メモリと8TBまでの仮想メモリをサポート。IA-32向けアプリケーションソフトウェアがそのまま動作するという機構(WOW64)を備えている。OEM供給の形でのみ提供された。後述するProfessional x64 Editionが発売される前の2005年1月4日に販売終了となった。
- Professional x64 Edition
- AMDによるx86アーキテクチャの64ビット拡張AMD64に対応したWindows Server 2003 Service Pack 1 x64 Editionsを基に開発されたクライアント向けのエディション。機能の多くとそれを表すバージョン番号はWindows Server 2003 Service Pack 1と同じ。2005年4月23日から販売開始され、OEM版とDSP版のみが提供された。
市場限定版
Starter Edition
- 開発途上国向けのエディションで、2004年10月ごろから各国語版が段階的に試験発売された。日本語版は提供されていない。対象国は低国民所得がゆえに海賊版が横行しており、その対抗策として廉価で提供されている。主要エディションに比して廉価で提供している理由として、同時に開けるウィンドウ数が3つまでであることや、画面解像度がSVGA(800×600)までであること、ネットワーク共有機能の制限やマルチアカウントが使用できないなどの大幅な制限が加えられている。Home Editionなどへのアップグレードは提供されていない。ポルトガル語(ブラジル)、タイ語などの言語版をはじめ複数のローカライズ版がリリースされており、それぞれ異なった壁紙やスクリーン セーバーなどが収録されている。
- Edition N
- 欧州委員会の要求を受けて用意されたエディション。Home EditionとProfessionalからWindows Media Playerが除かれている。主要エディションはメディアプレーヤーに関する消費者の選択権を狭めるとして、競争法違反に問われたため。
- Edition KおよびEdition KN
- 韓国公正取引委員会の要求を受けて用意されたエディション。KはHome EditionとProfessionalに他社製インスタント メッセンジャーへのリンクを追加したもの。KNはHome Edition KとProfessional KからWindows Media PlayerおよびWindows Messengerが除かれているもの。欧州連合域内におけるメディア プレーヤーに加えて、インスタント メッセンジャーについても消費者の選択権を狭めるとして、独占禁止法違反に問われたため。
その他
- Home Edition ULCPC
- 2008年4月3日にマイクロソフトがULCPC用としてメーカー向け販売を開始すると発表したもの[21]。なおマイクロソフトで言うところのULCPCは一般においてネットブックやネットトップと呼ばれる超廉価版PCに合致しており、これらの市場向け製品に利用されている。
- Windows Fundamentals for Legacy PCs
- コードネーム"Eiger"と呼ばれたもので、2006年7月にシンクライアント版としてソフトウェア アシュアランス契約者向けに登場した[22]。
- Windows XP Embedded
- Windows XPベースの組み込みシステム向けOS。専用の構築ツールを使用してOSの機能をカスタマイズし、搭載製品の構成や用途に応じたOSパッケージを作成することができる。POSシステム、ATM、カーナビゲーション、アーケードゲーム基板、シンクライアントなどに使われているほか、大手メーカー製PCでTV視聴録画専用モードのOSとして採用されている例もある。
- Windows Embedded Standard 2009
- Windows XPベースの組み込みシステム向けOS。Windows XP Embeddedの後継にあたる。
- Windows Embedded POSReady 2009
- Windows XPベースのPOSシステム向けOS。Windows Embedded for Point of Services (WEPOS) の後継にあたる。
注釈
- ^ ただし、Windows 7のダウングレードに関しては「Windows 7発売から18か月後」あるいは「SP1のリリース」のいずれか早いほうまでという条件付きであったが、後にWindows 7のサポートライフサイクル終了までダウングレード権の行使が可能となった。しかしこれは、ダウングレード先のOSのサポート期間のさらなる延長がなされることを意味していない。あくまでもダウングレード権の行使期間の延長に過ぎないという点に留意する必要がある。
- ^ 一時的に後継OSのWindows Vistaの家庭向けエディション群(BusinessとEnterpriseを除くエディション)のサポート期限「2012年4月10日」との逆転現象が発生したが、2012年2月20日にWindows Vistaのサポート期間改訂により、解消された。
- ^ ただし、Windows 1.0は発売から約16年、Windows 2.0も発売から約14年と、Windows XPよりも長い期間サポートされていた。
出典
- ^ “An Inside Look at the Months-long Process of Getting Windows XP Ready for Release to Manufacturing - News Center” (英語). Microsoft (2001年8月24日). 2016年11月10日閲覧。
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- ^ マイクロソフト、Windows 7の「XPダウングレード」を認める方針 - ニュース:ITpro
- ^ XP搭載PC、販売終了まで1カ月
- ^ ついに「Windows XP」を搭載したパソコンが販売終了へ
- ^ “Windows XPのダウングレード権延長は“都市伝説””. @IT. ITmedia Inc.. 2008年10月8日閲覧。
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- ^ “【さよなら Windows XP】サポート終了後もネットにつながなければ問題なし? Q10.Windows 7の仮想化機能なら安全?”. 日経BPネット (2014年4月1日). 2014年4月3日閲覧。
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- ^ フォティーンフォティ
- ^ “Windows XPを使い続けられるようオランダと英国が「延命」契約。その支払い額は?”. WIRED.jp (2014年4月7日). 2014年8月28日閲覧。
- ^ Escape from XP
- ^ Microsoft公式のWindows XP駆逐ゲーム「Escape from XP」がmodern.IEで公開中 - 4Gamer.net
- ^ 「IEのゼロデイ脆弱性」を修正するパッチが緊急公開、Windows XPも対象
- ^ マイクロソフト セキュリティ情報 MS14-021 - 緊急
- ^ “日本マイクロソフト、ランサムウェア攻撃に関する対策状況を告知――Windows XP/8用の更新プログラムも“例外的”に提供”. ITmedia (2017年5月15日). 2017年5月15日閲覧。
- ^ impress
- ^ SP3は512MB以上を推奨
- ^ “Microsoft(R) Windows(R) 20周年記念パッケージを発売”. マイクロソフト (2005年11月16日). 2006年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年10月1日閲覧。
- ^ “マイクロソフト、Windows(R) XP ユーザー向けの特典提供プログラム、Windows Genuine Advantage Programの試験運用を3月15日から開始 〜Windows XPユーザーに特典ソフトウエアを提供〜”. マイクロソフト (2005年3月15日). 2005年3月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年10月1日閲覧。
- ^ “MS、Windows XPの正規ユーザー特典として神経衰弱ゲーム「Match-Up!」を配布”. 窓の杜 (2005年7月29日). 2011年10月1日閲覧。
- ^ “Windows XP標準の壁紙「草原」あの丘はどこにあるの?”. web R25. 2016年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月20日閲覧。
固有名詞の分類
Windows NT系 |
Microsoft Windows 7 HPFS セキュリティ識別子 NT File System Microsoft Windows XP |
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