E-767 (航空機) 機体

E-767 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/13 23:57 UTC 版)

機体

E-767の特徴について次に述べる。本機に関しては旅客機ベースであるため外装に関連する情報は豊富だが、警戒監視、情報収集及び指揮管制という任務の性質上の理由から機密情報が極めて多く、機体内部に関する情報は非常に乏しい。

ベース機体

E-767 64-3501(#501号機)
767ベースの為、707ベースのE-3 セントリーよりも胴体が太いが外寸はほぼ同じである
74-3503(3号機:503号機)

機体はボーイング767-200ERをベースにしており、ボーイング方式の詳細な形式(カスタマーコード)では「ボーイング767-27C/ERの改造機」という位置づけになる[7][8]。形式に含まれる「7C」は日本政府が顧客であることを示す。ボーイング707をベースとしているE-3と比べてキャビンの床面積が約1.54倍(E-3 = 1,080 ft2、E-767 = 1,667 ft2)、容積が約2.1倍(E-3 = 7,190 ft3、E-767 = 15,121 ft3)あるため機内の移動も容易で居住性は良いとされる[9]

機体内部の機器群は機体前方に集められているため、機体後方は乗員の休憩又は長時間ミッションのための交代要員の控え室として使用でき、ギャレーラバトリー(トイレ)もある。なお、ラバトリーは操縦席後方左舷にも設置されており、計2カ所となっている。

外見的特徴

胴体と翼はベース機とほぼ同じであるが、胴体側面の窓が全て塞がれている。これは、キャビン内部は電子機器類で占められているため旅客機のような窓は必要ないことと、自身のレーダーをはじめとする各種の無線設備が発射する強烈な電磁波から電子機器と乗員を防護するためである。

また、胴体上部に円盤型の直径9.14m、厚さ1.83mのロートドームが装備されている点が大きな特徴である。ボーイングは当初、ベントラルフィンを装備することを検討していたが、ロートドームの装備による空力変化は軽微と判断され、装備されなかった。

胴体の長軸に沿って胴体上下に無数のUHF及びVHF通信用ブレードアンテナが配置されている。また、両主翼端に機体後方へ突き出した棒状のHF通信用プローブアンテナが配置されている。他には、JTIDS(統合戦術情報伝達システム)アンテナが機首レドーム内と胴体尾部上部にコブの様に設置されているフェアリング内にある[10]

なお、E-3 セントリーは片翼に2基ずつ、両翼で4発のエンジンを搭載するが、E-767はベース機と同じく片翼に1基ずつ、両翼で2基である。

塗装は胴体と翼は海上自衛隊P-3Cと同じく灰色単色の低視認塗装だが、ロートドームは黒と白の2色塗り分けとしている。

エンジン

エンジンは、ベース機にも搭載されるゼネラル・エレクトリックの高バイパス比ターボファンエンジンCF6-C80C2の仕様変更モデルCF6-80C2B6FAが採用された。主な変更点は高出力のレーダーと機体内部の機器群の電力をまかなうために、各エンジンの発電機が通常は90kVA・1基から150kVA・2基に換装されている[11]。これによって両翼エンジンの発電力は合計180kVAから600kVAに引き上げられた。これに、APUの発電力90kVAを合計すると総発電力は690kVAとなる[11]

航空自衛隊ではCF6-80C2系のエンジンをKC-767C-2日本国政府専用機などに採用している。

ロートドーム

ロートドームは、警戒監視中では毎分6回転(10秒/回転、毎秒36度)で回転しており[12]、360度全周にわたってレーダーの電波を放射している。離着陸時など警戒監視中以外では、ロートドームの基部にある軸受けにオイルを循環させるために毎分1/4回転(4分/回転、毎秒1.5度)で回転している[13]。このときは電波を放射しない。

ロートドーム内にはAN/APY-2のレーダー・アンテナとそれと背中合わせにMk.XII敵味方識別装置(IFF)のアンテナが納められている。したがって、レーダー・アンテナからの電波とIFFの質問信号はちょうど180度反対の方向に放射されることになる。また、レーダー・アンテナはフェイズド・アレイ方式であり、機体の傾きを検出して走査を自動的に補正する機能を備えている[14]

同様のロートドームを搭載しているE-3の開発中、このロートドームは抗力となって飛行に影響を与えるのではないかと考えられていたが、独特の形状のためにむしろ揚力を発生し、巡航速度と航続距離の低下を最小限にできたと言われている[15]

なお、ロートドームから放射される電波は非常に強力であるため、自衛隊の飛行場であっても駐機中には管轄省庁の許可なく電波を放射することは法令により禁止されている。

レーダーシステム

レーダーシステムはE-3最終型と同様のウェスティングハウスAN/APY-2が搭載されている[11]。これは他機の方位、距離、高度を同時に測定できる3次元レーダーで、同社のAN/APY-1と比べて洋上監視能力が強化されている[16]。AN/APY-1及び-2はともにパルス・ドップラー・レーダーであり、前出の探知諸元のほかに速度も測定できる。また、AN/APY-2は自由に設定を変更できるマルチ・モード・レーダーであり、他のレーダーではその能力を制限されてしまうグラウンド・クラッター及びシー・クラッターを排除し、空中及び水上の目標を分離できる[17]。クラッターとは、レーダーから送り出された電波が地表面や海水面に反射してしまうこと。通常のレーダーでは、上空から低空を飛行している航空機を監視しようとしても、航空機からの反射波が大量のクラッターに埋もれてしまう。特に波の高い海面のシー・クラッターは深刻である。

E-3の初期型に搭載されていたAN/APY-1も空対空監視ではAN/APY-2と同等の能力を有しているが、洋上監視に強いAN/APY-2は国土が海で囲まれている航空自衛隊にとって大変好都合である。

国内における整備は東芝が主担当となっている。

電子装備

レーダーで獲得した情報はE-3ブロック30/35準拠CC-2E中央コンピューターによって処理され、14台ある状況表示コンソールに表示される。他に敵味方識別装置戦術データ・リンク装置、航法装置が設置されている。なお、将来のアップデートにも対応できるように、機内は余裕を持たせて機器群を配置し、機体後部の15,000lb(約6,800kg)もあるロートドームとのバランスをとるために機体前方に集められている。

武装

警戒監視が主任務であるため固定武装はなく、ハードポイントが無いため外部兵装も装備できない。

フレアチャフなどデコイを放出するディスペンサーは外部から確認できず装備していないとされる。

その他

将来的に空中給油に対応させるため、製造段階で配管などが準備されており、プローブの取り付けなど簡単な改修によって空中給油が可能となる。




  1. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.22
  2. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.20
  3. ^ 月刊「エアワールド」1991年4月号
  4. ^ a b 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.30
  5. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.20
  6. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.33
  7. ^ 767 AWACS Specifications” (英語). The Boeing Company 公式ページ. The Boeing Company. 2008年3月8日閲覧。
  8. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.30
  9. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.25
  10. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.34
  11. ^ a b c 『世界航空機年鑑 2006~2007年版』,酣燈社,P110
  12. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』pp.25,58
  13. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.58
  14. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.39
  15. ^ 週刊エアクラフト1989年11月28日号 p.11
  16. ^ 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.37
  17. ^ Japan 767 AWACS Overview” (英語). The Boeing Company 公式ページ. The Boeing Company. 2008年3月8日閲覧。
  18. ^ a b Japan Orders Upgrades for its 4 E-767 AWACS
  19. ^ 平成17年度防衛力整備と予算の概要”. 防衛庁. pp. p.40. 2010年7月9日閲覧。
  20. ^ わが国の防衛と予算 平成21年度予算の概要”. 防衛省. pp. p5. 2010年7月9日閲覧。
  21. ^ わが国の防衛と予算 平成25年度予算の概要”. 防衛省. pp. p7. 2013年10月22日閲覧。
  22. ^ Japan-Airborne Warning and Control System (AWACS) Mission Computing Upgrade (MCU) - アメリカ国防安全保障協力局・2013年9月26日
  23. ^ Boeing Keeps World AWACS Fleet ‘Ready, Relevant’
  24. ^ > U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE > Contract View
  25. ^ a b c d 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.84 基本的な諸元は同じという考えに基づき、ボーイング767-200ERの寸法を使用
  26. ^ a b c 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.84 最大離陸重量がボーイング767-200ERと40,000lbの差であるため、その値から推定
  27. ^ a b 月刊エアワールド1998年4月号別冊『空中警戒管制機 AWACS/E-767&E-3』p.84 基本的な諸元は同じという考えに基づき、ボーイング767-200ERの燃料容量を使用
  28. ^ The Boeing Company公式ページ 767 AWACS Specificationsより
  29. ^ 109頁




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