E-2 (航空機) 電子装備

E-2 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/03 16:21 UTC 版)

電子装備

レーダー

AN/APS-96
E-2A
目的 捜索用
開発・運用史
開発国 アメリカ合衆国
送信機
周波数 UHF(400 - 450 MHz
パルス 13マイクロ秒 (0.2マイクロ秒にパルス圧縮)
パルス繰返数 300 pps
送信尖頭電力 1 MW
アンテナ
形式 リニアアレイ
素子 八木アンテナ×8本×2列
直径・寸法 ロートドーム:直径7.3 m×高さ76.2 cm
アンテナ利得 21.5 dB
ビーム幅 幅7×高さ20度
走査速度 6 rpm
方位角 全周無制限
探知性能
探知距離 370 km / 200 nmi
(高度9,150 m飛行時)
その他諸元
重量 アンテナ: 771 kg
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E-2は、強力なレーダー・電子機器により、同時に250個の目標を追尾し、30の要撃行動を管制することができる。それまでのE-1では、4 - 6個の目標を追尾し、2の要撃行動を管制することしかできなかったことと比べると、これは格段の進歩であった。また、システムは離陸前に完全に機能を発揮できる状態になっており、発艦した瞬間から任務を実施できる。

レドームの直径は7.31m、厚さは0.76mある。E-2の各型は、その強力なレーダーを用いることにより、2,460万km3の空域と38万km2以上の地表面を同時に監視することができる。レドームは、回転するレーダー・ディッシュ(いわゆるロート・ドーム)である。レドームの直径は7.31mで、通常は1分間に6回転している。空母の格納庫への収納を考慮して、61cmほど下げることが可能なほか、飛行中に角度を調整して揚力を発生させ、重量と空気抵抗を相殺することもできる。レーダーの使用帯域はUHF帯であり、シークラッター除去に有利なことから選定された。

A型で搭載されていたAN/APS-96は、機体が標準的な作戦高度(9,150メートル: 30,000フィート)を飛行している場合、370キロメートル(200海里)の探知距離を発揮できた。C型グループ0で搭載されたAN/APS-120レーダーは、探知距離を460キロメートル(250海里)に延伸し、さらに目標情報処理にデジタル制御を採用、ESM装置も統合されている。これはさらに、新型のレーダー情報処理装置(ARPS)を採用したAN/APS-125、低サイド・ローブ化されたAN/APA-171アンテナを採用したAN/APS-138に発展した。

C型グループ2に搭載されたAN/APS-145は、探知距離が560kmに達し、2,000個以上の目標を同時に追跡可能であり、機上管制官は最大で40機の要撃機を一度に指揮することができる。

D型で搭載されるAN/APY-9では、アンテナをアクティブ・フェーズドアレイ(AESA)式にしている。このロートドームはL3COM社製ADS-18と呼称されており、使用周波数は従来通りのUHF帯(300MHz - 3GHz)であり、この周波数を使うAESA(UHF-ESA)としては世界初のものである。最大探知距離はAPS-145とほぼ同程度で、航空機に対して555km以上、水上目標に対して360km以上とされているが、探知高度は海面高度から100,000フィート (30,000 m)まで対応しており、探知可能範囲は従来と比して250%増とされている。この性能を実現するため、APS-145では機械式走査1チャンネルのみであったのに対し、APY-9では電子式走査18チャンネルを備えている。動作モードは下記の3種類がある[7]

  • 先進早期警戒監視(Advanced AEW Surveillance, AAS) - 10秒間で全周360度を監視するモード。
  • 拡張セクタースキャン(Enhanced Sector Scan, ESS) - ロートドームの回転による全周監視を行いつつ、特定のセクターに対して電子的にビームを指向して拡張探知追跡を行うモード。
  • 拡張追跡セクター(Enhanced Tracking Sector, ETS) - ロートドームの回転を止めて、特定のセクターにビームを集中的に指向するモード。他のモードよりも遠距離での探知が可能とされる。

またAPY-9では、離陸から5分で探知可能になるという優れた即応性を備えている。なおADS-18では、レドームも外皮を複合素材製とすることで、旧来のものより軽量としている[7]

2014年、アメリカ海軍関連団体誌は報告書で、AN/APY-9を搭載したD型ホークアイを巡航ミサイル中国人民解放軍J-31J-20など第5世代ジェット戦闘機ステルス機)に対抗し得る秘密兵器と形容した[8]

C4Iシステム

本機の最大の特徴は、空中戦術情報システム(ATDS)への対応にある。これは当時、海軍が艦隊配備を進めていた海軍戦術情報システム(NTDS)の空母航空団版であり、本機はATDSの中核的ユニットとして計画された。

戦術情報処理装置

E-2C グループ0においては、リットン社製OL-77コンピュータ・システム(L-304コンピュータ×2基)を中核として、3名の電子システム士官それぞれにAPA-172コンソールが配置されている。L-304コンピュータは、同時に600個の目標情報を処理することができる。また、グループ1においては、処理できる目標数が倍増したCP-1469/Aコンピュータによって更新された。

戦術データ・リンク

当時、空母航空団においては、水上艦および航空機との要撃管制用2-wayデータ・リンクとしてリンク 4が運用されており、本機においても、作戦機に対する要撃管制用として運用されている。また、これに加えて、本機はリンク 11にも対応しており、NTDS対応の水上艦艇との間で共通戦術状況図を生成することができる。これによって本機は、搭載するレーダーのほか、艦隊の各艦が搭載する対空レーダーの情報を利用して要撃管制を行えるようになった。

また、E-2C グループ2では、統合戦術情報伝達システム(JTIDS)クラス2Hを搭載して、新しい標準規格であるリンク 16に対応した。さらにホークアイ2000ではより緊密な情報連携を可能にする共同交戦能力(CEC)に対応、E-2DではNIFC-CAに対応するとともに、リンク 16の端末もMIDS-JTRSに更新する予定である[7]


注釈

  1. ^ 以前はホークアイ2005とも呼ばれていた
  2. ^ 以前の型でも空中給油装置の搭載は検討されたことがあったが、アメリカでは試験のみで採用されず、イスラエル空軍でのみ採用されていた
  3. ^ この背景として、1972年夏頃にアメリカ合衆国のニクソン大統領キッシンジャー国務長官P-3CとともにE-2Cの対日リリースを主張するようになっていたということがあり、この直後の田中首相との首脳会談において、両機の売り込みが図られたと言われている[12]。このような経緯もあり、E-2Cの導入は後にダグラス・グラマン事件として政治問題化した[13]

出典

  1. ^ a b c 世界航空機年鑑 2007-2008 酣燈社 P108 ISBN 978-4873572703
  2. ^ a b c d アメリカ海軍機 1946-2000 増補改訂版 ミリタリーエアクラフト’01年2月号別冊 デルタ出版 P182
  3. ^ 軍事研究2007年10月号「次世代ホークアイE-2D」
  4. ^ E-2Dアドバンスド・ホークアイに空中給油システムを搭載
  5. ^ a b c 関 2017.
  6. ^ 井上孝司「航空最新ニュース・海外軍事航空 VAW-126のE-2Dが空中給油の資格認定」『航空ファン』2020年10月号 文林堂 P.114
  7. ^ a b c 石川 2014.
  8. ^ 米海軍、最新型の早期警戒機を岩国配備へ ステルス機も捕捉”. CNN.co.jp (2017年1月7日). 2017年1月7日閲覧。
  9. ^ 井上孝司「航空最新ニュース・海外軍事航空 フランスへE-2Dを輸出 米DSCAが発表」『航空ファン』通巻814号(2020年10月号)文林堂 P.113
  10. ^ French Navy to Procure E-2D Advanced Hawkeyes for 2026-2028
  11. ^ a b c d e f g h i 航空幕僚監部 2006, pp. 435–440.
  12. ^ NHKスペシャル取材班 2018, pp. 153–160.
  13. ^ NHKスペシャル取材班 2018, pp. 190–193.
  14. ^ 航空自衛隊E-2C
  15. ^ 防衛省、空中早期警戒機「E2D」初導入へ
  16. ^ ノースロップ・グラマン、E-2Dの初号機を日本に納入
  17. ^ 空自機に新迎撃システム=標的情報を日米共有へ―防衛省
  18. ^ 防衛省、空自機「E2D」にCEC搭載検討 イージス艦と情報共有へ
  19. ^ 我が国の防衛と予算-平成31年度予算の概要” (PDF). 防衛省 (2019年3月27日). 2019年3月30日閲覧。
  20. ^ 防衛力整備計画について”. 防衛省・自衛隊. 2022年1月22日閲覧。
  21. ^ 我が国の防衛と予算-防衛力抜本的強化「元年」予算- 令和5年度予算の概要”. 防衛省 (2023年3月28日). 2023年4月3日閲覧。
  22. ^ 令和4年度防衛白書 資料8 主要航空機の保有数・性能諸元
  23. ^ 防衛省・自衛隊:予算の概要”. 防衛省. 2023年4月3日閲覧。





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