DoS攻撃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/16 08:13 UTC 版)
攻撃手法
フラッド型のDoS攻撃は、ウェブ上に公開されている様々なサービスに対して行うことができるので、攻撃対象となるサービスごとにフラッド攻撃が存在する。
SYNフラッド攻撃
TCPの3ウェイ・ハンドシェイクでは2つのマシンA,BがTCP接続をする際、Aが通信要求SYNパケットを送信し、BがSYN/ACKパケットを送信し、最後にAがACKパケットを送るという手順をたどる。 SYNフラッド攻撃では攻撃者が攻撃対象のマシンに対しSYNパケットを大量に送りつけ、それらすべてに対するSYN/ACKパケットを攻撃対象に発行させる。しかし攻撃者はそれらのSYN/ACKパケットに対しACKパケットを返信しない。 これにより攻撃対象はタイムアウトになるまでいつまでもACKパケットを待ち続けることとなり、リソースを食いつぶされてしまう。 対策としてはRFC 4987にファイアーウォールやプロキシの利用といった一般的手法の他、SYN cookies、TCP half-open、SYN Cacheといった手法が記載されている。
ICMPとUDP
ICMPやUDPのようなコネクションレスのサービスでは発信元の偽装が容易なので、DoS攻撃を行う攻撃者にとって身元がわかりにくいという利点がある。
ICMPを利用したものにはICMP echo request (を利用したping)を攻撃対象に大量に送り続けるICMP echoフラッド攻撃(pingフラッド攻撃)や、踏み台にICMP echo requestをブロードキャストする事でICMP echo replyを攻撃対象に集めるDRDDoS攻撃であるSmurf攻撃がある。
他にも規格外の大きなサイズのICMPパケットを送りつける事で攻撃対象をクラッシュさせるping of deathという攻撃がかつてあったが、1996年に発見されて以降この脆弱性は防がれているため、この手法はほぼ通用しなくなっている。
UDPに対してもUDPポートに対して大量のトラフィックを送信するUDPフラッド攻撃があり、UDPを利用したDRDDoS攻撃をUDPベース増幅攻撃(UDP-Based Amplification Attack)と呼ぶ。
UDPベース増幅攻撃の中でもNTPの実装であるntpdのmonlistコマンドを使った攻撃は増幅率が高く、19倍から206倍の増幅率に達する[12]。このコマンドはNTPサーバが過去にやり取りしたアドレスを最大で600件返すものであり、ntpdにおけるコマンドを利用した攻撃が2013年に観測されている[13][14]。なおntpdのバージョン4.2.7p26以降はこのコマンドを悪用できないよう修正されている[13]。
この他にもSSDPやRIPv1を利用したUDPベース増幅攻撃がある[15][16]。
ブラウザの再読み込み
ウェブブラウザに備わっているページの再読み込み機能を使用し、Webサーバに大量にリクエストを送りつける攻撃はF5アタック(F5攻撃)と呼ばれることがある。この名称は、「F5キーを連打する攻撃」であることに由来する。
Windows上で動作するウェブブラウザでは、F5キーが更新機能に割り当てられていることが多いため、F5キーを押下するたびにWebサーバにリクエストが送られることになる。
なお、Ctrl+RでもF5アタックと同じリクエストを送ることができる。
その他
- スローなHTTP系:長時間にわたってWebサーバがコネクションを維持してくれることを悪用して能力を浪費する[17]。次の攻撃がある[18]。
- Slow HTTP Headers(Slowloris)
- Slow HTTP POST(RUDY:R-U-Dead-Yet?)
- Slow Read DoS
- メールボム:サイズの大きいメールや大量のメールを送り付ける手法。
- HTTP GET/POSTフラッド:HTTPの規格には準拠しているが負荷のかかるリクエストを大量にWebサーバ宛てに送る。
- TeardropおよびLand攻撃:かつてTCP/IP実装にあった脆弱性[19] を利用した攻撃。前者は分割されたIPパケットを再統合する際パケットの重複をうまく扱えない実装上の問題を利用した攻撃、後者は攻撃者が送り主と送信先を一致させたパケットを送りつけると無限ループにはまるなどの脆弱性を利用した攻撃[19]。
- WinNuke かつてMicrosoft Windowsの「NetBIOS over TCP/IP」に在った脆弱性が攻略された。
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