C言語 関連する主なプログラミング言語

C言語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/29 19:03 UTC 版)

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C言語
パラダイム 手続き型
登場時期 1972年
設計者 デニス・リッチー
開発者 ベル研究所
最新リリース ISO/IEC 9899:2011/ 2011年12月8日(6年前) (2011-12-08
型付け 弱い静的型付け
主な処理系 GCC, Clang, Visual C++
方言 C89, C99, C11
影響を受けた言語 B言語ALGOLアセンブリ言語pascal
影響を与えた言語 awkcshC++Objective-CD言語JavaJavaScriptLimbo
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C言語(シーげんご)は、1972年AT&Tベル研究所デニス・リッチーが主体となって開発したプログラミング言語である。英語圏では単に C と呼んでおり、日本でも文書や文脈によっては同様に C と呼ぶことがある。

特徴

  • 汎用性が高い。プログラムの自由度や、目的に応じた拡張が容易であるため、オペレーティングシステムアプリケーションソフトウェアファームウェアの記述、デバイスドライバー開発や機械制御など、あらゆる分野に適応している。
  • 対応する機器の範囲が広い。パーソナルコンピュータはもちろん、自動車や家電の組み込み用マイコンからスーパーコンピュータまで、C言語を使用できるハードウェアは多様である。多目的性と、対応機器の多彩さのため、「コンピュータを使ってやること」は大抵、C言語で対応可能である。
  • 商用・非商用を問わず、採用ソフトウェア分野が広い。作成や使用のための補助的なソフトウェアが豊富である。
  • 機械語に変換するソフトなどの開発環境がCPUに付属していたり無償だったりするものもあるため、ライセンス料の支払いをしなくても使用が始められる。
  • 開発時期が古く、文法に機械語の影響が強く、複雑である。この欠点を補正するためのちに開発された新言語に比較し、記述することが多く、面倒で習得しにくい低水準言語である。
  • アマチュアからプロ技術者まで、プログラマ人口が多く、プログラマのコミュニティが充実している。C言語は使用者の多さから、正負の両面含め、プログラミング文化に大きな影響を及ぼしている。
  • 言語の適用先であるUNIXの場合、大抵のことがスクリプト言語マクロプロセッサフィルタやそれらの組み合わせで処理できるため、うまく分野の棲み分けができていた面があった。仕様規格・派生言語も多く幅広い領域への移植の結果、適切でない分野にC言語が使われている場合もある。
  • C言語は手続き型言語の側面と関数型言語の側面がある。コンパイラ言語とOSを念頭に設計している。アセンブラのコードと同じことを実現できるようなコンピュータ寄りの言語仕様になっている。低水準な記述が出来る高級言語とも、高級言語の顔をした低級言語と言うことがある。
  • Cコンパイラは、移植の容易性、自由度、実行速度、コンパイル速度などを追求した。代わりにコンパイル後のコードの安全性を犠牲にしている。セキュリティーの脆弱性や潜んだバグによる想定外の動作、コンパイラによる最適化の難しさがある。最適化するとコンパイル速度が遅くなるなどの欠点が生じることがある。自動車分野ではMISRA CというC言語の部分集合(subset)を定義して、C言語の弱点を補っている。
  • UNIXおよびCコンパイラの移植性を高めるために開発してきた経緯から、オペレーティングシステムカーネルおよびコンパイラ向けの低水準記述ができる。

自由度

  • 文の区切りを終端記号 セミコロン;」で表し、改行文字にも空白にもトークンの区切りとしての意味しか持たせない「フリーフォーマット」という形式を採用している。
    • 記述作法についてはしばしば議論の対象となり、書籍も多数出版されている。
  • ALGOLの思想を受け継いで構造化に対応している。手順を入れ子構造で示して見通しの良い記述をすることができる。原理的に無条件分岐(gotoを使用する必要はなく、MISRA Cでは当初goto文を禁止していた。goto文を使わなければ、スパゲティプログラムと呼ばれる読みにくいプログラムになりにくい。
  • モジュール化ファイルを単位として可能。モジュール内だけで有効な名前を使うことが出来るスコープを持っている。
  • プログラムを戻り値つきのサブルーチンに分離できる。C言語ではこれを関数と呼び、関数内のプログラムコードでは、独立した変数が使用できる。これにより、データの流れがブロックごとに完結するのでデバッグが容易になり、また関数の再帰呼び出しも可能となる。また、多人数での共同開発の際にも変数名の衝突が回避しやすくなる。なお、C言語ではUNIXのようなOSを前提としたホスト環境と、割り込み制御のようなOSを前提としないフリースタンディング環境とがある。ホスト環境では、プログラム開始直後に実行するプログラム要素を main という名前の関数として定義する[1]。プログラム中で再帰的にmain関数を呼ぶことも可能(C++では不可能[2][3])。フリースタンディング環境では、エントリポイントと呼ばれるアドレスに置かれたコードをプログラムの開始点とするが、それがmain関数である必要はない。なお再帰呼び出しは、スタックオーバフローの原因となるため、MISRA Cでは禁止している。
  • システム記述言語として開発されたため、高級言語であるがアセンブラ的な低水準の操作ができる。ポインタ演算ビットごとの論理演算、シフト演算などの機能を持ち、ハードウェアに密着した処理を効率よく記述できる。これはオペレーティングシステムやドライバなどを記述する上では便利であるが、注意深く利用しないと発見しにくいバグの原因となる。ライブラリ関数は、C言語規格が規定している関数と、OSが規定している関数との間の整合性、棲み分けなどが流動的である。MISRA Cのようないくつかの制約では、C言語規格が規定している関数の妥当性について指摘し、いくつかの関数を利用しないように規定している。
  • ソースコードの記述に使う文字集合はANSI-C:1989(ISO/IEC 9899:1990)ではASCIIを標準としている。他のISO 646でも書けるように、3文字利用したトライグラフと呼ばれる表記法も存在する。その後、ISO/IEC 9899:1995 AMDなどでは多バイト対応の拡張を規定している。さらに、その後トライグラフは複数のコードを利用したシステムでしか利用がないため、より分かり易い2文字によるダイグラフを規定している。

アセンブラとのインタフェース

  • 多くの処理系がインラインアセンブラを搭載しているほか、アセンブラで出力したオブジェクトとのリンクが容易になっている。これにより速度が要求される部分だけをアセンブリ言語で記述するということが容易に行えることが多い。アセンブラとのインタフェースは#pragma asmなどを用いて局所化を図る努力はあるが、コンパイラごとに定義があり、CPUが同一であっても移植性が低い場合がある。

コンパイラ仕様

  • コンパイラの処理が1パスで済む仕様になっている。ANSI-C:1989では宣言のない変数はintを想定することになっていた。ISO/IEC C:1999以降では変数はその使用より前に宣言する必要がある。関数の宣言がないと、戻り値や引数をint型とみなす仕様は、自由な発想を促すプログラミングの視点で好ましいが、型検査・型証明の仕組みが十分にないと不具合の原因になることがある。後継言語では記述によって先読みが必要になりうる。
  • マクロ記述やコンパイル条件の指定などが出来る前処理指令が標準化されている。前処理指令の解釈をするプリプロセッサを持っている。プリプロセッサ(preprocessor)は、その名の通りコンパイル処理の前に自動的に実行される。コンパイラの機能として、プリプロセッサを通しただけの段階のソースコードを出力可能になっているものがある。前処理の結果を検査することで、設計者の意図と前処理の結果のずれがないか確認できる。

処理系の簡素化

ホスト環境やプログラムの内容によっては、以下に対して脆弱性対策を施しても実行速度の低下が無視できる程度であることも多く、欠点とみなされることも少なくない。

配列参照時の自動的な添字のチェックをしない
これを要因とする代表的なバグがバッファオーバーフロー(固定長のバッファをはみだして上書きが行われてしまう)である。標準ライブラリにはバッファオーバーフローを考慮していない関数があり、かつ多用されがちなため、しばしば脆弱性の原因となる。また、プログラムにより制御する事で可変長配列を可能にしている。
文字列を格納するための特別な型が存在しない
文字列にはchar型の配列を利用する。言語仕様上に特別な扱いはないが、ヌル文字\0)を終端とする文字列表現を使い、その操作をする標準ライブラリ関数がある。これは実質的にメモリ領域のポインタアクセスそのもので、固定長バッファに対して、それより長い可変長の文字列を書き込んでしまうことがあり、バッファオーバーランの元凶の1つとなっている。後継言語では文字列処理を特に強化している場合が多い。
自動変数の自動的な初期化をしない
自動変数(静的でないローカル変数)は変数の中でも最も頻繁に用いられる。初期化されていない変数を参照した場合、値は不定となるが、不定な値へのアクセスは未定義の動作英語版であるので、コンパイラ最適化の過程で想定しない形に改変することもある[4]。変数宣言・初期化の仕様による制限から、変数宣言の時点で初期化せず後で代入することで初期化に代えることが日常的で、誤って不定の値の変数を読み出すバグを作り込みやすい。なお自動変数の自動とは変数の領域の確保と開放が自動であるという意味であり、自動的に初期化されるという意味ではない。

その他

  • 文字の大文字・小文字を区別する。
  • 入出力を含めほとんどの機能が、C言語自身で書かれたライブラリによって提供される。このことは、C言語の機種依存性が低く、入出力関係ライブラリをのぞいた部分は移植性(ポータビリティ)が高いことを意味する[要出典]。さまざまな機種があるUNIXの世界でC言語が普及した理由のひとつである。
  • プログラムの実行に必要とするハードウェア資源が、アセンブラよりは多いが他の高級言語より少なくてすむため、現在さまざまな電化製品などの組み込みシステムでも使用されている。
  • 組み込み向けの場合は、プログラミング言語として、アセンブラ以外ではCとC++しか用意されていないことがある。その場合、他のプログラミング言語は、CやC++で書かれた処理系が存在すればコンパイルすることにより利用可能となることもあるが、メモリ制約などで動作しないことがある。

コード例

C言語のHello worldプログラムには、ホスト環境を前提とするか、フリースタンディング環境を前提とするかで、方向性が異なる。入門書によって趣が異なるいくらかの方向性が存在する。ホスト環境を前提とする場合には、標準入出力の利用により、動作をすぐに確かめることができる。標準Cライブラリprintf関数 (ヘッダーファイルstdio.hにて宣言) を利用したものを例示する場合、以下のようなものがある。

#include <stdio.h>

int main(void)
{
    printf("Hello, world!\n");
    return 0;
}

ここでサンプルソース中の「\n」は改行を表す。なお、printf 関数は変数や書式化された文字列などが表示できる比較的高機能な出力関数である。C言語として可変引数である特殊なmainとprintfを使っていることにより、C言語の関数プログラミングに対する誤解を生む原因にもなっている。

主な制御構造

主な標準ライブラリ関数

歴史

誕生

C言語は、AT&Tベル研究所のケン・トンプソンが開発したB言語の改良として誕生した(#外部リンクの「The Development of the C Language」参照)。

1973年、トンプソンとUNIXの開発を行っていたデニス・リッチーはB言語を改良し、実行可能な機械語を直接生成するC言語のコンパイラを開発した。UNIXは大部分をC言語によって書き換え、C言語のコンパイラ自体も移植性の高い実装のPortable C Compilerに置き換わったこともあり、UNIX上のプログラムはその後にC言語を広く利用するようになった。

UNIX環境とC言語

アセンブラとの親和性が高いために、ハードウェアに密着したコーディングがやりやすかったこと、言語仕様が小さいためコンパイラの開発が楽だったこと、小さな資源で動く実行プログラムを作りやすかったこと、UNIX環境での実績があり、後述の K&R といった解説文書が存在していたことなど、さまざまな要因からC言語は業務開発や情報処理研究での利用者を増やしていった。特にメーカー間でオペレーティングシステムやCPUなどのアーキテクチャが違う UNIX環境では再移植の必要性がしばしば生じて、プログラムをC言語で書いてソースレベル互換[5]を確保することが標準となった。

PCとC言語

1980年代に普及し始めたパーソナルコンピュータ(PC)は当初、8ビットCPUでROM-BASICを搭載していたものも多く、BASICが普及していたが、1980年代後半以降、16ビットCPUを採用しメモリも増えた(ROM-BASIC 非搭載の)PCが主流になりだすと、2万円前後の安価なコンパイラが存在したこともあり、ユーザーが急増した。8ビットや8086系のPCへの移植は、ポインタなどに制限や拡張を加えることで解決していた。

現在のC言語

1990年代中盤以降は、最初に学ぶプログラミング言語としても主流となった。また、90年代中盤にはゲーム専用機(ゲームコンソール)の性能向上とプログラムの大規模化、マルチプラットフォーム展開を受け、開発言語がアセンブラからC言語に移行した。GUI環境の普及とオブジェクト指向の普及により JavaObjective-CC++PHPVisual Basic、などの言語の利用者も増加したため、広く利用されるプログラミング言語の数は増加傾向にある。現在でもJava, C#, C++などC言語派生の後発言語を含めて、C言語は比較的移植性に優れた言語であり、業務用開発やフリーソフトウェア開発、C++などの実装が困難な組み込みなどの小規模のシステムで、幅広く利用されている。

C言語の規格

K&R

リッチーカーニハンの共著である「The C Programming Language[6]1978年を出版。その後標準ができるまで実質的なC言語の標準として参照。C言語は発展可能な言語で、この本の記述も発展の可能性のある部分は厳密な記述をしておらず、曖昧な部分が存在していた。C言語が普及するとともに、互換性のない処理系が数多く誕生した。これはプログラミング言語でしばしば起こる現象であり、C言語固有の現象ではない。

C89/C90

そこで、ISO/IEC JTC1とANSIは協同でC言語の規格の標準化を進め、1989年12月にANSI

ANSI X3.159-1989, American National Standard for Information Systems -Programming Language-Cを、1990年12月にISOがINTERNATIONAL STANDARD ISO/IEC 9899 : 1990(E) Programming Languages-Cを発行した。ISO/IEC規格のほうが章立てを追加しており、その後ANSIもISO/IEC規格にならって章立てを追加した。それぞれC89 (ANSI C89) 及びISO/IEC C90という通称で呼ぶことがある。

日本では、これを翻訳したものを日本工業規格『JIS X3010-1993 プログラム言語C』として、1993年10月に制定した。

最大の特徴は、C++と同様の関数プロトタイプ[7]を導入して引数の型チェックを強化したことと、voidenumなどの新しい型を導入したことである。一方、処理系に依存するとするに留めた部分も幾つかある(int型のビット幅、char型の符号、ビットフィールドエンディアン、シフト演算の挙動、構造体などへのパディング等)。

16ビット/32ビットCPUの両方に対応できるようにするため、定義しないことを決めている未定義、定義したもののどれにするかを決めていない未規定、処理系ごとに決めて文書化する処理系定義など、CPUとの相性による有利不利が生じないような規定になっている 型の大きさは16ビット/32ビットCPUの両方に対応できるように決めている。バイト数はsizeof演算子で取得し、最大最小値はlimits.hで参照することとしている。多くの処理系ではchar型は8ビット、short型は16ビットである。intlongはCPUのレジスタの幅などによって決めている。またAPIなどの呼び出しには、ヘッダでBYTEWORDなどとtypedefで定義した型を使用して回避することがある。char型以外で符号を明示しない場合はsigned(符号付き)にするかどうかも処理系。

規格上には、BCPL・C++タイプの一行コメント(「//…」)は無いが、オプションで対応した処理系も多く、gccやClangはGNU拡張-std=gnu89でサポートしている。

GNU Cコンパイラ や Clang では、-std=c89(または-ansiもしくは-std=c90)をつけることにより、GNU拡張を使わないC89規格に準拠したコンパイルを行うことができる[8]。加えて、-pedanticをつければ診断結果が出る。商用のコンパイラではWatcom Cコンパイラが規格適合の比率が高いと言われていた。現在Open Watcomとして公開している。

C89には、下記の追加の訂正と追加を行った。

  • ISO/IEC 9899/COR1:1994
  • ISO/IEC 9899/AMD1:1995 - 英語圏での利用を想定して制定したC89に対して、国際化のためワイド文字版ライブラリを追加した Amendment11995年に発行された。
  • ISO/IEC 9899/COR2:1996

C99

1999年12月1日に、ISO/IEC JTC1 SC22 WG14 で規格の改定を行い、C++の機能のいくつかを取り込むことを含め機能を拡張しISO/IEC 9899:1999(E) Programming Language--C (Second Edition)を制定した。この版のC言語の規格を、通称としてC99と呼ぶ。Intel C++ CompilerはC99に完全準拠していると公称している。GNU Cコンパイラ(gcc)はC99にほとんど対応しているが一部未対応部分も残っている[9]

日本では、日本工業規格 JIS X 3010:2003「プログラム言語C」がある。

主な追加機能:

  • 変数宣言がブロックの先頭でなくても良くなった。
  • ブール代数を扱うための_Bool型が予約語に追加され、標準ライブラリとしてstdbool.hを追加した。
  • 複素数を扱うための_Complex型や_Imaginary型を予約語に追加し、標準ライブラリとして、complex.hを追加した。
  • 64ビット整数値を保持できる long long int型の追加。
  • //による1行コメント。
  • インライン関数(inlineキーワード)。
  • 可変長配列alloca関数の代替)[10]

C99は下記の訂正がある。

  • ISO/IEC 9899:1999 Cor. 1:2001(E)
  • ISO/IEC 9899:1999 Cor. 2:2004(E)
  • ISO/IEC 9899:1999 Cor. 3:2007(E)

C11

2011年12月8日に改定されたISO/IEC 9899:2011(通称 C11)が現在の最新規格である。gccやClangなどが部分的に対応している。改定による変更・追加・削除機能の一部を以下に記述する。

C11はUnicode文字列(UTF-32UTF-16UTF-8の各符号化方式)に標準で対応している。そのほか、type-generic式、C++と同様の無名構造体・無名共用体、排他的アクセスによるファイルオープン方法、quick_exitなどのいくつかの標準関数などを追加した。

また、_Noreturn関数指示子を追加した。_Noreturnは従来各処理系毎に独自に追加していた(たとえばgccでは__attribute__((__noreturn__)))ものを共通化したもので、「呼び出し元に戻ることがない」という特殊な関数についてその特性を示すためにある。return文を持たない関数という意味ではなく(規格ではreturn文を持たなくとも、関数の最後の文の実行が終われば制御は呼び出し元に戻る)、この指示が意味するものは、当該の関数、ないしその内部から呼び出している関数の実行中に、必ず_exitexecveを実行したり、例外などで終了する、あるいは、longjmpによる大域ジャンプで抜け出す[11]継続渡しスタイル変換されたコードである、などのために、絶対に制御が呼び出し元に戻らない、という関数を指示するためにある。そのような関数は、スタックに戻りアドレスを積む通常の呼び出しではなく、スタックを消費しないジャンプによって実行できる。

アラインメント機能、_Atomic型やC言語ネイティブの原始的なスレッド機能などを省略可能な機能として規格に組み込んだ。また、C99では規格上必須要件とされていた機能のうち、複素数型と可変長配列を省略可能なものに変更した。これらの省略可能な機能はC11規格合致の必須要件ではないので、仮に完全に規格合致の処理系であっても、対応していないかもしれない。C11規格では、省略可能な機能のうちコンパイラがどれを提供しているかを判別するために利用できる、テスト用のマクロを用意している。

これにより、gets関数は廃止されている。

主なC言語処理系

gcc、clang、Visual C++、C++Builderなど著名な4つがC言語とC++を一つの処理系で対応している。C言語とC++の共通部分を明確にし、二つの言語の違いに矛盾が生じないようにすることが課題になっている。

Linux、Windows、UNIX用

C++ Builder
Windows用のx86用C言語・C++のコンパイラ。RAD。前身は DOSWindows用の Borland C/C++。さらに前身としてTurbo C/C++がある。
clang
LLVMをバックエンドとして用いるオープンソースのC言語・C++・Objective-Cコンパイラ。多数のCPUに対応。
GNUコンパイラコレクション(GCC)
C/C++以外の言語もサポートし、多数のCPUやオペレーティングシステムに対応、組み込み向けも含む多様な開発に広く使われるオープンソースのコンパイラ。
Microsoft Visual C++
Windows系プラットフォーム用のC言語・C++コンパイラ。ANSI C準拠(バージョン2013にてC99ライブラリをほぼ実装したが、規格はサポートされていない)。x86・x64が主だが Xbox 360Windows CE等向けに PowerPCARMMIPSItanium等に対応した版もある。前身としてMS-DOSWindows用のMicrosoft C Compilerがある。またその廉価版としてQuick Cがあった[12]
Intel C++ Compiler
インテル製のx86・x64用のC言語・C++コンパイラ。WindowsLinuxmacOS向けがある。gcc互換。
Open Watcom C/C++
WindowsLinuxOS/2MS-DOSDOSエクステンダを対象とするx86用C言語・C++コンパイラ。商用だったWatcom C/C++がオープンソース化したもの。
Portable C Compiler
gccが普及する以前のUNIXにおける標準的C言語コンパイラ。現在はオープンソース
Digital Mars C/C++
WindowsMS-DOSDOSエクステンダを対象とする x86用のC言語・C++コンパイラ。無料版もある。ウォルター・ブライト作でDatalight CZorland CZortech C/C++Symantec C/C++と変遷している。

組み込み用、8ビット・16ビット・32ビット・64ビットCPU用(クロスコンパイラ)

GreenHILS C/C++
組み込み向けのC言語・C++コンパイラ。 Windows用・Solaris用・Linux用があり、HP/UX用がver4ではあった。
CodeWarrior C/C++
組み込み向けやゲーム機開発向けのC言語・C++コンパイラ。Classic Mac OS用として発祥、かってはWindows用・BeOS用・Palm用もあった。
ARM C/C++
ARM CPU用C言語・C++コンパイラ。
IAR C/C++
新旧の組み込み向けCPU各種を広くカバーする。現在は統合開発環境EW・SWに移行。ARM CPU用C言語・C++コンパイラが著名。ARMをコアにした各社のCPUに対応している。
High C
元はx86向けでPC/AT互換機用だが80386のネイティブモードに対応したためFM TOWNSでも標準開発環境、「High C 386」として使用された。現在は各社RISC向け。
BDS-C
CP/M(8080・Z80)用のサブセット(整数のみ)のK&R系のC言語コンパイラ。現在はパブリックドメインソフトウェア
Hitech-C
Z80PICなど。
Lattice C
1980年代に、日本で高い普及率を見せたコンパイラ。解説書も多く出版されていた。日本での発売はライフボート。初期版はマイクロソフトCコンパイラ1.0として発売された。商用利用のできない個人向けの「personal」版も販売されており、これの価格は19,800円であった[13][14]
LSI C
8080Z80用のLSI C-80(セルフ版・クロス版。現在はクロス版のみ)と、8086用のLSI C-86がある。8086では機能限定(スモールモデルのプログラムしか開発できず、デバッガがない)の「試食版」がフリーソフトで公開され、広く使われた。

関連する主なプログラミング言語

先祖

ALGOL
ヨーロッパ生まれのアルゴリズム記述言語。PascalやC言語などに影響を与えたとされる。
BCPL
MULTICSで作成された高級言語。
B言語
初期のUNIXで作成されたインタプリタ方式の高級言語。BCPLを元に作られ、Cの原型となった。

継承・拡張・サブセット

C++
C言語を拡張してオブジェクト指向化したもの。当初はC言語のスーパーセットだったが、現在は細かい部分において非互換仕様が増えている。
Java
C++よりも言語文法レベルでオブジェクト指向を重視した言語。バッファオーバーランなどの危険性が高いポインタといったローレベルな要素を言語文法から排除している。仮想マシン(Java VM, JVM)上で動作する。
C#
マイクロソフト.NET Framework向けに開発した言語。文法はC言語およびC++に近い書式を持ち、Javaと似ている部分も存在するが、機能的にはDelphiがベースとなっている。
Cg
C言語をGPU上での3次元コンピュータグラフィックス処理用に特化させたもの(シェーダー言語、シェーディング言語)。NVIDIAによって開発された。
Cyclone
C言語の上位互換セキュア実装。ポインタの扱いを厳格化して安全面に配慮して拡張したもの。その他リージョンベースメモリ管理システム、正規表現、タグ付共用体などを追加している。
Objective-C
C言語を拡張してオブジェクト指向化したもの。C言語に Smalltalk のオブジェクトシステムを取り付けたような設計で、互換性は保たれている。C言語からの拡張部分がC++と干渉しないため、C++と混在した記述が可能。
SystemC
ハードウェア記述言語向けに拡張したもの。書式はC++。EEE 1666-2005。ISO 8866:1991。
Impulse_C
ハードウェア記述言語向けに拡張したもの。書式はC。
Unified Parallel C
並列計算向けにC99を拡張して作られた言語。

その他にも、OpenGLシェーダー言語であるGLSLDirectXDirect3D)シェーダー言語であるHLSLOpenCLカーネル記述言語であるOpenCL-Cなど、C言語の文法的特徴を取り入れた派生言語やDSLが多数存在する。

参考文献

2015年現在、初心者向けのイラスト入り入門書やサブルーチンのサンプル集の他、組み込み機器の制御や科学技術計算など目的を特化した専門書なども多数ある。便利な機能の説明はあっても、学習者の水準や目的にあった本を見つけるのは必ずしも容易でない。オープンソースのCコンパイラ、OSも大規模なものがあり、直接読み始めるのは困難になっている。オープンソースのOSの小規模なものから始めるとよい。

プログラミング言語C
ブライアン・カーニハン、デニス・リッチー 共著、石田晴久訳、共立出版
K&R」として知られている「The C Programming Language」の邦訳。入門書ではなく、特にプログラミングそのものが初めてという読者には不適である。初版と2版があり、2版が現在も時折増刷している(邦訳では事情により、原書2版を基とした版には旧版と改訂新版がある。旧版は装丁が緑地で新版は白地である)。標準の制定以前は本書初版を言語仕様の参考文献として扱っていたが、現在は規格表を参照すべきであり、本書の記述は参考にとどめるべきである。
Cプログラムの落とし穴
コーニグ、中村明訳、新紀元社
Cプログラミングで嵌まるところを指摘している。MISRA Cでも参考文献になっている。
Cパズルブック
アラン・R. フューアー、田中和明訳、カットシステム
Cプログラミングの芸当を示し、読み書きを推奨しない例を示している。

脚注

  1. ^ 他の言語、例えば、BASICPascalではプログラム開始直後に実行するプログラム要素はサブルーチンや手続きや関数ではない。
  2. ^ ISO/IEC 14882:2003 3.6.1 「The function main shall not be used within a program.
  3. ^ JIS X 3014:2003 3.6.1 「関数mainは、プログラムの中で挙用してはならない。」
  4. ^ EXP33-C. 未初期化のメモリを参照しない JPCERT/CC、2014年3月25日(2014年8月22日閲覧)。
  5. ^ http://japan.zdnet.com/glossary/exp/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%AB%E4%BA%92%E6%8F%9B/?s=4
  6. ^ K&R」という通称がある
  7. ^ C89においては関数プロトタイプは必須ではない。
  8. ^ C89規格に準拠しないソースコードをGNU Cコンパイラでコンパイル失敗させるには、
    gcc -ansi -pedantic -fstrict-aliasing -Wall -Wextra -Wmissing-declarations -Werror test.c
    とすれば良い(→エイリアシング)。
  9. ^ Status of C99 features in GCC
  10. ^ 6.19 Arrays of Variable Length
  11. ^ setjmp.hを参照。
  12. ^ Microsoft Releases C Program Wares, Provides Rebates. InfoWorld: p. 29. (1987年11月9日). http://books.google.pl/books?id=Sj0EAAAAMBAJ 
  13. ^ 脇英世(監修)、1987、『パソコンの常識事典』、日本実業出版社 - 普及率、解説書の多さについて。
  14. ^ 長沢英夫(編)、1988、『パソコンベストソフトカタログ』、JICC出版局 - Personal版、解説書の多さについて。

外部リンク


C++

(C言語 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/02 18:26 UTC 版)

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C++
パラダイム マルチパラダイム手続き型プログラミングデータ抽象オブジェクト指向プログラミングジェネリックプログラミングの組み合わせ)
登場時期 1983年
設計者 ビャーネ・ストロヴストルップ
最新リリース ISO/IEC 14882:2017/ 2017年12月1日(5か月前) (2017-12-01
評価版リリース ISO/IEC 14882:2017
型付け nominative, 安全でない強い静的型付け
主な処理系 GCC
Clang
Microsoft Visual C++
Intel C++ Compiler
C++ Builder
方言 C++98
C++03
C++TR1
C++11
C++14
影響を受けた言語 C言語SimulaAda
影響を与えた言語 JavaC#D言語PHP
ウェブサイト isocpp.org
拡張子 .cc, .cpp, cxx; .h, .hpp
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C++シープラスプラス)は、汎用プログラミング言語の一つである。日本語では略してシープラプラシープラなどとも呼ばれる。

概要

1983年にベル研究所のコンピュータ科学者のビャーネ・ストロヴストルップが、C言語の拡張として開発した。当時の名前は「C with Classes」(クラス付きのC言語)だった。拡張はクラスの追加に始まり、仮想関数多重定義多重継承テンプレート例外処理といった機能が続いていった。

標準規格化がISOIEC共同で行われており、現在最新のバージョンは、2017年に制定されたISO/IEC 14882:2017、通称「C++17」である。

表現力と効率性の向上のために、手続き型プログラミングデータ抽象オブジェクト指向プログラミングジェネリックプログラミングの複数のプログラミングパラダイムを組み合わせている[1]アセンブリ言語以外の低水準言語を必要としない、使わない機能に時間的・空間的費用を要しないことが、言語設計の重要な原則となっている[2][3]。また、静的な型システムを持つ。

歴史

ストロヴストルップはプログラミング言語C with Classesの開発を1979年に開始した。彼は大規模なソフトウェアの開発に有用な特徴をSimulaが備えていることに気がついたが、Simulaは実行速度が遅く実用的ではなかった。一方でBCPLは実行速度こそ速かったものの、大規模なソフトウェア開発を念頭に置いた場合にあまりにも低級だった。

これらの事情を鑑みて、ストロヴストルップは当時既に汎用的な言語だったC言語にSimulaの特徴を取り入れることを試みた。この取り組みにあたってはALGOL68AdaCLUML等の言語の影響も受けている。最初はクラスと派生クラス、型検査機構の強化、インライン関数、デフォルト引数の機能を、Cfrontを介してC言語に追加した。1985年10月に最初の商用リリースがなされた[4]

1983年にはC with ClassesからC++に名称を変更した。この際に、仮想関数と、関数と演算子の多重定義参照型、const型、ユーザー制御可能な自由領域メモリ制御、型検査機構の改良、BCPL形式(「//」による)の行単位のコメントアウトなどの機能が追加された。1985年には『The C++ Programming Language』の初版が出版された(邦訳『プログラミング言語C++』1988年))。この時点では公式な標準が策定されていなかったために、この本が事実上のリファレンスとなった。1989年C++のヴァージョン2.0として、多重継承抽象クラス、静的メンバ関数constメンバ関数、protectedメンバ等の機能が追加されたものがリリースされた。1990年に『The Annotated C++ Reference Manual (ARM)』[5](邦訳『注解C++リファレンスマニュアル』[6])が出版され、将来の標準化の土台となるものを提供した。後に追加された機能にはテンプレート例外処理名前空間、新形式のキャストブール型が含まれた。

ARMが事実上の標準として使われた時代が続いたが、標準化が進んだ。C++言語の最初の標準は1998年にISO/IEC 14882:1998として承認された。2003年の改訂版を経て、2011年にメジャーアップデートとして制定されたのがISO/IEC 14882:2011、通称「C++11」である。このバージョンは、元々、非公式に「C++0x」と呼ばれていた。2000年代中に制定され、正式に「C++09」と呼称されることを見越した仮称だったが、2000年代中には実現しなかった。2011年8月10日まで続いた最終国際投票で C++0x は全会一致で承認された。これにより C++0x と呼ばれてきた C++ の次期改正案はついに国際標準になり、C++11と呼べるようになった。また、2014年にはISO/IEC 14882:2014、通称「C++14」が策定された。2018年現在の最新バージョンは2017年に策定されたISO/IEC 14882:2017、通称「C++17」である。2020年にはISO/IEC 14882:2020、「C++20」が策定される予定である。

C++言語の進化に伴い、標準ライブラリもまた進化していった。C++標準ライブラリに最初に追加されたのは、従来のC言語の printf()scanf() といった関数を置き換えるストリームI/Oライブラリである。また、C++98における標準ライブラリへの追加で最も重要なものはStandard Template Library (STL)である。C++11では、正規表現による検索・置換や複数スレッドでの同時実行、ハッシュテーブル・ハッシュセットの追加などさらなる拡充が続いている。

標準規格

規格制定日 C++ 標準規格 非公式名称
1998年9月1日 ISO/IEC 14882:1998[7] C++98
2003年10月16日 ISO/IEC 14882:2003[8] C++03
2007年11月15日 ISO/IEC TR 19768:2007[9] C++TR1
2011年9月1日 ISO/IEC 14882:2011[10] C++11
2014年12月15日 ISO/IEC 14882:2014[11] C++14
2017年12月 ISO/IEC 14882:2017[12] C++17
2020年予定 C++20

長年にわたる作業の後、ANSIとISOの合同委員会はC++言語を1998年に標準化した(ISO/IEC 14882:1998)。1998年の標準の公式なリリースから数年間に渡って委員会は不具合の報告を続け、2003年に訂正版を出版した。2003年12月に制定された日本工業規格JIS X 3014:2003(プログラム言語 C++)は、ISO/IEC 14882:2003(E)の日本語への翻訳である。

2007年11月15日に『C++ Technical Report 1』 (TR1)というテクニカルレポートがリリースされた。これは標準の公式な一部ではないが、次のバージョンのC++に含まれると期待される、標準ライブラリへの数多くの拡張を与えた。TR1の内容は、多少の修正を加えてC++11に取り込まれている。

2011年9月1日、C++98以来初の大きな改訂となるISO/IEC 14882:2011が発行された。

2014年8月18日、ISO/IEC 14882:2014(C++14)が投票で承認され[13]、2014年12月15日、公式に出版された。

2017年12月、ISO/IEC 14882:2017(C++17)が公式に発行された。

現在、C++20の仕様策定が進められている。

将来

C++に対しては、今もなお要望が絶えない。特にBoostはC++の方向性の決定に大きく貢献し、さらにC++標準化委員会へ改良すべき点などを意見している。現在はマルチパラダイムプログラミングをより自然に行えるようにすることに力が注がれており、たとえばBoostでは、C++の関数型プログラミングメタプログラミングの可能性を模索している。

C++11と呼ばれている新しいバージョンのC++標準ではこれらの一部が取り込まれ、今後のC++でもさらなる追加が行われると見られている。

C++という名称

この名称はRick Mascittiの功績で、最初に使用されたのは1983年の12月である。初期の研究期間では、開発中の言語は「C with Classes」と呼ばれていた。最終名は、変数の値を一つ加算する、C言語の++インクリメント)演算子からの派生である。また一般的な命名規則での「+」の使用は、機能強化されたコンピュータプログラムを意味する。ストロヴストルップによれば「この名前は、C言語からの変更の革新的な本質を示している」ということである。C+は、より初期の無関係なプログラミング言語の名前である。

ストロヴストルップは著書『The C++ Programming Language』の前文で名前の起源を語り、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』の付録から「C++」が連想されるかもしれないと付け加えている。新語法という架空の言語の解説に宛てられた3つの章の中に、科学技術に関する専門用語とジャーゴンの解説に宛てられた「C vocabulary」という章がある。新語法で「ダブルプラス」は最上級の修飾語である。ゆえに新語法で「C++」は「最も極端な専門用語またはジャーゴン」という意味になるだろう。

1992年、Rick Mascittiは名前について非公式に質問されると、彼はおふざけのつもりで命名したという旨の回答をした。彼はこの言語の正式な名称になるとは夢にも思っていなかった。

哲学

ビャーネ・ストロヴストルップは著書『C++の設計と進化(1994)』でC++を設計する際に用いたルールを述べている。

  • C++はCと同等の実行効率と移植性を持つ静的に型付けされた汎用言語である。
  • C++は直接的かつ包括的に複数のプログラミングスタイル(手続き型プログラミング抽象化オブジェクト指向ジェネリックプログラミング)をサポートする。
  • C++はもしプログラマが間違っている可能性があったとしてもプログラマに選択の余地を与える。
  • C++は可能な限りC言語との互換性を持ち、C言語からスムーズに移行できる。
  • C++はプラットフォームに固有な機能や汎用的でない機能の実装を避ける。
  • C++は利用しない機能についてはオーバーヘッドが生じない(ゼロオーバーヘッドの原則)。
  • C++は高級な実行環境を必要としない。

C++のコンパイラがどのようにコードを出力しメモリのレイアウトを決めるのかということについては『Inside the C++ Object Model』(Lippman, 1996)に記載されている。ただしコンパイラが出力するコードの仕様はコンパイラ制作者の裁量に任されている。

標準ライブラリ

1998年に施行されたANSI/ISO C++ 規格は言語仕様とライブラリの2つのパートで構成される。ライブラリ規格の大半はStandard Template Library (STL)とC言語の標準ライブラリの改良版についての内容である。標準規格以外にも様々なライブラリが数多く存在し、リンカを使用することにより、C言語FORTRANPascalBASICのような言語を用いて作成されたライブラリを利用できる。規格外のライブラリが利用できるかどうかはコンパイラに依存する。

C++標準ライブラリはC++向けに若干の最適化が施されたC言語標準ライブラリを含んでいる。C++標準ライブラリの大部分はSTLである。 コンテナ可変長配列リストなど)、コンテナを配列のように扱えるようにするイテレータ、検索やソートを行うアルゴリズムといった有用なツールが提供されている。さらにmapmultimapのような連想配列や、setmultisetのようなソート済みコンテナも提供され、これらは全てインターフェイスに互換性がある。テンプレートを用いることにより、あらゆるコンテナ(またはイテレータで定義したシーケンス)に適用できる汎用的なアルゴリズムを記述できる。C言語と同様にライブラリの機能には#include ディレクティブを使ってヘッダファイルを読み込むことによってアクセスする。C++には69本の標準ヘッダファイルがあるが、このうち19本については非推奨となっている。

STLは標準規格に採用される前は、ヒューレット・パッカードの(一時はシリコングラフィックスの)商用ライブラリだった。STLは標準規格の単なる一部分に過ぎず規格書にSTLという表記は見られないが、入出力ストリーム、国際化、デバッグ機能、C言語標準ライブラリ等の、STL以外の部分と区別するために、今でも多くの人がSTLという用語を使っている。

大半のC++コンパイラはSTLを含むC++標準ライブラリの実装を提供している。STLPortのようなコンパイラ非依存のSTLも存在する。様々な目的でC++標準ライブラリを独自に実装しているプロジェクトは他にもある。

C++の標準ライブラリは大きく次のように分けられる。多種多様な実行環境が存在することを考慮して、GUIに関するライブラリは標準に含まれていない。

外部ライブラリ

以下に、C++で広く使われていると思われるライブラリを挙げる。

Boost
次期C++標準とも言われる様々なライブラリの集合。正規表現を扱うBoost.Regexや無名関数(ラムダ計算)を簡潔に記述できるBoost Lambda Libraryなどがある。現標準であるC++11や次期標準であるC++14でも、Boostに存在するライブラリが標準ライブラリに採用されたり、標準ライブラリとして提案された項目がBoostで先行して実装されたりしている。これにより、実際に実装・使用することでの知見が得られ、標準ライブラリとして採用される際に活かされている。
Apache Xerces
C++での主要XMLパーサの一つ。Java版も存在する。
CppUnit
C++でのユニットテストフレームワーク。 クラス毎の動作確認に威力を発揮する。

特徴

C言語に、オブジェクト指向プログラミングをはじめとする様々なプログラミングパラダイムをサポートするための改良が加えられたものといえる。ただし、他のプログラミング言語と違い、旧来のCと同様に手続き型言語としても扱えるという特徴がある。このことから、C++をbetter Cというふうに呼ぶことがある。すなわち、基本的にC言語に対して上位互換性がある。初期のC++はCへのトランスレータとして実装され、C++プログラムを一旦Cプログラムに変換してからコンパイルしていた。

ただし、C++という名称が定まった当初の時期から、C言語とC++との間には厳密な互換性はない[14][15]。当時、Cとの互換性について議論の末、「C++とANSI Cの間には不正当な非互換性はない」という合意が形成されることとなった。そのため、正当な非互換性を巡って多くの議論が発生した[16]。ただし、まだANSIによるC言語の標準規格も策定途中の時期である。

その後、先祖であるC言語のANSIによる標準規格制定時には、関数のプロトタイプ宣言やconst修飾など、C++の機能がC言語に取り入れられることにもなった。C99の出現により、//コメントなどのC++で使われていた便利な機能が加わってCとC++の互換性が高まる一方、別々に審議し、別の時期に発行していることと、開発対象が必ずしも同じでないために利害関係者が異なることによる違いもある[要出典]​。

次のような多種多様な機能を持っており、言語仕様は大変複雑である。

ここから、よりオブジェクト指向を強化し、「なんでもあり」ではない代わりに分かりやすくスマートな設計を目指した新たな言語(JavaD言語など)が作られることとなった。

Hello, World!

C++はC言語およびそのプリプロセッサの構文をほぼ継承している。以下のサンプルはビャーネ・ストロヴストルップの書籍「The C++ Programming Language, 4th Edition」(ISBN 978-0321563842) の「2.2.1 Hello, World!」に記載されている標準C++ライブラリのストリーム機能を用いて標準出力に出力するHello worldプログラムである[17][18]

#include <iostream>

int main()
{
     std::cout << "Hello, World!\n";
}

書籍でも明記されているが、main()関数で意図的に返り値を返さない手法が使用されている。

演算子と演算子のオーバーロード

C++には四則演算、ビット演算、参照、比較、論理演算などの30を超える演算子がある。メンバーアクセス演算子(..*)のような一部の例外はあるが、大半の演算子はユーザー定義によるオーバーロードが可能である。オーバーロード可能な演算子が豊富に揃えられているためC++を一種のドメイン固有言語として利用できる。またオーバーロード可能な演算子はスマートポインタのような先進的な実装テクニックに欠かせないものとなっている。演算子をオーバーロードしても演算の優先順位は変化せず、また演算子のオペランドの数も変化しない。ただし指定したオペランドが無視される可能性はある。

テンプレート

C++には、ジェネリックプログラミングを実現する機能としてテンプレートが存在する。テンプレートにできる対象は、関数とクラスである。テンプレートは型、コンパイル時定数またはその他のテンプレートによってパラメタライズできる。テンプレートはコンパイル時にインスタンス化(実体化・具現化などとも)される。コンパイラは関数やクラスをインスタンス化するためにテンプレート仮引数を特定の値に置き換える。テンプレートはジェネリックプログラミングテンプレートメタプログラミング、コード最適化などのために利用される強力なツールであるが、一定のコストを伴う。各テンプレートのインスタンスはテンプレート仮引数毎にテンプレートコードのコピーを生成するためコードサイズが肥大化する。コンパイル時に型の情報を削除して単一のテンプレートインスタンスを生成するランタイム型のジェネリクスを実装したJavaなどの言語とは対照的である。

テンプレートとマクロはいずれもコンパイル時に処理される言語機能であり条件に基づいたコンパイルが行われるが、テンプレートは字句の置き換えに限定されない。テンプレートはC++の構文と型を解析し、厳密な型チェックに基づいた高度なプログラムの流れの制御ができる。マクロは条件コンパイルに利用できるが、新しい型の生成、再帰的定義、型の評価などは行えないため、コンパイル前のテキストの置き換えや追加・削除といった用途に限定される。つまりマクロは事前に定義されたシンボルに基づいてコンパイルの流れを制御できるものの、テンプレートとは異なり独立して新しいシンボルを生成することはできない。テンプレートは静的な多態(下記参照)とジェネリックプログラミングのためのツールである。

C++のテンプレートはコンパイル時におけるチューリング完全なメカニズムである。これはテンプレートメタプログラムを用いて実行する前にコンピュータが計算可能なあらゆる処理を表現できることを意味している。

概略すれば、テンプレートはインスタンス化に必要な引数を明確にしなくても記述できるコンパイル時にパラメタライズされる関数またはクラスである。インスタンス化した結果は、テンプレート仮引数に指定した型に特化した形で記述されたコードと全く等価になる。これによりテンプレートは、汎用的かつおおまかに記述された関数及びクラス(テンプレート)と特定の型に特化した実装(インスタンス化されたテンプレート)の依存関係を解消し、パフォーマンスを犠牲にすることなく抽象化できる手段を提供する。

オブジェクト

C++はC言語オブジェクト指向プログラミングをサポートするための改良を加えたものといえる。C++のクラスには、オブジェクト指向言語で一般的な抽象化カプセル化継承多態の4つの機能がある。オブジェクトは実行時に生成されるクラスの実体である。クラスは実行時に生成される様々なオブジェクトのひな形と考えることができる。

なお、C++はSmalltalkなどに見られるメッセージ転送の概念によるオブジェクト指向を採用していない。

カプセル化

カプセル化とは、データ構造を保証し、演算子が意図したとおりに動作し、クラスの利用者が直感的に使い方を理解できるようにするためにデータを隠蔽することである。クラスや関数はC++の基礎的なカプセル化のメカニズムである。クラスのメンバはpublicprotectedprivateのいずれかとして宣言され明示的にカプセル化できる。publicなメンバはどの関数からでもアクセスできる。privateなメンバはクラスのメンバ関数から、またはクラスが明示的にアクセス権を与えたフレンド関数からアクセスできる。protectedなメンバはクラスのメンバおよびフレンド関数に加えてその派生クラスのメンバからもアクセスできる。

オブジェクト指向では原則としてクラスのメンバ変数にアクセスする全ての関数はクラスの中にカプセル化されなければならない。C++ではメンバ関数およびフレンド関数によりこれをサポートするが、強制はされない。プログラマはメンバ変数の一部または全体をpublicとして定義でき、型とは無関係な変数をpublicな要素として定義できる。このことからC++はオブジェクト指向だけでなく、モジュール化のような機能分割のパラダイムもサポートしているといえる。

一般的には、全てのデータprivateまたはprotectedにして、クラスのユーザに必要最小限の関数のみをpublicとして公開することがよい習慣であると考えられている。このようにしてデータの実装の詳細を隠蔽することにより、設計者はインターフェイスを変更することなく後日実装を根本から変更できる [19] [20]

継承

継承を使うと他のクラスの資産を流用できる。基底クラスからの継承はpublicprotectedprivateのいずれかとして宣言する。このアクセス指定子により、派生クラスや全く無関係なクラスが基底クラスのpublicおよびprotectedメンバにアクセスできるかどうかを決定できる。普通はpublic継承のみがいわゆる派生に対応する。残りの二つの継承方法はあまり利用されない。アクセス指定子を省略した場合、構造体public継承になるのに対し、クラスではprivate継承になる。基底クラスをvirtualとして宣言することもできる。これは仮想継承と呼ばれる。仮想継承は基底クラスのオブジェクトが一つだけ存在することを保証するものであり、多重継承の曖昧さの問題を避けることができる。

多重継承はC++の中でもしばしば問題になる機能である。多重継承では複数の基底クラスから一つのクラスを派生できる。これにより継承関係が複雑になる。例えば"FlyingCat"クラスは"Cat"クラスと"FlyingMammal"クラスから派生できる。JavaC#では、基底クラスの数を一つに制限する一方で、複数のインタフェースを継承でき、これにより制約はあるものの多重継承に近い機能を実現できる。インタフェースはクラスと異なりメンバ関数を宣言できるのみであり、関数の実装やメンバ変数は定義できない。JavaとC#のインタフェースや抽象クラスはC++の抽象基底クラスと呼ばれる関数宣言のみを持つクラスに相当する。JavaやC#の継承モデルを好むプログラマは、非抽象クラスからのみクラスを派生させる方法を選択できる。この場合は抽象基底クラスのメンバ関数を必ず明示的に定義しなければならず、またこのクラスを継承することはできない。

多態

多態(ポリモーフィズム)はよく多用されているインターフェイスの機能であり、様々な状況下でオブジェクトに異なる振る舞いをさせることができる。

C++は静的な多態動的な多態の両方をサポートする。コンパイル時に解決される静的な多態は実行時には考慮されないのに対し、ランタイム時に解決される動的な多態はパフォーマンス的に不利である。

静的な多態

関数のオーバーロードは名称が同じ複数の関数を宣言できる機能である。ただし引数は異なっていなければならない。関数は引数の型や数で区別される。同名の関数はコードの文脈によってどの関数が呼ばれるのかが決まる。関数の戻り値の型で区別することはできない。

関数を宣言する際にプログラマはデフォルト引数を指定できる。関数を呼び出すときに引数を省略した場合はデフォルト引数が適用される。関数を呼び出すときに宣言よりも引数の数が少ない場合は、左から右の順で引数の型が比較され、後半部分にデフォルト引数が適用される。たいていの場合は一つの関数にデフォルト引数を指定するよりも引数の数が異なる関数をオーバーロードする方が望ましい。

C++のテンプレートではより洗練された汎用的な多態を実現できる。特にCuriously Recurring Template Patternにより仮想関数のオーバーライドをシミュレートした静的な多態を実装できる。C++のテンプレートは型安全かつ チューリング完全であるため、 テンプレートメタプログラミングによりコンパイラに条件文を再帰的に解決させて実行コードを生成させることにも利用できる。

動的な多態

派生

基底クラスへのポインタ変数及び参照は、正確に型が一致するオブジェクトだけでなく、その派生クラスのオブジェクトを示すことができる。これにより配列やコンテナは複数の型へのポインタを保持できる。ポインタ変数は実行時に値が割り当てられるためこれは実行時の話である。

dynamic_castは基底オブジェクトから派生オブジェクトへの変換を安全に行うための演算子である(派生オブジェクトから基底オブジェクトへの変換ではキャストは必要ない)。この機能は実行時型情報 (RTTI)に依存している。オブジェクトが特定の派生オブジェクトであることがあらかじめわかっている場合はstatic_castでキャストすることもできる。static_castは純粋にコンパイル時に解決されるため動作が速くRTTIを必要としない。

仮想関数

基底クラスの関数を派生クラスでオーバーライドした場合、実際に呼び出される関数はオブジェクトの型によって決定される。派生クラスによってオーバーライドでされるのは引数の数や型が同じ関数である。基底クラスのポインタのみが与えられた場合、コンパイラはオブジェクトの型をコンパイル時に特定できず正しい関数を呼び出せないため、実行時にこれを特定する。これをダイナミックディスパッチと呼ぶ。仮想関数やメソッド[21]により、オブジェクトに割り当てられた実際の型に従って、最上位の派生クラスで実装した関数が呼び出される。一般的なC++コンパイラは仮想関数テーブルを用いる。オブジェクトの型が判明している場合はスコープ解決演算子を利用して仮想関数テーブルを使わないようにバイパスすることもできるが、一般的には実行時に仮想関数の呼び出しを解決するのが普通である。

標準のメンバ関数に加え、オーバーロードした演算子やデストラクタも仮想関数にできる。原則的にはクラスが仮想関数を持つ場合はデストラクタも仮想関数にすべきである。コンストラクタやその延長線上にあるコピーコンストラクタはコンパイルされた時点でオブジェクトの型が確定しないため仮想関数にできない。しかし、派生オブジェクトへのポインタが基底オブジェクトへのポインタとして渡された場合に、そのオブジェクトのコピーを作らなければならない場合は問題が生じる。このような場合はclone()関数(またはそれに準じる物)を仮想関数として作成するのが一般的な解決方法である。clone()は派生クラスのコピーを生成して返す。

= 0を関数宣言の閉じ括弧とセミコロンの間に挿入することによりメンバ関数を純粋仮想関数にできる。純粋仮想関数を持つクラスは純粋仮想クラスと呼ばれ、このクラスからオブジェクトを生成することはできない。このような純粋仮想クラスは基底クラスとしてのみ利用できる。派生クラスは純粋仮称関数を継承するため、派生クラスのオブジェクトを生成したい場合は全ての純粋仮想関数をオーバーライドして実装しなければならない。純粋仮想関数を持つクラスのオブジェクトを生成しようと試みるようなプログラムは行儀が悪い。

テンプレート

型消去と呼ばれるテンプレートを活用して動的な多態性を実現する手法が存在する。この手法はC++の標準ライブラリでもstd::functionstd::shared_ptrの削除子で採用されている。いずれも、コンストラクタや代入演算子で(一定の条件を満たす)任意のオブジェクトを実引数として渡せるようにすることから多態性を実現している。

単一行コメント

かつてC言語とC++との分かりやすい差異として、// で始まり改行で終わる、単一行コメントの有無があった。

単一行コメントはもともと、C言語の祖先にあたるBCPLに含まれていた仕様である。現在のC++のコンパイラの多くがC言語のコンパイラとしても使えるようになっているのと同様に、C言語が生まれて間もない頃は、C言語に加えB言語やBCPLのコンパイルができるコンパイラが用いられていた。それらコンパイラは、C言語のソースであってもBCPLと同様に単一行コメントが使用できるよう独自の拡張がなされていたため、BCPLの単一行コメントに慣れ親しんでいたプログラマ達は、C言語でも単一行コメントを使い続けた。その慣習がC++の誕生時まで生き残っていたため、C++では単一行コメントを「復活」させることになった。

そのためもあって、C言語での仕様外の単一行コメントの使用は半ば常習と化し、現在ではC99によって、C言語でも正式に単一行コメントがサポートされるようになった(//に対応していない古い仕様のCコンパイラでもcppを対応したものに変更することにより使用可能)。

C++ソースコードの処理とパーサ

LALR(1)のような旧式のパースアルゴリズムを用いてC++のパーサを記述することは比較的難しい[22]。その理由の一つはC++の文法がLALRではないことである。このため、コード分析ツールや、高度な修正を行うツール(リファクタリングツールなど)は非常に少ない。この問題を取り扱う方法としてLALR(1)でパースできるように改良されたC++の亜種(SPECS)を利用する方法がある。GLRパーサのようにより強力でシンプルなパーサもあるが処理が遅い。

パースはC++を処理するツールを作成する際の最も難しい問題ではない。このようなツールはコンパイラと同じように識別子の意味を理解しなければならない。従ってC++を処理する実用的なシステムはソースコードをパースするだけでなく、各識別子の定義を正確に適用し(つまりC++の複雑なスコープのルールを正確に取り扱い)、型を正しく特定できなければならない。

いずれにせよC++ソースコード処理ツールが実用的であるためには、GNU GCCVisual C++で使われているような、様々なC++の方言を取り扱えなければならず、適切な分析処理やソース変換やソース出力などが実装できなければならない。GLRのような先進的なパースアルゴリズムとシンボルテーブルを組み合わせてソースコードを変換する方法を利用すればあらゆるC++ツールを開発できる。

互換性

その言語文法の複雑さゆえ、C++規格に準拠したコンパイラを開発するのは一般的に難しい。20世紀末から何年にも渡りC++に部分的に準拠した様々なコンパイラが作られ、テンプレートの部分特殊化などの部分で実装にばらつきがあった。中でも、テンプレートの宣言と実装を分離できるようにするためのexportは問題のキーワードの一つだった。exportを定義したC++98規格がリリースされてから5年後の2003年前半にComeau C/C++が初めてexportを実装した。2004年にBorland C++ Builder Xexportを実装した。これらのコンパイラはいずれもEDGのフロントエンドをベースにしていた。大半のコンパイラで実装されていないexportは多くのC++関連書籍(例えば"Beginning ANSI C++", Ivor Horton著)にサンプルが記されているが、exportが記載されていることによる問題は特に指摘されていない。GCCをはじめとするその他のコンパイラでは全くサポートしていない。Herb SutterはC++の標準規格からexportを削除することを推奨していたが[23]、C++98では最終的にこれを残す決定がなされた[24]。結局、C++11では実装の少なさ・困難さを理由に削除された。

コンパイラ開発者の裁量で決められる範囲を確保するため、C++標準化委員会は名前修飾例外処理などの実装に依存する機能の実装方法を決定しないことに決めた。この決定の問題は、コンパイラが異なるとオブジェクトファイルの互換性が保証されない点である。特定の機種やOSでコンパイラの互換性を持たせ、バイナリレベルでのコード再利用性を高めようとするABI[25]のような非標準の規格もあり、一部のコンパイラではこうした準規格を採用している。

2015年現在のメジャーなC++コンパイラ(gcc,Clang,Intel C++ Compiler,Microsoft Visual C++など)の最新版はC++11規格にほぼ準拠しており、特にClangは2013年4月時点で全機能を実装完了した [26] [27]。ただしマイナーアップデートとなるC++14を含めると、処理系間でのばらつきは依然として存在する。

C言語との互換性

C++は基本的にC言語の上位互換であるが、厳密には異なる[28]。C言語で記述された大半のプログラムはC++でコンパイルできるように簡単に修正できるが、C言語では正当でもC++では不正になる部分や、C++とは動作が異なる部分が若干存在する。

例えば、C言語では汎用ポインタvoid*は他の型へのポインタに暗黙的に変換できるが、C++ではキャスト演算子によって変換を明示する必要がある。またC++ではnewclassといった数多くの新しいキーワードが追加されたが、移植の際に元のC言語のプログラムでそれらが識別子(例えば変数名)として使われていると、問題になる。

C言語の標準規格であるC99やその後継C11ではこうした非互換性の一部が解決されており、//形式のコメントや宣言とコードの混在といったC++の機能がC言語でサポートされている。その一方でC99では、可変長配列、複素数型の組み込み変数、指示初期化子、複合リテラルといった、C++でサポートしていない数多くの新機能が追加された[29]。C99で追加された新機能の一部はC++11に反映され、次期C++1yに対してもC99やC11との互換性を向上される提案が行われている。また、可変長配列や複素数型などのC99に追加された機能の一部はC11でオプションとなった[30]

C++で書かれた関数をC言語で書かれたプログラムから呼び出す、あるいはその逆を行なう場合など、C言語のコードとC++のコードを混在させるためにはCリンケージを利用する必要があり、関数をextern "C"で個別に修飾するか、extern "C" { ... }のブロックの中で宣言しなければならない。また、関数引数や戻り値などのインターフェイスはC言語互換形式に合わせる必要がある。Cリンケージを利用した関数については、C++名前修飾がされず、名前修飾に依存している関数オーバーロード機能は利用できない。

C/C++の相互運用性が確保されていることで、慣れ親しんだC言語標準ライブラリ関数の大半をC++でもそのまま利用し続けることができるということはC++の大きなメリットのひとつである。

主なC++処理系

脚注

[ヘルプ]
  1. ^ 『プログラミング言語C++』第4版、pp.12-13。
  2. ^ 『C++の設計と進化』、pp.152-153。
  3. ^ 『プログラミング言語C++』第4版、p.11。
  4. ^ Bjarne Stroustrup's FAQ - When was C++ invented?” (English). 2006年5月30日閲覧。
  5. ^ Bjarne Stroustrup; Margaret A. Ellis (1990). The Annotated C++ Reference Manual. Addison-Wesley Professional. ISBN 978-0201514599. 
  6. ^ Bjarne Stroustrup; Margaret A. Ellis 『The Annotated C++ Reference Manual』 足立高徳、小山裕司、シイエム・シイ、2001年ISBN 978-4901280396
  7. ^ ISO/IEC 14882:1998
  8. ^ ISO/IEC 14882:2003
  9. ^ ISO/IEC TR 19768:2007
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  18. ^ Open issues for The C++ Programming Language (3rd Edition) - このコードはストロヴストルップ自身による訂正文からの引用(633ページ)。std::endl'\n'に改めている。またmain関数がデフォルトで0を返す件についてはwww.research.att.com及びwww.delorie.com/djgpp/ を参照されたし。このデフォルト仕様はmain関数のみであり他の関数にはない。
  19. ^ Sutter, Herb; Alexandrescu, Andrei (2004). C++ Coding Standards: 101 Rules, Guidelines, and Best Practices. Addison-Wesley. 
  20. ^ Henricson, Mats; Nyquist, Erik (1997). Industrial Strength C++. Prentice Hall. ISBN ISBN 0-13-120965-5. 
  21. ^ Stroustrup, Bjarne (2000). The C++ Programming Language (Special Edition ed.). Addison-Wesley. p. 310. ISBN 0-201-70073-5. "A virtual member function is sometimes called a method. (仮想関数のことをメソッドと呼ぶ場合がある)" 
  22. ^ Andrew Birkett. “Parsing C++ at nobugs.org”. Nobugs.org. 2009年7月3日閲覧。
  23. ^ Why We Can’t Afford Export (PDF, 266 KB)
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  28. ^ Bjarne Stroustrup's FAQ - Is C a subset of C++?”. 2008年1月18日閲覧。
  29. ^ C9X -- The New C Standard”. 2008年12月27日閲覧。
  30. ^ C言語の最新事情を知る: C99の仕様 - Build Insider

参考文献

関連項目

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