ABO式血液型 判定方法

ABO式血液型

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/19 08:22 UTC 版)

判定方法

試薬の抗A血清と抗B血清とを用いて、採取した赤血球と反応させて凝集の有無により判定する方法(おもて検査)で仮に判定される(抗H血清も使用することがある。抗H血清を使用するとボンベイ型の判定も出せる)。どちらかの血清で凝集が見られた場合はその血液型、どちらとも凝集が見られた場合はAB型、凝集が見られない場合はO型と判定される。これに加え、血液の血清を用いてA・B・O各自型の血球の凝集(O型血球は対照として用い、これが凝集する場合は判定を保留する。)を判定する方法(うら検査)で判定して結果が一致した場合に、血液型が確定される。

誕生時には、うら検査で判定するのに必要な血液型決定因子が不足しているので判定できず、おもて検査では、凝集が起きにくいタイプの場合や凝集の有無を間違って、誤って仮判定されるケースがある。そのため、成長してから正しい血液型が確定された場合に、ABO型の血液型が変わったかのように見える場合がある。なお、おもて検査とうら検査の判定が一致しなかった場合は再検査する。それでも一致しなかった場合は以下の可能性も考慮する。おもて検査とうら検査には優劣がないため、どちらかの判定を優先して血液型を決定するということはしない。

おもてとうら不一致時に考えられる可能性[76]

血球側に問題がある場合の例
亜型(#ABO式血液型の亜型分類参照)
疾患による後天性の抗原異常(白血病ホジキン病などで抗原が弱まり、弱い亜型やO型と間違えやすくなる。)
獲得性B(A型が癌や細菌による感染症で発生したB抗原が赤血球につき、AB型に見える場合がある。)
血液キメラ・モザイク(複数の遺伝子や同じ遺伝子でも表現型が異なる血球が存在する。当然別型の血球ごとに反応が変わる。)
汎血球凝集反応(血球の表面が細菌やウイルスによって劣化し、T抗原系統の露出ですべての抗原血清で凝集する。#汎血球凝集の各レクチンに対する反応参照)
自己免疫性疾患による血球の抗体感作(自分の血液に反応する抗体が元からある)
異型輸血後(別人の血が入っているのでキメラ・モザイク同様に別型の血球で反応が異なる。)
血清側に問題がある場合の例
連銭形成(凝集とは別の赤血球が数珠上に重なった状態を凝集と誤認。)
低または無γグロブリン血症で抗体不足
不規則抗体の存在(ABO式と無関係の血液型で凝集)
血清中の血液型物質の増加(癌などで見られる場合がある)
高力価の寒冷凝集素
新生児や老人における抗A抗B抗体の欠損または低下(上記参照)
新生児の胎盤通過性母親由来抗体(母親の抗体が新生児血清に混ざっている)
亜型血清中の抗体(亜型の一部には同型抗原に抗体を持つ場合がある)

血液ではなく、遺伝子から判定するという手法もあり、血清による判定に比べ、誤判定が生じにくいことが特徴である。

反応強度 スコア 特徴と外観 背景の色調
4+ 12 一個の大きな凝集塊 透明
3+ 10 数個の大きな凝集塊 透明
2+ 8 中程度の凝集塊 透明
1+ 5 小さな凝集塊 赤く濁る
w+ 2 ごくわずかな微小凝集 赤く濁る
0 0 凝集も溶血もみられない 赤く濁る
mf 部分凝集 赤く濁る
H(PH) 完全溶血(部分溶血) 赤く透明(濁る)

また、亜型検査は、輸血検査の中でも血液型を確定するのに非常に重要である。


  1. ^ 出典では「ランドスタイナー」表記
  2. ^ 現在の観点から見ると不自然な親子関係があるが、参考にした『血液型の話』14Pの表のままで掲載。
  3. ^ あくまで二対対立因子説による仮説である点に注意
  4. ^ 前述のフォン・デュンゲルンおよびヒルシュフェルトの初めての調査ではAB型の親とO型の子の組み合わせがあるが、以後の他の学者たちによる調査で確認できなかった。
  5. ^ この違いはAB型に現れるはずで、ベルンシュタインの説では「AB型血球にはR凝集原がないので凝集素ρには反応しない」はずだが、古畑らの説は「O型血球に反応する凝集素があればAB型でも反応する」となる。
  6. ^ よってオーストラリア・南北アメリカ大陸などは先住民のデータから推測。
  7. ^ 比率でわかるように後述の「A型遺伝子やB型遺伝子の多い地域」でも大半はA型遺伝子やB型遺伝子は過半数に達しておらず、O型の方が多数派の場合も多い。
  8. ^ 参考にした『血液型の話』原文は「アメリカ・インディアン」表記
  9. ^ 古畑(1962) p.213
  10. ^ 日本やシベリア先住民ではやや低いが、北海道などのアイヌはB型が比較的多い。
  11. ^ A型遺伝子出現率は九州東部・四国南西部では29%以上だが、青森県の北部は24%以下になるなど(保志(1968) p.324図4「日本におけるA型遺伝子出現率の地域差」(古畑より改変)。)。
  12. ^ 抗H抗体自体はA型・AB型で一番多いA1型やA1B型の血清にも存在するが、こちらは体温で反応しないため輸血で問題にされることはほとんどない。
  13. ^ なお、Row-Iは通常のボンベイ型が分類される。
  14. ^ 注:Hを小文字で上に書く書き方もある、以下同じ





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