90式戦車 配備(平成30年度末現在)

90式戦車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 04:15 UTC 版)

配備(平成30年度末現在)

北海道以外では、富士教導団などの教育部隊を除きほとんど配備されていない。これは戦車トランスポーターの少なさから来る平時の運用に加え、調達数が減少した中で一括運用を行うためである。

開発当時の運用構想では、北海道に着上陸侵攻するソ連軍の機甲師団を北海道の原野で迎え撃つことを想定しており、北海道の北部方面隊に優先的に配備された。この方針はソ連崩壊後も変わらず、中期防衛力整備計画(平成17年度-21年度)以降では北部方面隊の74式戦車を更新して北海道の戦車部隊を90式戦車に統一する方針だったが、平成25年度に第2戦車連隊10式戦車が配備されており、変更された模様である。また、例外的に、第7師団隷下の第7偵察隊にも配備され、主に威力戦闘偵察に使用される。

戦車教導隊(現:機甲教導連隊)所属車輌。
土浦駐屯地武器学校での90式戦車。

陸上自衛隊富士学校

陸上自衛隊武器学校 - 整備教育用

北部方面隊

価格と調達

1990年(平成2年)度-2009年(平成21年)度までの19年間で341輌が調達された。年平均の調達台数は約18輌。調達価格は整備用工具や予備消耗部品が含まれた総合価格となっている。バブル景気の真っ只中に採用が決定され、量産効果による価格低下も見込まれて1輌約11億円という価格でも迅速に配備が可能という見通しだったが、制式化直前のバブル崩壊と翌年のソ連崩壊に伴う防衛費の減少・削減、こんごう型護衛艦イージス艦)など他の正面装備の拡充や戦車保有数の削減などと時期が重なったこともあって、予想通りの調達ペースは得られなかった。

調達当初の3年間は1輌約11億円前後であり、少数生産にとどまる以上は、開発費や設備投資の消化も考えると1輌当たりの価格が高騰する事情があるが、4年目以降は1輌約9.4億円となり、継続的な調達による量産効果で2001年(平成13年)度以降は1輌約8億円(最低は約7億9,000万円)まで単価が減少した。

90式戦車は他国の第3世代戦車に比べて高価であり、外国産戦車を輸入すべきだったと批判されることがあるが、他国戦車を輸入した際の価格に関しては軍事情報雑誌Jane's発行のレポートによれば、アメリカM1A2エイブラムス及びドイツレオパルト2A6は輸出実績でいずれも1輌あたり10億円を超えており、フランスルクレールは自国型でもそれに並ぶ価格となっている。

90式の調達は2009年(平成21年)度で終了し、2010年(平成22年)度からは10式戦車の調達が行われている。

90式戦車の調達数[33][34]
予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数
平成2年度(1990年) 30輌 平成9年度(1997年) 18輌 平成16年度(2004年) 15輌
平成3年度(1991年) 26輌 平成10年度(1998年) 17輌 平成17年度(2005年) 12輌
平成4年度(1992年) 20輌 平成11年度(1999年) 17輌 平成18年度(2006年) 11輌
平成5年度(1993年) 20輌 平成12年度(2000年) 18輌 平成19年度(2007年) 9輌
平成6年度(1994年) 20輌 平成13年度(2001年) 18輌 平成20年度(2008年) 9輌
平成7年度(1995年) 20輌 平成14年度(2002年) 18輌 平成21年度(2009年) 8輌
平成8年度(1996年) 18輌 平成15年度(2003年) 17輌 合計 341輌

戦略機動性

90式戦車は北海道の地形や道路条件を想定して開発されたものであり、他地域でのより柔軟な運用を行うには更なる小型軽量化が望ましいとされた。このため、後継の10式戦車は40トン級の戦車として開発されている。

道路を使った移動と輸送

90式戦車の重量は74式戦車を約12トン上回るため、北海道以外では通行可能な場所が限られ運用上の困難が多いとして、戦車不要論の補強や自衛隊批判[注 4]の引き合いに出されることがある。実際には全国の主要国道の橋梁17,920ヶ所のうち65%は90式の通行が可能であり、より軽量化された約44トンの10式戦車ではこれが84%に向上したとされるのに対して、約62-65トンの海外主力戦車が通行可能な橋梁は約40%と想定されている[35]

各国の主力戦車と90式戦車の重量を比較してみた場合、

90式戦車 50.2トン
ルクレール 56.5トン
M1A2エイブラムス 62.1トン
チャレンジャー2 62.5トン
レオパルト2A5
スウェーデン仕様
62.5トン

であり、90式の50トンという重量は60トン以上ある旧西側の先進各国の第3世代戦車などと比較すれば10トン以上軽量となる。大型車両の走行を前提としていない小型の橋は除いて、主要道路などのダンプトラックが通行できる橋はすべて通行可能になっている。

自走による移動
試作車の車体前部の方向指示器及び前照灯。

実際に北海道では、90式が駐屯地と演習場の間の公道を自走で移動することがある。また、第5旅団の旅団創立記念行事への参加・撤収の際に鹿追駐屯地から帯広駐屯地までの約45kmの一般公道を自走で移動することもある[36]

90式が舗装路上を走行する際は、路面を傷つけないよう履帯(履板)に路面保護用のゴムパッドを装着して走行する[37]。これは平時に無用に道路を傷めないための配慮であり、有事の際にはゴムパッド無しの履帯でそのまま走行する場合もある。欧米では実際の市街地で行われる訓練や式典などでも戦車が一般公道を自走する。

駐屯地から演習場までを繋ぐ道路が通常の履帯に対応したコンクリート舗装で補強されている場合や、スリップの恐れがある冬期の積雪時には、ゴム履帯を装着せずに道路を自走する例もある[38]

90式は方向指示器(ウインカー)を装備しているが、これは平時の公道走行用でレオパルト2、ルクレール、チャレンジャー2などといった欧州主力戦車も方向指示器や前照灯を備える[39]。これは戦車以外の装甲戦闘車両においても同様。また、一般公道を自走で移動する際はサイドミラーを取り付けるが、欧米の車両も同様に取り付けて走行する。

トランスポーターによる輸送

トランスポーターで運搬される場合は、積載量と安全面の問題から砲塔と車体を分離して夜間に運搬される。最大積載量が50トンの特大型運搬車では砲塔と車体を一体化させた状態で運搬することが可能だが、最大積載量が40トンの73式特大型セミトレーラの場合は砲塔と車体を分離して運搬する必要がある。複雑な電子装備や油圧系統を持ちながら、車体と砲塔は比較的容易に分離できる。

航空機による輸送

重量50トン以上の戦車を空輸するにはC-5 ギャラクシー(米)やC-17 グローブマスターIII(米)、An-124 ルスラーンウクライナアントノフ製)といった最大級の輸送機が必要とされる。航空自衛隊はその種の大型輸送機は保有しておらず、また、航空自衛隊の次輸送機であるC-2は大型の手術車や装輪装甲車の搭載は想定しているが、戦車の搭載を想定しているという情報はない。

2006年(平成18年)度から導入されたKC-767空中給油・輸送機のペイロード(積載量)はC-2より大きく、トラックなどを搭載できるが、戦車は搭載できない。

輸送艦による輸送

津軽海峡フェリーナッチャンWorld」への積み込みの様子。

海上自衛隊の保有するおおすみ型輸送艦では最大10数輌程度を輸送可能。

また、おおすみ型輸送艦に各2艇ずつ搭載されているエア・クッション型揚陸艇LCAC)は、積載能力が70トンあるため、90式戦車を1輌ずつ運搬し、海岸に直接上陸させることが可能である。ただし、90式の大規模な部隊をまとめて輸送するのに必要なだけの輸送艦を、自衛隊は保有していない。

民間船舶による輸送の例としては2011年11月、民間船「ナッチャンWorld」によって、訓練のため北海道の苫小牧港から大分県の大分港まで90式戦車4両と89式装甲戦闘車10両などが輸送された例がある[40][41]

鉄道輸送

74式戦車以降、自衛隊では鉄道輸送を考慮した戦車を開発・採用していないことから、それを輸送するのに必要な車両や機材の開発や調達も行われていない[注 5]




注釈

  1. ^ 後継の10式戦車では情報モニターの設置など、操作計器の簡素化も行われている
  2. ^ 各国の軍事機関を例に挙げても米軍のMIL規格、日本の防衛省規格NDSなど様々な基準・仕様・規格が存在する
  3. ^ 自己位置評定のみ
  4. ^ 特に日本共産党社民党などの一部護憲・革新系政党や革新系政治団体及び中核派等の過激派団体に関しては支持者向けイベント(赤旗まつり)などで戦車不要論の証明として引き合いに出されることが多い
  5. ^ JR・旧国鉄の在来線は横幅3メートル弱の車両を前提に設計されているが、74式以降はいずれも車幅が3メートルを超えている。なお、戦車以外では、在来線で施設科などの小規模な輸送が行われている。

出典

  1. ^ a b c d e f g 古是三春 & 一戸崇雄, p. 113.
  2. ^ 古是三春 & 一戸崇雄, p. 112.
  3. ^ a b 丸 2002, p. 72.
  4. ^ a b c d 古是三春 & 一戸崇雄, p. 114.
  5. ^ a b 防衛庁技術研究本部五十年史 II 技術研究開発 2.技術開発官(陸上担当). 防衛省. (2002-11-15). pp. 44-45. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_04.pdf?contentNo=4&alternativeNo= 
  6. ^ a b c d e f 古是三春 & 一戸崇雄, p. 115.
  7. ^ 自衛隊新戦車パーフェクトガイド 2011, p. 36.
  8. ^ 自衛隊新戦車パーフェクトガイド 2011, p. 34.
  9. ^ a b 丸 2002, p. 73.
  10. ^ a b 丸 2002, p. 74.
  11. ^ 丸 2002, p. 76.
  12. ^ 『月刊グランドパワー』2006年4月号では、記者が「ほぼ100パーセント」と表現している
  13. ^ コーエー刊『戦車名鑑1946〜2002 現用編』51頁
  14. ^ 『月刊グランドパワー』2006年3月号
  15. ^ a b c d e 丸 2002, p. 77.
  16. ^ 三菱重工(株)”. 活動報告 その他. 衆議院議員 坂本剛二 (2004年11月11日). 2006年1月5日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年9月28日閲覧。
  17. ^ http://i.imgur.com/EHxDs87.jpg
  18. ^ http://eaglet.skr.jp/MILITARY/90.htm
  19. ^ a b 『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊)
  20. ^ [1](2007年9月28日時点のアーカイブ)、[2](2012年6月12日時点のアーカイブ
  21. ^ 『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊p135、一戸崇雄)
  22. ^ テレビ朝日 『カーグラフィックTV』 1996年8月24日放映 No.564「陸上自衛隊の働くクルマ逹」より
  23. ^ http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23054E_0601.pdf MTU社MB873エンジン公式資料 (PDF)
  24. ^ http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23112E_0601.pdf MTU社MT883エンジン公式資料 (PDF)
  25. ^ 防衛庁技術研究本部五十年史 II 技術研究開発 9.第4研究所. 防衛省. (2002-11-15). p. 302. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_11.pdf?contentNo=11&alternativeNo= 
  26. ^ a b https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/13/jizen/honbun/17.pdf 平成13年度政策評価書 事前の事業評価(本文) (PDF)
  27. ^ 柘植優介「陸自期待のルーキー、10式戦車の姿」『PANZER』第470集、アルゴノート社、2010年9月、 22-33頁。
  28. ^ “「イーグル・アイ」 「玄武2010」で2師団 C4ISRで継戦能力保持”. 朝雲新聞. (2010年11月4日). http://www.asagumo-news.com/news/201011/101108/10110901.html 2010年11月17日閲覧。 
  29. ^ https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/21/jizen/honbun/02.pdf 平成21年度政策評価書 事前の事業評価(本文) (PDF)
  30. ^ Forecast International Re-evaluates Main Battle Tank Market
  31. ^ http://doc.danfahey.com/Tanks-ArmorMag.pdf ARMOR-July-August 1999 (PDF)
  32. ^ 平成20年度予算から初度費が一括計上されており、10式戦車の単価には初度費は含まれていない
  33. ^ JapanDefense.com
  34. ^ 防衛白書の検索
  35. ^ 新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会 - 第5回配布資料 「防衛生産・技術基盤」平成22年(2010年)4月(防衛省) (PDF)
  36. ^ 2005年の9月12日・9月19日に90式戦車と74式戦車が、2006年の8月31日・9月13日と2007年の8月31日・9月12日と2008年の9月2日・9月10日と2009年9月1日・9月9日に90式戦車が移動
  37. ^ 90式より5トンから10トン以上重い主力戦車を保有する欧米でもゴムパッド付きの履帯で、一般公道を自走しての移動が行われている
  38. ^ 上富良野駐屯地から上富良野演習場、鹿追駐屯地から然別演習場北千歳駐屯地または北恵庭駐屯地から北海道大演習場といった各駐屯地から演習場までの国道や道道・市道にはアスファルトでは無くコンクリート補強された道路が設置されており、当該路面を戦車が通常の履帯で走行する状態を確認する事ができる
  39. ^ レオパルト2の方向指示器(後部)が見える写真/ルクレールの方向指示器(前部)が見える写真
  40. ^ “戦車、民間フェリーで移動…北海道から大分へ”. 読売新聞. (2011年10月26日). http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111026-OYT1T00596.htm 
  41. ^ “自衛隊、南西シフト鮮明=九州・沖縄で相次ぎ演習-鉄道、民間船で列島縦断”. 時事通信. (2011年11月3日). http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011103100019&google_editors_picks=true 
  42. ^ 20170604 90式戦車と音楽隊の共同演奏@真駒内駐屯地 - Youtube


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