1Q84 登場人物

1Q84

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 08:05 UTC 版)

登場人物

青豆(青豆雅美)
広尾の高級スポーツクラブに勤務するインストラクター。30歳を迎えようとしている。「証人会」の熱烈な信者の家庭に育つが、11歳のとき信仰を捨てて両親と決別、叔父に引き取られる。スポーツの才能で奨学金を得て体育大学で学ぶ。スポーツ・ドリンクと健康食品の製造会社に就職するも、4年後に退社。大学時代の先輩の口利きで今のスポーツクラブに入った。筋力トレーニングとマーシャルアーツ関係のクラスを担当している。小説を読むことはあまりないが、歴史に関連した書物ならいくらでも読む[15]
天吾(川奈天吾)
予備校の数学講師。青豆と同じく30歳を迎えようとしている。千葉県市川市で生まれ育つ。少年時より数学、ドラム演奏、柔道で優れた才能を示し、高校・大学は父親から離れて柔道でのスポーツ特待生で自立。高校は市川市内の私立高校に進学し、食事付きの高校の学生寮で生活する。筑波大学の第一学群自然学類数学主専攻を卒業し、代々木の予備校で講師をしながら小説を書いている。編集者小松の勧めで新人賞応募作品「空気さなぎ」のリライトを行う。高円寺の小さなアパートで独居。
小松祐二
文芸雑誌の編集者。45歳。東大文学部卒。天吾の才能を評価し、無署名のコラム書きや新人賞応募作の下読みなどの仕事を与える。新人賞応募作品「空気さなぎ」を強く推してきた天吾にリライトしてさらに完全な小説にすることを勧める。8月の終わりに「さきがけ」の配下の人間に拉致され、17、8日のあいだ監禁された[注 2]
ふかえり(深田絵里子)
小説「空気さなぎ」の作者。17歳。両親とともにコミュニティ「さきがけ」内で育つが、10歳のときに逃亡して、父の友人・戎野のもとに身を寄せる。黒くて長い髪をもち、美しい顔立ちをしている。ディスレクシア(読字障害・読み書き障害)であるが、長い物語や外国語の歌をまるごと暗記してしまう能力を持つ。テープで聴くことによって「平家物語」を全文暗記しており、天吾の部屋で新人賞の記者会見の練習をした際に、暗唱を披露する。
深田保
ふかえりの父。学者であったが、七十年安保にむけての大学闘争に飛び込み、大学から事実上解雇された。そして手元の元学生10人ばかりと家族とともに「タカシマ塾」に入ってシステムのノウハウを得た後、独立して農業コミューン「さきがけ」を作る。そして武闘派を分離した後、「さきがけ」は宗教法人となり、深田の消息は途絶える。
戎野隆之(センセイ)
文化人類学者。60代半ば。深田と同じ大学・学部で教鞭を執っており、深田とは親交があった。大学闘争の時期に大学を去り、現在は株取引で経済的な成功を収めている。7年前に「さきがけ」を逃亡してきたふかえりを預かり、青梅線二俣尾駅が最寄りの山奥で一人娘のアザミと3人で生活している。小説「空気さなぎ」の出版を利用して深田の消息を知る手段を探る。
老婦人(緒方静恵、マダム)
70代を迎えた女性。麻布の高台にある「柳屋敷」に住む。戦後まもなく夫と死別したあとも、事業経営の才で財産を殖やした。スポーツクラブで青豆を知り、家で出張個人レッスンを受けている。2人の子(息子と娘)がいるが、娘が36歳のときにエリート官僚の夫からのDVが原因の自死で失っている。私財を投じてDVに悩む女性の保護活動を行うとともに、加害男性に対し合法・非合法を問わず各種手段で隠密に報復を実施している。
タマル(田丸健一)
「柳屋敷」のセキュリティ担当。40歳前後。かつて自衛隊レンジャー部隊にいたこともあり、空手の高位有段者。樺太へ労働者として送られた朝鮮人の息子として終戦の前年に生まれ、1歳のとき日本人帰国者に託されて北海道に渡った。それ以後 両親と会わず、孤児院で形だけの養子縁組で日本国籍を取り、14歳で孤児院を逃亡。趣味は、機械をいじることと、60年代から70年代にかけてのプログレッシブ・ロックのレコードを集めること。ゲイ(同性愛者)であり、美容師をしているハンサムな若いボーイフレンドと麻布で暮らしている。若いころ(20代前半頃)に間違いを犯し、女性を妊娠させてしまったことがある。その女性が堕胎していなければ、生まれた子は17歳になっている。
大塚環
青豆の高校のソフトボールのチームメイトで無二の親友だったが、結婚後、夫のDVに悩まされ、26歳になる直前に自殺。
あゆみ(中野あゆみ)
青豆より4つ年下の婦人警察官。交通課。家族や親戚にも警察官が多い。バーで飲んでいる青豆に声をかけ、親しい友人となる。2人はチームを組んで、バーで男を物色するようになる。幼いころに兄や叔父から性的な悪戯をされた経験を持つ。
天吾の父
東北地方の貧農の三男として生まれ、満蒙開拓団に参加。ソ連軍の侵攻で日本に逃げ帰る。そのあとNHKの集金の仕事を始め、成績優秀で正規集金職員となって、日曜ごとに天吾を集金に連れ回す。定年退職後はアルツハイマー型認知症により南房総千倉にある施設に入る。64歳。天吾とは血縁関係が無い(実の父親ではない)らしい。
天吾の年上ガールフレンド(安田恭子)
天吾より10歳年上。既婚で小学生の娘が2人いる。毎週1回、金曜日に天吾の部屋へ来て念入りにセックスを行う。
女性教師(太田俊江)
天吾が小学校3年生から6年生の時の担任。3~4年時は、青豆の担任でもあった。公正で心のあたたかい人柄。天吾が父に日曜日の集金に付いていくことを拒絶して家を追い出されたとき、一晩泊めて、さらに天吾の父を説得してくれた。現在は津田沼市内の小学校に勤める。
牛河(牛河利治、福助頭)
弁護士。「さきがけ」の表に出ない仕事を請け負う。埼玉県浦和市生まれ。40代半ばとおぼしく、顔が大きく、頭頂部が扁平で、容姿は醜い。全体的に特徴的な雰囲気をもっている。小説「空気さなぎ」に関して天吾への接近を計り、リーダーに会わせる前の青豆の身元調査をし、リーダーの不審死の後姿を消した青豆をねばり強く探索する。父親は浦和市内で医院を経営。母親はその医院で経理を務める。4人兄弟の上から2番目で、兄と弟はともに優秀な成績で医大を卒業した医師。妹はアメリカの大学を卒業後、帰国し通訳として働く。4人兄弟の中で、牛河だけが容姿が醜く異端の存在。結婚歴があり、かつては妻子(娘2人)とともに中央林間の一軒家で暮らしていたが、離婚し、現在は独身。元妻は、娘たちを連れて再婚し、名古屋で暮らす。
穏田(おんだ、坊主頭)
リーダーの身辺警護を行う「さきがけ」のセキュリティ全般の責任者。背が低く坊主頭。背の高いポニーテールの男を従えている。
安達クミ
天吾の父が入院している千倉の病院の看護婦。23歳。認知症が進んだ天吾の父を親しみを持って看護している。美容師の姉とアパートに同居。友人から貰った(インドで入手された)大麻を所有し、天吾をアパートに泊めた際に、ともに大麻を吸引する。
大村、田村
安達クミの同僚の看護婦。 

注釈

  1. ^ ビートたけしは本書の題名をもじった『1084(to-san-ya-yo) two beat MANZAI2(1月‐3月)』(2010年、ネコ・パブリッシング)という著作を「材止泰衛ことビートたけし」名義で発表している。
  2. ^ 小松はクロロフォルムと思われるものをかがされて意識を失い、拉致された。目が覚めたときの状況を小松は天吾に次のように説明した。「俺は窓のない狭い部屋の中に監禁されていた。壁が白くて、立方体みたいなかたちをしていた。小さなベッドがあり、木製の小さな机がひとつあったが、椅子はなかった」[16]。この描写と本作品の「月が2つある世界」という設定は、『ウルトラセブン』の第43話「第四惑星の悪夢」(1968年7月28日放映)の設定と共通するものがある。ロケットで宇宙を航行中のダン隊員とソガ隊員は、眠っている間に第四惑星にとらえられ、警察署長によって建物に連れて行かれる。窓がなく、壁が白くて奥行のある直方体の部屋には、机と椅子だけが置かれていて、長官と呼ばれる男が二人を待ち受けていた。監督の実相寺昭雄はこの場面を、パースペクティブを駆使した異様な画面構成で演出した[17]。そして星から逃げ出すとき、ダンとソガは空に浮かんでいる月の数が4つであることを知る。
  3. ^ チェーホフの『サハリン島』は、村上と吉本由美と都築響一の三者による旅行記『東京するめクラブ 地球のはぐれ方』(文藝春秋、2004年11月)にも出てくる。
  4. ^ 村上はチェーホフ『サハリン島』に示された先住民ニヴフ(ギリヤーク)の文化や習俗、社会生活に関する記述を大量に引用しているが、専門家からみて正確さに欠ける箇所も多く、検証を要する部分も少なくない[23]
  5. ^ なおBOOK1とBOOK2を担当したジェイ・ルービンは、青豆が発した言葉を「Someone once said that nothing costs more and yields less benefit than revenge」と忠実に訳している。
  6. ^ 「私のお気に入り」は次のような書き方で登場する。「店の天井に埋め込まれたスピーカーからは弦楽器の演奏する『サウンド・オブ・ミュージック』の挿入歌が小さな音で流れていた。雨粒と、バラと、子猫のひげと……。」[49]
  7. ^ 牛河は公園の滑り台の上で「見上げてごらん夜の星を」を思い出す。ただし彼の引用する歌詞は正確ではない。牛河は「見上げてごらん夜の星を、小さな星」と記すが[50]、正しくは「見上げてごらん夜の星を、小さな星」である。
  8. ^ 執筆者は以下のとおり。加藤典洋/内田樹/森達也/島田裕巳/川村湊/沼野充義/四方田犬彦/斎藤環/新元良一/安藤礼二/五十嵐太郎/平井玄/上野俊哉/大森望×豊崎由美/永江朗 /清水良典/岩宮恵子/石原千秋/小沼純一/鴻巣友季子/武田徹/鈴村和成/越川芳明/佐々木敦/千野帽子/栗原裕一郎/水越真紀/可能涼介/小澤英実 /速水健朗/円堂都司昭/佐々木中/竹内真/上田麻由子。

出典

  1. ^ 1Q84 by Haruki Murakami”. iDreamBooks. 2019年11月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月4日閲覧。
  2. ^ 村上春樹『1Q84 BOOK1』|新潮社
  3. ^ 村上春樹氏:「1Q84」を語る 単独インタビュー(1) 「来夏めどに第3部」”. 毎日新聞社 (2009年9月17日). 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月17日閲覧。
  4. ^ フォトジャーナリスト
  5. ^ 写真ストックの代理店
  6. ^ 浅田彰; 田中康夫、福岡 伸一. “エルサレム賞を受賞したソンタグのスピーチから、脱ダムを超えた「廃ダム」、細胞の「壊す」振る舞いまで!”. ソトコト. 2014年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月29日閲覧。
  7. ^ トーハン調べ 2009年 年間ベストセラー” (PDF). トーハン. 2016年7月20日閲覧。
  8. ^ トーハン調べ 2010年 年間ベストセラー” (PDF). トーハン (2010年12月3日). 2016年7月20日閲覧。
  9. ^ 1Q84続編「ないとは言えず」:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2023年1月28日閲覧。
  10. ^ Boland, Rosita (2013年4月9日). “Kevin Barry shortlisted for the International Impac Dublin Literary Award”. The Irish Times. http://www.irishtimes.com/culture/books/kevin-barry-shortlisted-for-the-international-impac-dublin-literary-award-1.1353167 2016年7月20日閲覧。 
  11. ^ a b c d 『1Q84』への30年 村上春樹氏インタビュー(上)”. 読売新聞 (2009年6月16日). 2009年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月16日閲覧。
  12. ^ 村上春樹氏インタビュー 僕にとっての<世界文学>そして<世界>(3/4ページ)”. 毎日新聞 (2008年5月12日). 2009年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年7月23日閲覧。
  13. ^ 夢のサーフシティー朝日新聞社、1998年7月、アンダーグラウンド・フォーラム1 ISBN 978-4-02-257254-7
  14. ^ “The Fierce Imagination of Haruki Murakami”. The New York Times. (2011年10月23日). http://www.nytimes.com/2011/10/23/magazine/the-fierce-imagination-of-haruki-murakami.html 2014年6月13日閲覧。 
  15. ^ 本書、BOOK1、単行本、12頁。
  16. ^ 本書、BOOK3、単行本、304頁。
  17. ^ 樋口尚文『実相寺昭雄 才気の伽藍』アルファベータブックス、2016年12月26日。ISBN 978-4865980240 
  18. ^ a b 河出書房新社編集部・編『村上春樹『1Q84』をどう読むか』、2009年7月、p.21、p.59、p.149、p.153、p.164など
  19. ^ 本書、BOOK1、単行本、233-234頁。
  20. ^ 本書、BOOK1、単行本、307頁。
  21. ^ 本書、BOOK1、単行本、455-457頁。
  22. ^ 本書、BOOK1、単行本、460-470頁。
  23. ^ 丹菊逸治 (2009年9月3日). “「気の毒なギリヤーク人は本当に気の毒か?」”. ニヴフ言語・文化研究. 丹菊逸治のHP. 2022年7月9日閲覧。
  24. ^ 本書、BOOK1、単行本、515-516頁。
  25. ^ 本書、BOOK 2、単行本、33頁。
  26. ^ 『海辺のカフカ』、下巻、新潮文庫、127-128頁。
  27. ^ 本書、BOOK 2、単行本、75頁。
  28. ^ おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2マガジンハウス、2011年7月、61頁。
  29. ^ 本書、BOOK2、単行本、98頁。
  30. ^ 本書、BOOK2、単行本、248頁。
  31. ^ 本書、BOOK2、単行本、460頁。
  32. ^ 本書、BOOK2、単行本、464頁。
  33. ^ 1Q84 Book3<10月-12月>. 新潮社. (2010年4月16日). pp. 60 
  34. ^ 百閒随筆Ⅰ. 講談社. (2001年12月10日). pp. 221 
  35. ^ 本書、BOOK3、単行本、105-108頁。
  36. ^ 本書、BOOK3、単行本、126頁。
  37. ^ 本書、BOOK3、単行本、169頁。
  38. ^ 本書、BOOK3、単行本、177頁。
  39. ^ 本書、BOOK3、単行本、200頁。
  40. ^ 本書、BOOK3、単行本、480-481頁。
  41. ^ 本書、BOOK3、単行本、505頁。
  42. ^ ユングの家 - Wikipedia(スペイン語)
  43. ^ 『ユング自伝 2』みすず書房、1973年5月、河合隼雄藤縄昭・出井淑子訳、口絵の説明文。
  44. ^ 1Q84Knopf、2011年10月、871頁。
  45. ^ a b 本書、BOOK3、単行本、508頁。
  46. ^ 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』上巻、新潮文庫、旧版、89頁。
  47. ^ 村上春樹さんによる7年ぶりの長編小説「1Q84」に登場する音楽”. HMV ONLINE (2009年5月29日). 2010年6月28日閲覧。
  48. ^ 【村上春樹「1Q84」】BOOK3を読んでしまった人のためのCD・書籍ガイド”. 47NEWS (2010年4月17日). 2010年8月9日閲覧。
  49. ^ 本書、BOOK1、単行本、367頁。
  50. ^ 本書、BOOK3、単行本、393頁。
  51. ^ 『1Q84』に登場するクラシック曲をほぼすべて網羅したコンピ『ヤナーチェク:シンフォニエッタ〜小説に出てくるクラシック〜』”. CD Journal.com (2009年7月21日). 2010年11月10日閲覧。
  52. ^ 『1Q84 BOOK3』をより楽しむためのクラシック・コンピレーション”. BARKS (2010年7月2日). 2010年11月10日閲覧。
  53. ^ uitgeverijatlas.nl
  54. ^ Книга 1Q84 (978-966-03-4981-0)
  55. ^ Нова книжка Муракамі Х. «1Q84»!
  56. ^ [1]
  57. ^ [2]
  58. ^ Folio.com.ua
  59. ^ 〈座談会〉村上春樹『1Q84』をとことん読む安藤礼二× 苅部直×松永美穂×諏訪哲史//〈評論〉温かい日本茶を飲むまでに——『1Q84』を読む小山鉄郎
  60. ^ 加藤典洋「桁違い」の小説//清水良典〈父〉の空位//沼野充義読み終えたらもう200Q年の世界//藤井省三『1Q84』の中の「阿Q」の影——魯迅と村上春樹






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