黄帝 医者としての黄帝

黄帝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/09 14:10 UTC 版)

医者としての黄帝

前述の『黄帝内経素問』、『黄帝内経霊枢』は黄帝の著作と信じられ、これは東洋医学の始まりとなった(書については黄帝内経参照)。中国鍼灸各家学説を執筆した魏稼は、黄帝の師は、岐伯中国語版である事から、中国最古の医学流派を岐伯黄帝派と名づけた[7]。この学派の創始者は岐伯で、中心人物であり、黄皇が岐伯、伯高、小兪を訪ねて鍼道が誕生したと晋の皇甫謐『甲乙経』に記載がある[7]。これらが、漢方およびはり灸らの中国原初とみなされた。なお、日本のユンケル黄帝液は、東洋医学発祥を記してこの黄帝から名付けられている。

黄帝の書

漢代には、著者不明の思想書や医学書を、黄帝の著作として権威付けるのが流行した。前1世紀の『漢書芸文志には、下記のように分類されている。大半は現存しない。

  • 道家
    • 黄帝四経』四篇、『黄帝銘』六篇、『黄帝君臣』十篇、『雑黄帝』五十八篇
  • 兵家
    • 『黄帝』十六篇
  • 神僊
    • 『黄帝雑子歩引』十八巻、『黄帝岐伯按摩』十巻、『黄帝雑子芝菌』十八巻、『黄帝雑子十九家方』二十一巻
  • 天文
    • 『黄帝雑子気』三十三篇
  • 五行
    • 『黄帝陰陽』二十五巻、『黄帝諸子論陰陽』二十五巻
  • 雑占
    • 『黄帝長柳占夢』十一巻
  • 医経
    • 黄帝内経』十八巻、『黄帝外経』三十七巻
  • 経方
    • 『神農黄帝食禁』七巻
  • 房中
    • 『黄帝三王陽方』二十巻

民話

弓矢の発明
ある時、黄帝は石のナイフを持って狩猟に出かけた。突然、虎が下草から飛び出してきて、黄帝は桑の木に駆け上がった。虎は気長な動物であるから、木の下に座り込み、次にどうするか様子を見た。黄帝は桑の木がしなやかな事に気が付き、石のナイフで桑の枝を切り弓を作った。葡萄の蔦が木の上まで伸びていたので、石のナイフで切り弦を作った。次にまっすぐに伸びた竹を見つけ、竹を切り矢を作った。弓矢を使って、虎の目を射ぬき、虎は逃げ去り黄帝は脱出した[8]

黄帝故里

河南省鄭州市は黄帝の故郷とされており、市内には黄帝をたたえる公園「黄帝故里」が整備されている。黄帝故里では、中国のほぼ全ての姓氏を黄帝の直系の子孫と捉え、建築物で表現するなど大掛かりな施設となっている[9]。毎年4月18日には参拝祭典が行われており、2018年の例では40以上の国や地域から約1万人の華人や華僑のほか、同姓の血縁組織、同郷会などの代表が出席して式典が行われた[10]


  1. ^ 松村一男他編『神の文化史事典』白水社2013年、232頁。
  2. ^ 『道教事典』平河出版社1994年、152頁。
  3. ^ 黄帝”. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2022年10月16日閲覧。
  4. ^ 袁珂『中国神話・伝説大事典』大修館書店1999年、210頁。
  5. ^ 『中国神話・伝説大事典』178頁。
  6. ^ 御手洗勝『古代中國の神々』創文社1984年、278-282頁。
  7. ^ a b 中国鍼灸各家学説 p22
  8. ^ Drawing and translation by Stephen Selby (2003). How Huangdi Invented the Bow and Arrow. Chinese folk tale.
  9. ^ 朝鮮族など中国56民族は同じ祖先?東北アジア歴史財団が学術大会開催”. 朝鮮日報 (2020年10月25日). 2020年10月24日閲覧。
  10. ^ 中華文明と先端技術の組み合わせ 伝統の「黄帝」まつる式典に顔認証導入” (2018年4月26日). 2020年10月24日閲覧。


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